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MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第40話 引き抜き





◆◆◆




勇人「――――行くか」



ことり「……………はい?」



勇人の唐突な呟きに、きょとんとした顔を向けてくる。




ことり「………あの、行くって何処に行くんですか?」



勇人「………ここではない何処かさ」



ことり「春、ですもんね……」



物凄い慈愛に満ちた眼差しで勇人を見つめつつ、しみじみと呟くことり。

どういう意味だと思考する勇人だったが、深く考えるのは止めた。




勇人「で、どーした。もう今日の授業は終わりだぞ?」



放課後、学園長室での話を終えて教室に鞄を取りに来た勇人だが、ことりが何故か誰もいない教室で1人座っていた。




ことり「中央委員長に、私が生徒会へ籍を移されたって……今さっき言いませんでしたっけ?」


勇人「あー、そういやそうだった」



筆記具以外はろくに勉強道具が入っていない鞄を肩にかけ、ことりを連れて移動することにした。




《生徒会室》




前生徒会役員を追い出してから一度も足を運んでいない生徒会室に、ようやくやって来た勇人。


部屋はわりと広く、備品は綺麗に掃除されている。




勇人(ま、当然だがな)



百人斬りをやってのけた勇人は前生徒会役員共を締め上げた後、脅迫ネタを使って前生徒会役員共を奴隷にした。


今では電話一本で何でもやる便利な駒と化している。


そいつらが勇人の命令で生徒会室を綺麗に掃除したのだ。





ことり「それで、何で私が生徒会に配属されたんですか?」


勇人「まだ俺以外の役員を入れてなくて人手不足でな。中央委員会からことりを生徒会へと引き抜いた」


ことり「………いいんですか、そんなことして?」


勇人「会長命令だ。問題ねぇよ」




忘れているかもしれないが神爪勇人はこの学園の生徒会長で、この学園で生徒会長はそこらの教師よりも発言力も命令権もあり、学園長並みの決定権を持っている。




勇人「ま…ことりが生徒会に入るのが嫌だって言うなら、別に無理にとは言わないが………?」


ことり「Σあ、いえ。嫌ではないっすよ!? むしろ………」


勇人「? むしろ…………?」


ことり「Σあ、あわわわっ!? 何でもないっす!!」/////


勇人「?。ま、いい」



急に顔を真っ赤にしてあたふたしだすことりに奇怪な視線を向けながら、勇人は眼鏡を指で押し上げて1つの腕章を会長席の机の引き出しから取り出した。




勇人「ま、問題ないなら………白河ことり。君を生徒会副会長に任命する!」


ことり「わ、私が副会長ですか!?」



『生徒会副会長』と書かれた銀色の腕章をことりに投げ渡す。勇人の左腕には、何時もは身に付けていなかった『生徒会会長』の金色の腕章を身に付けていた。




勇人「うーし、じゃあ早速仕事だ。卒パの事で色々やらなきゃならないんでな」



主に杉並の対処とか………




◆◆◆



《朝倉家》



時間が経ち、もう夜が近づいてきて今は夕方。



音夢「ただいま〜」


純一「お帰り」




廊下に声をかけると、音夢がリビングに入ってくる。


音夢「ただいま!」


純一「お疲れだな。帰ってから暇だったから俺が飯作ったぞ……かったるいカレーだ」


音夢「わっ、ホント? やった、お腹ペコペコで♪」



音夢は喜ぶが、夕飯をカレーにしたのは大量に作っておけば明日以降も食べられるからという、音夢に料理を作らせない純一の策である。




音夢「あ、そうそう兄さん。風紀委員会の仕事手伝わない?」


純一「ナリ?」



あまりにも奇天烈なお願いに、思わず純一のキャラが変わる。




音夢「いや、今日の委員会の打ち合わせで変な人の思考パターンが解れば未然に対策を立てられるって話がでたの。つまり、毒をもって毒を制す!!」


純一「………毒を“盛って”毒を制す、の間違いなんじゃないのか、それは? そもそも、俺はその変な奴として認識されてるのか?」


音夢「当たり前じゃない」


純一「あ、心が痛い」




つまりは杉並と同レベル……




純一「ちょっと品行方正に生きてみようかと思っちゃったぞ」


音夢「いや、そうしてくれると私は凄く助かるんだけど………」


純一「人生に刺激は必要だろう?」


音夢「はいはい……兄さんの性格なんて直ぐには直らないんだからいいの。でさ、手伝って! お願い!!」


純一「ふぅむ…………」




なんとなく嫌な立場だが、おかしな話、上手くいけば音夢の仕事も楽になるのか。




純一「とりあえずカレー食おうぜ。冷めるし」


音夢「う、うん。いただきます」



カチャカチャと音夢が皿にスプーンをさしこむが、純一のことを気にして口元まで運ばない。




純一「でもさぁ、よく話を持ってきたな。普段のお前なら断られると思うだろ?」


音夢「あ、あのね、思い出を増やして欲しいから。兄さんには出来るだけ学園にいて欲しいの」



純一(…………何慌ててんだ?)


音夢「でね、もしOKなら私と一緒に行動して欲しいの」


純一「え………あ、そっか


音夢「Σな、なに!?」


純一「いや、別に………(結局こいつ、俺と一緒に居たいのか)」



自意識過剰な気もするが、純一はなんだか照れくさかった。




音夢「う……まぁ、嫌なら別にいいけどさ」



なんて言いながら、何故か音夢はプリンのフタを剥がしにかかっている。




純一「分かったよ。面倒だから2日に1ペんくらいなら構わん。とりあえず明日からだな」


音夢「本当に!?」


純一「野武士に二言はない」


音夢「うわっ、びっくり! 嬉しい!!」


純一「………何が嬉しいんだ?」


音夢「Σあ、違うわよ!? これで仕事が楽になると思っただけですぅ!!」/////


純一「へぇ〜」(  ̄ー ̄)


音夢「な、なによその、悟りきったような目は!」


純一「それは……………ん?」



唐突に玄関が開いた音がして、パタパタと騒がしい音が木霊する。




さくら「なんかカレーの匂いがするぞ。インド〜♪」


うたまる「にゃ〜♪」


さくら「うにゃ? 猫はカレー食べてもいいんだっけ?」


うたまる「にゃにゃ?」


さくら「ま、いいや。食べさせてみれば分かるし」


うたまる「にゃ〜〜!!」




どたばた、と足音が廊下に響く。




純一「……………………」


音夢「……………………」

























純一「アレも要注意なんだろうが、俺にも行動パターンなんて分からんぞ」


音夢「そうだね……でもいいの♪」



言って、音夢は「くすっ」と笑いながらカレーを美味しそうに口にした。





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