MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第22話 勇人の日曜日 3
◆◆◆
《体育館裏》
校舎を出て、体育館裏へと出た。
まだ昼前だと言うのにジメッとしている所だな。
大きく地面に落ちた影の一部が動く。
勇人「……こんな珍しい場所に人か?」
不良とかではなく………。
?「…………?」
そこには1人の少女がいて、しゃがみ込んで何かをしているようだった。
そして俺の存在に気づくと、驚いた表情で俺の方を見た。
その子は髪の色や瞳の色など、微妙に日本人離れした顔をしており、その不思議な瞳で俺の事をジーッと見ていた。
勇人「よお」
少女は私服で歩いている俺とは違って、ちゃんと制服を着ていた。リボンの色からすると、2年のようである。美春と同じ色だ。
胸に妙チクリンな人形を抱いていて、何故か黒い革の手袋を嵌めていた。
………まぁ、俺も嵌めてっけど。
ジーッと、何も言わずに俺の方を見る少女。
俺は少女の前にあるものがふと気になって視線を向けた。
勇人「花………?」
少女の前には、すらりと細く伸びた植物が生えていた。
近くに如雨露やスコップが置いてあるから、多分世話でもしてんだろ。
少女は返事をする訳でも、頷くでもなく俺をジーッと見ていた。
訝しげな…という訳でもないのだが、まるで不思議なモノを見るような眼で俺を見ているのだ。
勇人「………何だ、邪魔したか?」
俺がそう言うと、少女は僅かに口を開こうとして、キュッと閉じる。
ほんの少し躊躇したような表情が見えた後、少女は徐に手袋を外して抱いていた人形を撫でる。
?「アリスは驚いてるだけさ。別に邪魔なんてしてないよ」
勇人「………………?」
少女口からではない、別の所から声が聞こえてきた。
勇人「………あぁ、人形の方か」
少女ではなく人形が喋っていた。
ピロス「ボクはピロス。アリスの代わりに喋ってるだけさ」
勇人「………普通の奴が相手だったら“喋ってるだけさ”じゃ済まねぇよ」
少女がスッと立ち上がる。
ピロス「お花、踏んだりしないでよね!」
勇人「え、俺の発言はスルー?」
人形がそう言うと、少女はそそくさと如雨露やスコップを片付けて、まるで逃げるように去ってしまった。
勇人「………結局スルーしやがった」
ふと、地面に何かが落ちていた。
勇人「―――学生手帳?」
手帳を躊躇なく開き、中を見る。
勇人「月城アリス……2年A組か」
住所は……家の近くだな。
さっきのピロスとやらが喋ってたアリスという名は、さっきの嬢ちゃんで間違いなさそうだ。
…………届けに行くか。
学生手帳をポケットにしまい込み、俺は学校を後にした。
◆◆◆
家の近くにある屋敷の前に行き、ベルを鳴らす。
すると中から体格のよい初老の男性が現れた。簡単に用件を伝えると、渋味のある声で、俺を中に招き入れてくれた。
《月城家》
?「―――それで、お嬢様の学生手帳を届けて頂いた訳ですね」
勇人「ああ………月城は居ないのか?」
?「お嬢様は本日お出掛けになっております。お帰りになるには、もうしばらくかかると思いますが、いかが致しましょう?」
勇人「あー……とりあえず返しといてくれ」
?「畏まりました。それで、お名前は………?」
勇人「神爪勇人……風見学園の生徒会長だ」
瀬場「神爪様、でございますね。お嬢様にお伝えしておきます。あ、申し遅れましたが、私執事の瀬場と申します」
瀬場に美味い茶を入れて貰ったりと、丁寧なおもてなしを受ける。
勇人「………あの嬢ちゃんは、此処でアンタと2人で暮らしてんのか?」
瀬場「お嬢様はご両親を亡くされておりまして、私めと数人の使用人と共に暮らしております」
勇人「そうだったか……」
瀬場「でも、神爪様の様なお知り合いが出来て、私も喜んでおります」
勇人「………ついさっき会ったばっかなんだが」
瀬場は、それでも嬉しゅうございますとニッコリ笑った。
その後、俺は瀬場と他愛もない話をし、月城屋敷を後にした。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!