MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜 第20話 勇人の日曜日 1 ◆◆◆ 《神爪家・勇人の部屋》 勇人「………ふぅ」 翌日。今日は日曜日であるため、学校は休みだ。 このまま惰眠を貪るのも悪くはないが、時間を無駄にするのは避けたいため早めに起きるか。 眼を開けると、まず最初に見慣れた天井が眼に入る。 身体を起こしベッドから下りて私服に着替える。 ……といっても何時もと同じで黒一色の服装だが。 リビングへ行き、まずは飯でも喰うか。 ◆◆◆ 《神爪家・リビング》 セバスチャン「おはようございます。勇人様」 勇人「はよー」 大きな縦長のテーブルの上に朝食を運んでいるセバスチャン。 レンは俺の席の横でキャットフードを頬張っている。 ………黒猫モードとはいえ、食べるものはキャットフードでいいのだろうか? セバスチャン「勇人様。今日の御予定は如何なさるおつもりで?」 勇人「ま、適当に外を散策しようと思ってるが……」 日曜位だからな、自由に動けるの。 ま、別に学校サボっても問題はないのだが…… さて、朝食食ったらまず何処へ行こうか。 ◆◆◆ 《桜公園》 まずは無難に桜公園へとやって来た。 桜の花が満開になるとすっかり春気分になるもんだが、この島じゃ的外れだな。 鬱陶しいほどに絶え間なく花弁の散る公園。 勇人「ふむ……」 せっかく桜公園に来たのだ。彼処へ行ってみるか。 俺は道筋から外れ、桜の林の中へ入っていく。 ◆◆◆ 《枯れずの桜》 満開の桜。 ホント、無駄にデカイ樹を植えたもんだぜ芳乃は。 勇人「………珍しい所に人がいるな」 こんな辺鄙な場所から、歌声が聞こえてくる。 …………誰だ? 芳乃が枯れずの桜に妖精でも憑かせてんのか? 中々に綺麗な歌声が流れ続ける。 勇人「この気配は………」 誰が歌っているのか予測がつきながらも、その声の発信源である、桜の大木の背後へと回り込む。 桜の花弁が舞い散る中で、ことりが髪を靡かせながら、歌声を奏でていた。 ことり「……………え?」 勇人「よ」 キョトンとした顔で見てくることりに、軽く挨拶をした。 歌声は途絶えてしまい、今はただ耳の中に余韻として残っているのみ。 ことり「えーと………いつから聞いてました?」 勇人「ほんの数秒前だ」 余程集中して歌ってたからか、気づいてなかったのか、俺の存在。 勇人「しかし、良い美声だったな。お前にこんな特技があったとは」 ことり「特技ってわけじゃないんですけどね」 勇人「謙遜するこたぁねぇぜ。お前の歌は俺が保証しよう」 ま、俺が保証したからって別に何がどーなるってわけでもねーんだが。 勇人「で。別に急ぐ必要はないんだが……どうするかは決めたか?」 ことり「……………」 ことりは静かに首を横に振った。 ま…当然といえば当然か。 いきなり非日常に足突っ込んだというか、巻き込まれたなら当然の反応だしな。 勇人「ま、じっくりと決めるといい。純一も何の返答もしてねぇからな」 ことり「はい………くちゅん」 ふるふる、とことりが身体を震わせる。 ことり「うー……ずっと歌っていたから、身体が冷えてしまったみたいです」 まぁ、まだ2月下旬だからな。結構冷える。 俺は平気だが……。 ことり「それじゃ、私はこれで失礼しますね」 勇人「そうかい。じゃ、また明日学校で」 ことり「はい。さよならデス」 勇人(デス…………?) 鼻をスンスンいわせながら、ことりは早足で去っていった。 俺も一先ず公園に戻るか……。 ◆◆◆ 《桜公園》 勇人「ん………?」 公園の出口に向かう途中で、何やら上の方を見上げている風見学園の女生徒を見つける。 勇人「……おい、アンタ何やってんだ?」 ?「わわっ」 背後から声をかけた俺に、オレンジ色の髪をした少女が驚きながら此方を見た。 ?「あっ、えーと……神爪会長……でしたよね?」 勇人「そうだが……名乗った事あったっけか?」 ?「いえ。音夢先輩から聞いたことがありまして……」 先輩……音夢の後輩辺りか。 ?「というより、神爪会長あれだけ目立つ事やったから、全校に名前は知れ渡ってますよ?」 勇人「あー…………」 転入初日の生徒会長宣言か…。 勇人「で、えー…誰だお前は?」 美春「あ、はい。『天枷 美春』2年で風紀委員会所属です!!」 美春という少女は、何故かビシィッと敬礼して自己紹介した。 勇人「で、美春とやら。お前何で制服なんだ?」 美春「あぁ、委員会のお仕事があったんですよ♪」 勇人「………そうか」 生徒会は今のところ俺だけだからな。色々仕事が風紀委員会に回ってるのかもしれねーな。 勇人「で、今何してたんだ? ジッと上の方を見上げていたようだが……」 美春「それが大変なんですよ!」 美春がグイグイと腕を伸ばして指し示す方を見上げる。 勇人「ふむ」 木の枝に、一匹の猫がしがみついていた。 美春「きっと降りられないんですよ……」 勇人「ま、怯えているように見えなくもないが……」 美春「神爪会長、助けてあげましょうよ〜」 勇人「………ま、見かけてほっとくのもなんだしな」 美春「本当ですか!?」 勇人「………おい。何だその意外そうな声と顔は?」 美春「い、いえ、美春は何も思ってないですよ!? バナナには誓えませんけど、神に誓って美春はそんな事思ってません!?」 ……わかりやすい奴だな 勇人「―――ほっ」 美春「Σわっ!?」 一息で木の上に跳び上がり、猫のいる枝に辿り着く。 約5メートル程の高さを、一足で垂直跳びした事に、美春は驚愕の声を上げた。 勇人「やれやれ」 猫をひょいとつまみ上げ、そのまま木の枝から飛び降りた。 美春「おー…流石は生徒会長。困ってる人を見過ごせませんね」 勇人「ま、人じゃねーがな」 つまみ上げていた猫を地面に離す。 地上に降り立った猫は何度かコッチに振り返ると、タッタッと駆けていった。 勇人「さて、それじゃあな」 もう此処で特にする事もなくなり、俺は美春に背を向け公園の出口に向かう。 美春「はい、お達しゃで〜!!」 背後から、やたらめったらな声が聞こえていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |