MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第0話 はじまりの朝
《純一 side》
深々と桜が舞っている。
驚くほどゆったりと。
音もなく…
天使の羽根のような花弁の散り様は、まるで永遠を思わせる一瞬。
純一(……あぁ、俺って詩人)
雪のように積もった桜をざくざくと踏みしめながら、ぽりぽりと頭をかく。
周囲を見渡してみても遠近感がぼやけていて、終わりというものがない世界。
狂ったように桜だけが舞っている。
純一(誰の夢だいったい……?)
当事者が見当たらない夢も珍しい。
自我はあるが、フラフラと文字通り夢見心地で歩が進む。
―――他人の夢を見せられる魔法。
導かれるように進んでいた桜の林が拓けて、桜の王様みたいな木が現れた。
純一(………デカ)
冗談を口にするが、見る者の心を揺らす不思議な雰囲気を纏っている。
目の奥が熱い。
声を失うような貼り詰めた空気にふと、人の気配が混じった。
舞い散る桜に誘われるように、1人の青年と1人の少女が立っていた。
青年?「―――久々にこの島にやってきてみりゃあ…珍しい場所で随分と懐かしい顔に会ったな」
少女「フフフ…もう何十年も昔だからね」
楽しそうな笑い声。
まるで年寄りが久しぶりに昔の同級生に会ったような感じだった。
青年「また旅に出て、次はこの地で生活を送ろうと島に居を構えるつもりで来たんだが………以前より随分と“淀み”が酷くなってるな」
少女「…………」
青年の言葉に、少女は哀しそうに俯いてしまった。
少女「あの子のためと思ってしたことが…こんな事になるなんてねぇ」
青年「願いを叶える桜の木か…この島の霊脈は凄まじいからな。お前が霊穴の上に造り出した桜の木は、もはや世界樹級の霊樹だぞ。真摯な願いを叶えると言わず、もっと限定的にするべきだったな」
何を話しているのか、俺には分からない。
……意識が段々遠退いてくる。
青年「ま、俺様がこの島に住む限り何が起きてもどうとでもしてやるよ。知らないなかじゃねーしな……」
少女「お願いするわね、勇人………」
その言葉を耳にしたのを最後に、俺の意識は完全に途切れた。
◆◆◆
ザアァァ……
海の音。
波が押して引く一定の音が耳に心地よく聞こえる。
勇人「……行くか」
既にこの島に彼の住居となる家は建てたと仕事人から連絡が入っている。
ひとまず彼は、これから自分が住むことになる新たな居住に足を運ぶ。
彼はその学舎に向かう場所が記されている、手書きの地図を見ながら歩きだした。
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