MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜 第344話 厄介な問題 ◆◆◆ クロノ「尸魂界‐ソウル・ソサエティ‐、か………」 勇人による浦原喜助の紹介と、なのは達を拐った奴等の行き先。 それを聴いて、クロノ達はなんとも言えない顔をする。 『尸魂界‐ソウル・ソサエティ‐』 現世でその命を落とした魂魄が辿り着く場所で、霊界の一種。 ようはあの世だ。 いくら魔法という技術が発達したと言っても、死者が何処へ行き、どうなってしまうのかは、神界や魔界、時空管理局も分からない。 だが、魔法界に関わる一部の者は知っている。 死んだ者が何処へ向かうのか。 普通なら、そんな話は眉唾物と鼻で笑われるのだろうが、それを話すのが彼等のよく知る男だったからか、疑うことはしなかった。 まぁ、呆れはしたが。 ユーストマ「まぁ、なんだ……"あの世"ってぇのが本当にあるのは分かったが、何でそこにプリムラ達がいるんだ?」 フォーベシイ「まさかとは思うけど……」 喜助「大丈夫ですよ、死んじゃあいませんので」 その一言で、彼らはホッと胸を撫で下ろす。 霊界なんて所に行ったのだから、もしかしたら死んでるんじゃないかと思ったが、その予想は外れたようだ。 喜助「人間の体を生きたまま霊界に行けるようにする、霊子変換機というものがありましてね。それを使えば、生身でもあの世へ行けるんですよ」 クロノ「そんなものがあるのか………」 地球はもう何でもありだなぁと、クロノが若干遠い目をした。 だが直ぐに気を取り直す。 クロノ「なのは達がその尸魂界に居ると思うのは、何でなんだ?」 勇人「俺の元部下が尸魂界に居てな、そこでちょっと気になることを聴いたんだよ」 クロノ「気になること………?」 それは、勇人にプライドが言い捨てた言葉。 8月20日。 それがタイムリミットだと言っていた。 そして、七大罪や神魔連合の襲撃があった時、同じく空座町にも襲撃があった。 襲撃といっても、別に犯罪者に誰かが拉致られた訳ではない。 朽木ルキア。 尸魂界の中枢を守護する戦闘部隊。 そこに所属している彼女は、ある重罪を負ってしまい、その部隊に捕まってしまったのだ。 それだけなら、同じ時間帯に偶々別の事件が起きたと思うだろう。 だが、1つ異常なことが起きた。 それは、彼女が重罪によって処刑されるということだ。 朽木ルキアが犯した罪を浦原喜助から聴いた勇人だが、その罪は確かに重罪だが、それでも死罪には当たる程ではない。 そして、一番不可解なのは彼女が処刑される日程。 8月20日。 それが朽木ルキアの処刑日だ。 これもまた、偶々重なっただけなのかもしれない。 だが、それはありえないのだ。 何故なら尸魂界は通例、死刑囚の刑の執行までに一月の猶予期間を取る。 それを態々二ヶ月も先に延ばすのだ。 何かあると疑うのは自然だろう。 クロノ「それが、君が誘拐犯が尸魂界にいると思う理由か」 ユーストマ「……まぁ、筋は通ってるか」 フォーベシイ「他に情報も無いからね」 地球に神界に魔界に他世界と、各々の勢力の力を持って捜索しても全く居所が掴めないのだ。 この話に乗るしかない。 重吾「では、今後のことを話そう」 今まで静観していた重吾が、静かながらよく響く重い声でそう言ったことで、話を変える。 クロノ「今後って……直ぐにでもその尸魂界へ捜索隊を向かわせるんじゃないのか?」 勇人「無理だな。ま、幾つか理由があるんだが………」 1つは、尸魂界にはそこを護る『護廷十三隊』という組織があり、尸魂界を動き回るにはまずそこへ話を通さなければならない。 それだけならまだ問題はないのだが、そこへ話を通したら、次は尸魂界の最高司法機関である『中央四十六室』という処へ話が行くのだ。 そしてそれが問題だった。 勇人と喜助は、尸魂界では犯罪者ということになっている。 無論、濡れ衣だが。 彼等の性格をよく知っている護廷十三隊の一部の死神は、濡れ衣だということを認識しているのかもしれない。 だが、中央四十六室の命令は絶対とする護廷十三隊には、例えそれが真実であったとしても勇人を見掛けたら捕らえに行かなければならない。 そして、勇人と共にいる者達も、関係者として一時捕らわれる。 そうなってしまったら、捜索処ではない。 だから、尸魂界へ行くなら話は通さず、無断で捜索するしかない。 尸魂界を正規の手続きで入国せずに侵入した者は『旅禍』と呼ばれる。 禍を招く者という意味だが、ようは不法入国者のようなものだ。 それで尸魂界を護るために、護廷十三隊が動く。 どっちみち、尸魂界へ行くのなら護廷十三隊との戦闘は避けられないだろう。行くのなら、ある程度の戦力を用意すべきだ。 別に戦争しにいく訳じゃないから、大勢で行くことはない。 かといって、人数が少なすぎれば捜すのが困難だ。 それにどれだけ慎重に侵入し、極力戦闘を避けたとしても、全く戦闘をしないというのは有り得ないだろう。 ある程度の戦闘は避けられない。 そうなると、それなりに戦闘力のある者が向かわなければならない。 勇人「その戦力が問題なんだよな」 フォーベシイ「……我々はその尸魂界という処も、護廷十三隊がどの程度の戦力を保有しているのかも知らない。戦争しにいくわけでは無いとはいえ、戦わざるをえないのならある程度の戦力は必要な訳だが、勇人くんはどの程度の戦力が必要だと考えるんだい?」 勇人「……向こうで厄介なのが、護廷十三隊の隊長達だな。欠番がいないのなら、副隊長を含めれば全部で26人。ま、そうだな。最低でもこいつらと戦って逃げ切るくらいの奴じゃなきゃ話にならんだろ。管理局で言うところの、Aランク以上の魔導師が10人以下必要かねぇ。飽くまで捜索だから、大人数で行くと見つかりやすいし」 クロノ「………揃えなれないことはないが、少し時間がかかるな」 勇人「問題はそれだけじゃねーよ」 一番厄介な問題が残っている。 勇人「仮に向こうでフェイト達を見付けたとしても、そこには当然あいつらを拐った七大罪や神魔連合がいる」 クロノ「あ!」 神魔連合がどれだけの戦力を保有しているのかは知らないが、少なくとも七大罪は六人いる。 それはつまり、管理局の二大エースを破る実力者が六人は待ち受けているということだ。 そんな戦力を、容易に集めることが出来るか否か? クロノ「………無理だ」 勇人「だろうな。ま、無理に勝ちに行く必要は無いとはいえ、戦って勝たずにあいつらを奪還するってのは、ムシの良すぎる話だ………」 つまり、誘拐された彼女達を取り戻すには、世界でも上位の実力者が必要ということだ。 勇人が本来の力を発揮できるのなら、まだ問題はなかった。 だが、今の勇人では七大罪どころか、護廷十三隊の隊長一人から逃げるのがゼイゼイだろう。 ユーストマやフォーベシイの実力なら問題は無いが、世界の王である彼らが容易に動くべきではないし、世界の代表者である彼らが、霊界とはいえ他世界で問題を起こすのは避けなければならない。 勇人「問題は山積みだな………」 . [*前へ][次へ#] [戻る] |