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MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第305話 厄日




◆◆◆


《鳳凰学園‐屋上‐》


勇人「―――って訳で。俺が契約しているのは、キャスターが消えそうだったからだけであって、聖杯戦争を勝ち抜く気は全くねーんだよ。ま、戦力欲しさってのは合ったが」


そんなこんなで始まった説明会。
説明した内容は、以前無人島でキャスターに話した事と殆ど同じ。
何故キャスターと契約したのか、などを面倒だったが話してやった。
当然、その中には自分が魔術師であり、魔法界に関わりを持つ魔神というのも言い含めている。
契約を奪った事もだ。
流石にそれを話した時は、


凛「………はぁ?」


まるでバカをバカにしているような目で見られてしまった。
全てを説明したというのに、壁に寄り掛かって聞いていた遠坂 凛は、聞いた事が信じられずに勇人を見ていた。
まぁ、無理もない。
人界に魔法学科が存在している世の中だろうと"死者から契約を奪う"なんていう荒技を彼女は知らないのだ。
確かに、契約をしているマスターから令呪を奪う事は出来る。
遠坂凛は知らないだろうが、以前の聖杯戦争でも契約の移行を行ったマスターもいたのだ。
だがしかし………


凛「……有り得ない。死んだ相手から何で奪えるのよ……」

勇人「だから魔法で。荒業ではあるが、やれないこともないからな。キャスターも魔力が切れかけてたし、手っ取り早くするにはそれが一番効率が良かった」


未だに信じられないのか、凛は一人ウンウン唸っている。
まぁ、魔術師として……いや、普通に魔法使いでも契約の強奪など不可能だろう。
信じられない凛が問題なのではなく、この男が異常なのだ。


勇人「……そういえば、お前の名字って『遠坂』だよな?」

凛「………ええ、そうよ。遠坂 凛。聖杯戦争を始めた遠坂の末裔よ」

勇人「いや、それは知ってる」


勇人の質問に思考世界から現実へと戻ってきて、結構自慢げに語った遠坂 凛の表情は呆気なく崩れ去った。
聖杯戦争というシステムを創った三族。
アインツベルン、マキリ、遠坂。
基本的に、これの家系は有能な魔術師であり、そして聖杯戦争には優先的に参加が決定する。
贔屓目に見られるような言い草ではあるが、それは実力が伴っての結果だ。
遠坂凛は、別にそれを自慢する気はない。
自分の実力を過大評価するつもりは全くないが、だが試しに目の前の『自称』魔術師がどういった反応をするか気になったのでそう見せただけである。
けどまぁ、勇人から尋ねてきたのだから知らない訳ではない。
おそらくはマキリとアインツベルンも聖杯戦争を始めた一族だという事も知っている。
そしてそれは参戦する魔術師にとって"彼らは厄介な相手"という意味を含んでいる。
魔術回路の数、魔術刻印の規模。
どれも並の魔術師が辿り着けるレベルを遥かに上回っている。
そんな彼らが呼び出す英霊も、強力な存在である事に疑いの余地はない。
過去に一度、アインツベルンが最初の敗者になったとあるがそれは例外としよう。


勇人「って事はお前、アレか? 遠坂時臣の娘か?」

凛「…………………………え?」 


さらりと、勇人の口にした名に、凛の思考は一瞬だけだが、完全に凍りついた。
その名前を、彼女が聞き間違えるわけがない。
その名前は、彼女が良く知る人間のものなのだから。


凛「……父を、知ってるの?」


凍りついた思考を押しのけ、震える声で凛は聞いた。


勇人「ま、知っていると言えば知っているが。前回の聖杯戦争の時に、一度だけ奴の屋敷にお邪魔したからな」


同盟を結ばないか?という誘いをアイリスフィールとセイバーと共に受けた時だったか。
軽く昔の記憶を遡りながら、凛にそう答えた。


凛「ちょっと待って。アンタ、前回の聖杯戦争に参加してたの!?」

勇人「参加したっつーか、今回と同じく他人の令呪を強奪したんだが。詳しく話せば長くなるから省くが、ある事件の帰りに冬木市に寄ってな、そこで英霊同士の戦いに巻き込まれたんだよ」

凛「…………そう、じゃあ最後に一つ聞かせて」


凛は一度言葉を止めて目を瞑り、


凛「―――父を殺したのは、アンタ?」


開かれた瞳には、屋上の空気を一変させるほどに冷たい殺気が込められている。


勇人「いや、俺じゃねーよ。色々事情があって、俺は途中で聖杯戦争を抜けたからな。死んだのは噂で聞いたが、誰が殺したかまではしらん」


その殺気に勇人は全く怯まず、素で返す。
その言葉を信じたのかどうか定かではないが、「………そう」と、凛は勇人に背中を向ける。


凛「じゃあね、生徒会長さん。アナタの気が変わらない事を祈るわ。あと、私たちの邪魔はしないでよね」


もう話す事はない。
彼女は幽体と化している赤い英霊を連れて、屋上を後にした。
そのドアが閉まる直前、霊体化しているアーチャーが、此方を見た気がした。


勇人「………俺も帰るか」


もう校舎の中を歩いていくのも面倒だから、屋上の鉄柵を飛び越えて、そのまま地へと飛び降りる。
校門でずっと待ってたララの愚痴を聞き流しながら、勇人はため息混じりに帰宅した。

………散々な1日だった。


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あきゅろす。
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