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MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第287話 長門 有希




勇人の発言を肯定したのか、涼子は無言で微笑んだ。


涼子「本当はあの人を先に殺すつもりだったけど、やっぱり貴方を先に殺した方がよさそうね」

勇人「っ!?」


涼子がそう口にした瞬間、勇人は急に身体を動かせなくなった。


涼子「最初からこうしておけばよかった」


足が床から生える木にでもなったみたいに微動だにしない。
腕も、手も、指一本すら動かせない。


勇人(封印されてるとはいえ、何の術式も動作もなしに俺の動きを止めるか…まだまだ世界は広いな………)


そう口に出したかったが、口が動かせないどころか声も出せないため、内心で溜め息を吐いた。


涼子「貴方が死ねば、必ず涼宮ハルヒは何らかのアクションを起こす。多分、大きな情報爆発が観測出来るはず。またとない機会だわ」


勇人(俺の知ったこっちゃねーよ)

涼子「じゃあ死んで」


勝ちを確信し、ナイフを構える朝倉涼子。
勇人の首を抉り潰そうと穿ちにかかる。
だが、朝倉涼子は知らなかった。
この世界に存在する、魔導師……魔神というものの力を。
勇人の眼鏡の奥に映る紅玉の瞳…神眼が、迫り来る朝倉涼子を捉える。

――――瞬間、朝倉涼子の動きが停止した。


涼子「あら?」

勇人「俺を甘く見すぎたろ、お前」


胸ポケットから煙草を取り出し口にくわえて、発火能力で指先から火を灯して煙草に点火する。
軽く吸い込み、紫煙を口から吐き出した。
神眼という、全ての魔眼の原初ともいえる魔法は、眼力一つで魔法を使うことを可能としている。
封印された今の状態ではあまりたいしたことは出来ないが、魔法の耐性を持っていなさそうな宇宙人相手なら、動きを静止させるくらい、この男ならわけもない。


涼子「………これが、魔法の力?」

勇人「そうだ。宇宙人には新鮮だろ?」


眼力1つで朝倉涼子の動きを止めた勇人が気だるげにそう言った直後、天井をぶち破って瓦礫の山が降ってきた。
その瓦礫と一緒に、人影が1つ降りてくる。
その人影には見覚えがある。


勇人「よう、長門有希――――」


と、勇人が声をかけた瞬間、


―――――ガッ!!


有希「あ」


―――――ズガァッ!!


涼子「ブフゥッ!?」


…………有希は足下に散らばる瓦礫に躓き、頭から涼子の顔面目掛けて勢いよく倒れこんだ。
まぁ、つまりはヘッドバッドを喰らわせた。


勇人「……ぇー…………」


多少真面目な空気だっただけに、それを一気にぶち壊されて、凄まじく微妙な雰囲気になってしまった。


涼子「私の負けね……」

勇人「あーうん…大丈夫か?」


有希に頭から突っ込まれてぶっ倒れた朝倉涼子の身体が、サラサラと結晶化していく。
力なく呟いていたが、凄まじくマヌケにやられたため、何とも言えない二人である。
心なしか、朝倉涼子は涙目だ。


涼子「けど、私に勝った位で安心しないことね! なんせ私は急進派四天王の中で最弱の存在!!」

勇人「何かありきたりな設定だなオイ……」

涼子「そんな私の戦闘力は53万! 他の三人は私とは段違いの強さを誇る!」

勇人「おーい大丈夫なのか初っぱなからそんな高い戦闘力のお前がやられて」

涼子「そして私達四天王を束ねるその上には………」

勇人「……もういいからさっさと消えろ」


音もなく朝倉は小さな砂場となった。
一粒一粒の結晶はさらに細かく分解、やがて目に見えなくなるまでになる。
さらさら流れ落ちる細かいガラスのような結晶が降る中、朝倉涼子という女生徒はこの学校から存在ごと消滅した。


勇人「……で、大丈夫か?」


朝倉涼子にダイブしてから床に倒れたままの長門有希に、一応心配げにこえをかける。
あの微妙な登場シーンのおかげで、心配する気も正直言って失せてきているが。


有希「問題ない。不純物を取り除いて、教室を再構成する」

勇人「いや、お前が大丈夫かと聞いたんだが……ま、いいか」


いつの間にか、景色は見慣れた教室へと戻っていた。
これも宇宙人の力なのだろう。
まだ寝ている長門有希の脇に屈み込み、その上体を起こしてやる勇人。


「ういーす」


と、ガサツに戸を開けて誰かが入ってきた。


「わわわわっすれーもの、忘れ物ー」


なんて間抜けな歌を口ずさみながら入ってきた一人の男子生徒。
見慣れない奴だが、おそらくこのクラスの生徒だろう。
そいつは、まさかこんな時間に教室に誰かがいるとは思わなかっただろう。
勇人達がいるのに気づいてギクリと立ち止まり、しかるのちに口をアホみたいにパカンと開けた。
この時、勇人はまさに有希を抱き起こそうとするモーションに入ったばかりだった。
だからまぁ、つまり、静止画をみたら押し倒そうとしているように見えなくもない体勢なわけで。


「す、すまん」


男子生徒はかなり焦った様子で後退し、戸も閉めないままで教室から走り去っていった。


勇人「間違いなく勘違いされてるよなぁ………」


本日最大の溜め息を吐いて「どうすっかなー」とぼやく勇人。
それに有希が「まかせて」と、勇人にもたれ掛かったまま言った。


有希「情報操作は得意。朝倉涼子は転校したことにする」

勇人「そっちかよ! いやそっちもだけど!」



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