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MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第277話 不思議な三人





◆◆◆


《鳳凰学園‐屋上‐》


階段を上って追いかけると、結局彼女が向かった先は先程と同じ、勇人がいた屋上だった。
広く、草花も生えていて気を休めるには最適なこの場所も、何度も階段を登り降りを繰り返していれば、さすがにしんどくなる。
授業中のこの時間帯、ここにいる物好きは勇人と、眼の前の口数少ない少女。


「ありがとうございます、長門さん」


―――だけではなく、ニコニコと頬笑みを絶やさない優男と。
以前出会った少女、朝比奈 みくるが待ち構えていた。
"ありがとうございました"と言ったという事は、コイツ等も勇人に用があるという事だ。


勇人(…………ふむ)


一度集中して視てみるが、気力や魔力を纏ってる気配はなく、魔術回路も経絡も使用してはいない。
脳波にも特に変わったところはなさそうだ。
という事は、一般人という事になる。
だが、とても一般人という印象を抱けない。
相手に悟られないように警戒を続け、話しかけてみた。


勇人「んで、何の用だ? 先に言っとくが俺は忙しいんだ。あまり時間を無駄にしている余裕は………」

「ご心配なく。僕たちの用はすぐに終わりますから」

勇人「………ならいいが」

一樹「僕の名前は、古泉 一樹。超能力者です」

勇人「―――は?」


突拍子もなく発せられた単語の意味に、一瞬思考が止まった。
超能力者?
いきなり何を話すかと思えば、予想外なことを言いだしやがった。
この学園で超能力者というのは珍しい。
鳳凰学園は主に魔法や錬金術を教えているが、超能力という学科は存在しない。
いや、そもそも超能力というものを学問として扱っているのは、この世界においては本島にある『学園都市』くらいのものだ。
学園都市外にもそういった機関が存在するが、学園都市ほど超能力開発は進んでいない。
この男はいったい、どちらの陣営に属した超能力者なのか。
……………いや待て。
こんな事を言うために呼ぶのなら、一人で充分のはず。
残りの二人も超能力者です、とか言いだすのだろうか。
気になって、みくるに眼を向けてみる勇人。


みくる「え、えっと…私は…その………」


………やはり何かあるようだ。
慌てていたが、何かを思い出したのか、落ち着けるため深く深呼吸をする。
そして、


みくる「私は、未来からやって来ました」

勇人「―――――――」


………さっきの衝撃を遥かに上回る予想外な事を言ってきた。


勇人「あー……色々言いたい事はあるが、とりあえず、次行ってみよう」

軽く頭を押さえつつ、最後の少女に顔を向けながら言う。
もうこれ以上なに言われても驚くことはないだろう。
いや、正直もうメンドクサイ。
勇人の勘が言っている。
経験則が感じ取る。
これは凄まじく面倒なことが起きる序章なのだと。


勇人「で、お前は何だ? 過去から来たか?」

長門「……私は、涼宮ハルヒの観察を行うために情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース」

勇人「……………………すまん。もう一度言ってくれ」

ヒューマノイド・インターフェース「私は、涼宮ハルヒの観察を行うために情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース」


………そんな辞書引いて適当に並べたような言葉を言われてもな。
ハッキリ言って、一ミリも理解できない。
せいぜい人間じゃないってことぐらいだ。
……というか、何なのだろうか、これは。
デタラメビックリ人間勢ぞろいか?
この学園はそういった特殊な人種を集めているのかと本気で思ってきた。
いや、まぁ、その学園に通っている勇人も例外ではないのだが。


勇人「……ま、今の発言は、俺の脳内の本気でどうでもいいフォルダにでも入れておくとしてだ。とりあえず、超能力者と未来人と……あー……対有機生命体………何だっけ?」

長門インターフェース「貴方達に分かるように言い換えるなら、宇宙人」

勇人「………また宇宙人か。で、そんな濃い三人組が、一生徒の俺に一体何の用だ? つーか、みくる。お前この間俺にそんな事言わなかったろ?」

みくる「こ、この間はあの後に言おうと思っていたんです。でも来てくれなかったから……」

勇人「すまん、マジすまん」


聞いた側からすれば全く謝罪しているように聞こえないだろうが、そっちの方は本当にすまないと勇人は思っていた。
なんせ、数日間忘れていたのだから。


勇人「で、結局俺に何の用なんだ?」

一樹「そう睨まないで下さい。別に僕たちは、貴方に何かをするという訳ではありません。というか、もししてしまっても、魔神と謳われるほどの力を持つ貴方の魔法の前では一蹴されてしまいますし」

勇人「……………ほう」


その発言に、勇人はニヤリと笑う。
これまでの生活で、勇人が魔法使いの類いだとバレる事は稀だった。
バレたとしても、自分からバラすか、魔術師や魔術師相手にバレるくらいのものだ。
それならば大した問題ではない。
が、この男は勇人が魔法使い…それも"本物の"…魔法界に関わりのある魔法使いであると知っていた。
………それはわりと問題である。
ばらされる相手によっては少々面倒だ。
だとしても、自分たちの正体をバラしてまで、勇人の正体も知っていると告げる事に意味などない。
…………いや、一つある。
それは、勇人が魔法界に関わりのある魔法使いだとバラされた場合、自分たちの正体を口外しても良い、という彼らが自分で負っているリスク。
そんな事をしてまで、話したい事があるその内容に少し興味がある。


一樹「流石ですね、取り乱すこともないとは」

勇人「いいからとっとと要件を聞かせろ。俺も暇じゃねーんだよ」

一樹「了解しました。それでは要件に入らせていただきます」


そう言うと、笑みを僅かに崩す。
好青年な表情は残っているが、さっきよりもかなり真剣味が伝わってきた。


一樹「おそらくは、すでに貴方のところに涼宮さんが勧誘に行かれたと思いますが?」

勇人「勧誘って……アレがか? SOS団とかいう救助団体の」

一樹「救助団体ではないんですが……とにかく、貴方にはそのSOS団に是が非でも入っていただきたいのです」

勇人「いやだから、俺の都合も考えろ。生徒会に軽音部に剣道部……後は店とか裏の事情とか――」

一樹「無論、僕たちとしてもそれは考慮したいと考えております。しかし、事はそう単純なものではないのです」

勇人「……どういう事だ?」

一樹「先ほど、貴方を勧誘した涼宮さんですが……彼女には少しばかり厄介な問題がありまして………」

勇人「……………………」


名前を名乗らないとかもその問題の内なのだろうか?


勇人「その問題はどのくらいの規模だ? 町単位? それとも国単位? まさか世界か?」

一樹「全宇宙単位です」


ビックバン級か。


勇人「悪いが、そんな大規模な問題と相対するのは非常にメンドクサイ。というか、何だ? その涼宮とやらを始末すればいいのか? それくらいしか解決策は思い付かんが? そんなふざけたヤツ」

一樹「始末しなくとも解決出来るんです。長門さん、詳しい説明をお願いしてもよろしいでしょうか?」

長門さん「……………」


小さく頷き、長門と呼ばれた少女は一歩前に出てくる。
表情はやはり変わらず無。
普通の人なら重苦しい空気に耐え切れなくなるだろうが、勇人はレンやら何やらで慣れているお陰で大して抵抗は感じない。
……まぁ、そこから始まった説明会は脳をパンクさせるような情報量と文字数だったが。
ハッキリ言って殆ど覚えていない。
というか、覚えるのがメンドクサイ。


勇人「………はぁ…………」

みくる「あ、あのー……勇人くん。簡単に説明するとですね………」

勇人「いや待て、大丈夫だ」


説明を始めそうになったみくるを手で止める。


勇人「あー……つまり、あの涼宮ハルヒとかいう奴はSOS団団長で、そのSOS団の活動目的は『宇宙人・未来人・超能力者を探す』と」


三人はコクリと頷く。
……………全員揃ってるじゃん、とか突っ込んだ方がいいのだろうか?


勇人「で、今一番の問題は。そんなアイツが『非常識を現実にしてしまう』という、超絶ふざけたチート能力を持ってしまっている、ということだな?」

一樹「はい。その力が原因で、普通の人間でしかなかった僕たちに超能力が生まれ、長門さんと、未来人の朝比奈さんも、その異常の調査のためにこの学園にやってきたということです」


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あきゅろす。
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