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MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第276話 涼宮 ハルヒ





◆◆◆


《鳳凰学園高等部‐1年1組‐》


真人「き、気持ち悪ぃ……」

鈴「私もだ……こんなに甘いものばっか食べられん………」

理樹「でも、甘いものでも食べないと…全然収まらないよ……食べても収まらないけど」

謙語「お前ら、いったいどうしたんだ?」


翌日。
いまだに『皆殺しの菓子職人‐ジェノサイド・パティシエール‐』の作った料理(本当は美魚の用意した調味料という名の薬物)の後遺症に悩まされている理樹達を、謙語は不思議そうな目で見ている。
この場にはいないが、恭介や葉留佳、唯湖までも悩まされている。
影響がないのは、あの汁を飲んでいない小毬と美魚とクド、そして飲んだにも関わらず平気な勇人くらいだ。
そして、そんな勇人は、


勇人「……………はぁ」


自分の席でため息を溢していた。
昨日の夜から今朝の出来事を思い返していた。
勇人の家に居候している少女、ララの様子がおかしいのだ。
やけに上機嫌というかなんというか。
………嫌な予感しかしてこない。


撫子「席つけお前らー! ホームルーム始めるぞー!!」



◆◆◆


撫子「あー…突然というかまたかというか、このクラスに転校生が来た」

麻弓「えー! 本当なっちゃん!? そんな情報初耳なのですよっ!」

杉並「フッ、甘いなタイム。俺は既にその情報を入手済みだ」

純一「さすがというかなんというか……その情報どっから持ってくるんだ?」

杉並「トップシークレットだ」

樹「転校生は美少女に違いないね。俺様の美少女センサーが反応してるよ」

稟「いつものことだが、どんなセンサーだ………」

撫子「ええい、静かにしろー! 静かにしないやつは校庭をタイヤ引きで100周だぞ!!」


―――――シン………


と、静まり返るクラスメイト。


撫子「よろしい。今回は多目に見るが、騒いだやつはイエローカードだぞ、特に男子」

男子達『押忍っ!!』

撫子「よし……入ってこい」

「ハーイ!!」


撫子の声で、転校生と思われる者が返事をし、教室の扉を開けて入ってきた。


勇人「つーかこの声は…………」


入ってきたのは、


ララ「やっほー勇人! 私も学校来ちゃったよーっ!!」

勇人「やっぱお前か………」

純一「なんだ、また勇人の知り合いか?」

勇人「またってなんだ、まるで転校生=俺の知り合いみたいに言ってんじゃねーよ」

杉並「だが、実際そうだろう?」

勇人「……………………」


…………否定出来ねぇ。


ララ「やっほー、希!」

希「にゃあ……やっほー………」

ララ「……あれ? イヴとアリシアとルルーシュってこのクラスじゃないの?」

希「……今日は休み………仕事なんだって………」


なんて会話を、前の席に座っている希がララとしていたら、


樹「勇人…また君なのかい?」

勇人「だからなんだよ、またって」

樹「転校してくる美少女が大抵、勇人、君の嫁だ。不公平だと思わないかい? 理不尽だとは思わないかい? 美少女との最初の出会いくらいは、みな公平であるべきだとは思わないかい!?」

明久「そうだ! その通りだ!!」

八輔「我らにも美少女との出会いを!!」

康太「………………!!」


なんてことを言ってきて、


「そうだ! お前ばっかりいい思いしやがって!!」「このハーレムブルジョワジーがっ!!」「神爪だけじゃない! 朝倉! 土見! 綾崎! 貴様らも同罪だっ!」「土見同様、楓様と同棲してる神城もだっ!」「そうだ! 奴にも制裁を!!」「いや、アイツはここ最近休みだ」「何ぃ!?」「じゃあ仕方ないな、今日のところはこいつらで我慢しよう」「そうだな、こいつらだけを始末しよう!」

勇人「おいコラ……」


何処から沸いて出てきたのか、廊下側の教室の窓がガラリと開き、親衛隊と思われる者共が大勢教室内に押し寄せてくる。


ハヤテ「あの、何で僕たちまで………?」

「モテる貴様らが憎らしい!」「よってブチ殺す!」「サーチ・アンド・デス!」

稟「そこはせめてデストロイで!」


ダッ!!と、純一、稟、ハヤテの三人は一斉に教室から飛び出した。
そしてまた、ダッ!!と、親衛隊達が三人を追って教室を飛び出した。


「フッ、どうした神爪、貴様は逃げないのか?」「おとなしく我等に制裁される覚悟が出来たのか?」「ならば潔く死ぬがいい!」

勇人「いいのか、俺にそんな口効いて。もう合コンのセッティングしてやらんぞ」

「皆の衆! 敵は奴等三人だっ!」「今こそ我等親衛隊の力を見せるとき!!」「奴等に目にもの見せてくれるわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ダッ!!と、残りの親衛隊も三人を追って教室から飛び出した。
シーン……と、教室が一瞬の静寂に包まれる。


撫子「………よし、出席取るぞ。デビルークは後ろの空いた席に座れ」

ララ「はーい」

ことり「もうこの状況を突っ込んだりはしないんですね………」

楓「いつものことですもんね……」

雄二「つーか、勇人。お前合コンのセッティングとかやってたのか?」

勇人「ああ。あいつらが女紹介しろって五月蝿いからな。島にいる女子大生とかに合コンの話持ちかけたら、向こうも結構乗り気でな」

秀吉「お主はいったい何をしておるのじゃ……」



◆◆◆


《鳳凰学園‐屋上‐》


そして、時は昼休み。


勇人「で?」

ララ「ん?」


屋上にララを呼び出して、話を聴くことにした。


勇人「ん? じゃねーよ、いきなり転校とかしてくんなよ。つーか、どうやって転入手続きしたんだ? 国籍も何もねーだろお前」

ララ「あ、この学校の学園長?っていう子に話したら、『まぁ、勇人くんの知り合いだしねぇ』って!」

勇人「……さくらのやつ、俺のことどう思ってんだ………?」


……一度マジに聞いてみようか。


ララ「あ、でも心配しないで! 宇宙人ってことは秘密にしてあるから!」

勇人「当たり前だバカ。いくら神族や魔族も通ってるからって、宇宙人なんて知られたらさすがに面倒だ」

ペケ『そんな単純な問題ではありません! ララ様はデビルーク星のプリンセス! それが公になれば、命を狙われる可能性もあるのです!!』

勇人「ま、この学園には神族と魔族のプリンセスもいるから、警備はちゃんとして―――………って、ペケか?」


ふとペケの声が聞こえたが、その姿は見えない。
いや、声が聞こえた先を見ると、ララの髪飾りがペケの顔をしていた。


勇人「髪飾り? てことはその制服……」

ララ「そ! ペケが制服にチェンジしてるの!」


便利なロボだな。


ララ「あ、そういえば学校の部活案内、昼休みにしてくれるんだった!」

勇人「部活案内?」

ララ「うん! 委員長がしてくれるって! ついでに食堂ってところでお昼ご飯も食べてくるね!」


なんて明るい笑顔で、ララは屋上から去っていった。
元気なやつ……というか、慌ただしいやつだ。
俺も昼飯にしようかと、踵を返すと―――それは突然やってきた。


「―――見つけたわっ!」

勇人「あ?」


明るい声が階上から響き、何事かと顔を向ける。
そこに、一人の女生徒が腰に手を当てて勇人を見ていた。
セミロングの髪。黄色のリボンを付けているように見えたが、どうやらそれはカチューシャの付属らしい。
首元の校章が僅かに見える。どうやら同じ高等部一年のようだ。
今、彼女は"見つけた"と言った。
誰かを探していたのだ。そしてこの場所には勇人しかいない。
つまり、勇人がその探している人物ということになる。
が、勇人は彼女を見た事がない。


勇人「誰?」


とりあえず尋ねてみる事にした。


「アンタ。神爪 勇人よね? そうよね?」

「……そうだが。で、お前は何処のどちら様で―――」

「この間、みくるちゃんから来てって言われたわよね? どうして来なかったの?」

勇人「いや、時間的に無理だったっつーか、用事あったっつーか、忘れてたというか……それよりお前何者――」

「まぁ、そんな事はもういいわ。今日は我がSOS団に来てもらうから!」


……人の話なんて全く聞いちゃいねぇ。
何だこの女生徒は。


勇人「……つーか待て。何だSOS団って? 救助団体か? 俺は文芸部に来てくれと言われたんだが……」

「は? 文芸部? ああ、あんなものもうないわよ。今は我がSOS団が正式な名前よっ!!」


グッと親指を立て、愉快そうな表情で部の乗っ取りに成功した事を宣告してくる。
というか、部の正式名を告げる前に自分の正式名を告げてくれないだろうか。
このままだと、謎の少女Aと呼ばなくてはいけなくなりそうだ。


勇人「……まぁ、とにかくだ。俺は既に生徒会やら軽音部やら剣道部に入ってる。これ以上受けられん」

「何言ってんの? もう入る事は決定事項よ。私がそう決めたんだから」


何だこの唯我独尊っぷりは。
呆れを通り越して感嘆してしまいそうだ。


勇人(つーか、俺の事情はガン無視か)


それ以前に、未だに名を名乗ってすらいない。


勇人「で? それに俺が入らねばならん理由は?」


当然の疑問を口にすると。


「私がそう決めたからよ」


当然のようにそんな返事を返された。
段々と頭が痛くなり、俯き加減の頭を支えるように手を当てる。
今はもっと考えなければいけない事があるはずなのだが、それを上回るほどにこの女生徒は悪い意味で唯我独尊だったのだ。


「じゃあ今日の放課後、部室に来てね! 待ってるからっ!!」


指をさし、念を押す様にそう言った彼女は、用は済んだらしく踵を返してそこから去っていく。
呼びとめようと階段を駆け降りたが、廊下の先にはすでに女生徒の姿はない。


勇人「……はぁ」


再びため息。
とにかく、予想外の事で時間を食ってしまった。
早々に昼飯を済まそう。
次の階への階段に足をかけた時。

――――キーンコーンカーンコーン……


勇人「あ」


昼飯終了を知らせるチャイムが、校内の至るところに設置されているスピーカーから鳴り響いてきた。


勇人「……………昼飯抜きか」


クルリと振り返り、食堂方向から教室方向へと改めて階段に身体を向ける。


「………………」

勇人「………………」


………多少驚いた。
振り返った先に、勇人より頭二つほど背の低い眼鏡をかけた少女が無表情で立っていたからだ。


勇人(というか、全く気配を感じなかったんだが……)


この学園は、そういった事の達人でも集めているのだろうか?


勇人「あー………お前も何か用か?」

「来て」

勇人「は?」


そう言うと、その少女は階段を上がっていく。
勇人は頭を軽く掻き、どうしようかと思考しながら、一段一段上がっていく少女を見上げた。
脚を上げる度に、スカートがヒラリと動き―――


勇人「―――ふむ」


一瞬、何か白いものが視界に映ったが、まぁ気にしないことにしよう。
とにかく、上に向かうとしよう。
少しくらい彼女の話を聞いても良いだろう。
…………断じて授業に出るのがメンドクサイとかではなく。


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