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MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第247話 変化した少女




◆◆◆


《鳳凰学園‐弓道部‐》


弓道場は剣道場のすぐ近くにあった。
二分と経たずに到着した弓道場は、剣道場と同じくらいの大きさをしている。
だが、違うのは部員数。
明らかに剣道部とは一桁違う十の単位で数えられるほどに、弓道部の部員の数は多いのである。
部員数の問題はない。
念のため、中に入り活動の様子を確かめてみる。


「あれ? 何か用?」


入ってすぐに声をかけられた。
声をかけてきた人物に顔を向ける。
そこには道着を着ていた女子が立っていた。


「誰か待ってるとか?」

勇人「いや、生徒会の仕事で外回りをしていてな。少し弓道部が気になったから寄ったんだ」


そう説明すると、


「そうなんだ」


と、笑顔で返してくる。
生徒会の仕事という事に何か反応するかと思ったが、そんな素振りは全くなかった。
この分なら意外と早く終わりそうだ。


勇人「少し見学させてもらっても?」

「ああ、構わないよ。良ければやってみる?」

勇人「そうだな……では、お言葉に甘えようか。昔少しやってたんだが、長い間弓は使わなかったからな。撃ち方を忘れてるかもしれんが」

「あー、それなら誰かに教えてもらう? 私は他の部員とかも見ないといけないから教えられないし…うーん、誰が良いかなぁ」


腕を組み、道場を見渡し、手の空いている人を探しているようだ。
釣られるように勇人も部員たちを見る。
殆どが集中しているため、誰かが入ってきたということに気が付いていない。
だが全員が、的に向き合っているわけではないので、こっちを見ている生徒もいた。


勇人「……他の部員を見ないと、と言っていたが、アンタ、部長か何かか?」


ふと気になったので聞いてみる。


綾子「ああ、私が部長だよ。弓道部部長の美綴 綾子。よろしく、神爪勇人」

勇人「なんだ、知ってたのか?」

綾子「そりゃあ、入学式からあれだけの事をやったんだから、知らない生徒はいないよ」

勇人「それもそうか」


やはり初っぱなから暴れすぎたのやもしれん。
後悔は全くしていないが。


綾子「あ、丁度いいところに…おーい! 桜ぁ!!」


その名前を聞き、一瞬、稟の連れか?と思ったが、


桜「どうしたんですか?」


と、予想を反する、どこぞの令嬢を思わせるようなか細い声が耳に入り、その考えを棄てた。


綾子「彼が、矢を射るの久しぶりだから、観ててあげてくれる? 生徒会長に怪我でもされちゃ、何言われるか分かんないからね」

勇人「俺が怪我したくらいで何か言ってくる奴がいるとも思えんが?」


仮にここで怪我をしても、それは不注意だった自分自身の責任だ。
弓道部に責任は全くないだろう。


勇人「ま、よろしく」

桜「あ、はい。よろしくお願いしま……――――」

勇人「…………?」


畏まりながらのお辞儀が、不自然に止まった。
顔はこちらを向いたまま。

……なんだ?

何故急にフリーズしだしたのか、問いただしてみようと口を開こうとするが、


桜「――――勇人…さん?」

勇人「……………あ?」


随分と控えめな声で、"名前"を呼ばれた。
さっきの美綴綾子のように、もう校内では名前が知られているので知っている分には疑問はない。
――――だがこの少女は違う。
呼び方が、まるでそれ以前から勇人を知っているような感じだった。
だが、勇人には憶えがない。
風見学園時代で出会った覚えはないし、合併して鳳凰学園になってからも、この少女の顔を見た記憶はない。
という事は、それ以前に会っているということになる。
だが、それでもこの少女を見た記憶はない。
となると、おそらくこの少女が子供の頃。
全く分からないとなると、たぶん小学生くらいの頃だろう。
勇人自身はどれだけの時が流れても見た目は全く変わっていないから、少女の方は勇人を覚えていたのかもしれないが、この少女と出会ったのが、彼女が小学生くらいの頃であれば、彼女の見た目は大きく変わってしまう。
付き合いの長い奴はすぐに分かる、何だかんだで面影があったりするもんだ。
つまり、この少女とはあまり会った回数は少ないわけで。


勇人「あー……どちら様で?」


本日二度目の問い。
出来る限り記憶に残っている、昔に会った人達と、桜と呼ばれた少女の顔を当てはめていく。

…………………………該当者、無し。

少女は、少し残念そうな表情をする。
……おそらく非はないのだろうが、謝罪したほうがいいだろう。


勇人「悪いな、フルネームを教えてくれれば分かるかもしれないが」


正直、それでも思い出す確率はかなり低い。
だが、彼女からみれば違ったようだ。
俯いていた顔を上げ、緊張しているのか大きく深呼吸。
落ち着いてきたようで、さっきよりも動揺はないように見える。
そして、少女は名乗りを上げた。


桜「間桐 桜です」

勇人「―――――……なるほど」


一瞬驚いたが、思い当たる節があり納得する。


勇人「一応確認するが……あの桜か? 冬木市の?」

桜「はい…!」

綾子「え? 何、知り合いなの?」

勇人「ああ、今思い出した。だいたい7年……いや、6年ぶりか?」


コクンと、首を縦に振る。
改めて見ると、桜はかなり成長していた。
身長は当然として、主に胸が。
まぁ、とにかく全体的に成長している。
第四次聖杯戦争の時に、訳あって出会ったのだが、

今、勇人は彼女の魔術回路を、文字通り"視た"。


勇人(やはり、か………)


直ぐに気づけなかったのは、見た目が成長したからだけではない。
それ以上に、変化したからだ。


勇人(………まぁ、いいか)


聖杯戦争に参加していれば、いずれまた奴と出会うだろう。
少なくとも、今はまだ、その時ではない。


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