MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第246話 鳳凰学園剣道部
◆◆◆
《鳳凰学園‐剣道場‐》
勇人「………ここか」
顔を上げ、道場の外観を見た。
合併した際に色々と新築したからか、古風なイメージはない。
わりと綺麗な道場である。
『めぇぇん!!』
勇人「ふむ…」
道場から響いてくる足音からして、人数はそう多くはないようだが、一人切れのある音を出している奴がいた。
他の部員とは違い、大きく動くわけではなく、最小で、そして速い。
そんな音を出している人物が、勇人の頭を過る。
おそらくは謙吾だろう。
この学園の剣道部は、団体戦の戦績は今一だが、個人戦では高い戦績を残してる生徒がいる。
それが、宮沢謙吾だ。
今のあいつの剣道は、全国に通じる程の腕らしい。
「お…おおっ!! 来てくれたか生徒会長っ!」
突然、背後から大声を上げて誰かが近づいてくる。
振り返ると、短髪でスーツを着た男性――おそらくは教師――が早歩きをし、嬉しそうな顔で寄ってきた。
「いやぁ、よく来てくれたっ! やはり俺の目に狂いはなかった!!」
勇人「あー…どちら様?」
両肩を手でバシバシと激しく叩かれ、面倒な臭いが激しく発せられているのに気落ちしながらも、取り合えず尋ねてみる。
「おー、悪い悪い。ちょっと興奮しちゃってな! 俺は石田 虎侍。剣道部の顧問だ」
勇人「………で、俺に用ってのは?」
虎侍「君がかなりの実力者だと、宮沢から聞いてな。だから、うちの剣道部に入ってもらえないかなーと思ってな。聞けば、剣道の経験があるそうじゃないか!」
勇人「ま、あるにはあるが…俺、生徒会の他にも軽音部と掛け持ちしてるから、入部したとしてもあまり時間は取れないんだが?」
虎侍「それでもいい。試合には極力出てもらいたいが……」
その発言に、勇人は「ん?」と首を傾げる。
勇人「試合に出てもらいたいって、他にも部員はいるだろ? 急に新参者がレギュラーに入ったら、いらん問題を起こすだけだと思うが?」
虎侍「いやー、それがな…うちは男子部員の人数が足りなくてな、止める奴が多くて。今、男子は4人しかいないんだ」
勇人「なるほど」
剣道の団体戦は五人いなければならない…ようはあと一人部員がいなければ試合にならないのだ。
勇人「ま、極力出れるようにはするが、参加出来ない日がないとも限らないが、それでも良いってなら別に構わんが……」
虎侍「本当かっ!?」
勇人のその言葉に、虎侍はやけに目をキラキラさせていた。
不気味なほどに。
謙吾「いいのか?」
二人の会話を聴いていたのか、道場で練習をしていた謙吾がいつの間にか出てきてそう訪ねた。
そんな謙吾に、勇人は苦笑しながら、
勇人「別に構わねぇよ。ま、本当に参加出来ない時は断らせてもらうが」
虎侍「ああ! それでも構わないさっ!!」
ニヤける虎侍の口から「給料アップ」だとか「首は免れる」とか何か色々聴こえてくるが、気にしないほうがいいのだろう。
虎侍「じゃあ、これ入部届けな。明日にでも出してくれたらいいから」
勇人は手渡された紙を受け取る。
保護者欄にあるサイン以外なら問題は無い。
勇人「で? とりあえず明日から出ればいいのか?」
そう聞きながら、勇人はサッとペンを走らせ、紙に円を描く。。
その中心には『剣道部』の文字が書かれており、そこを丸で描いた。
部員数は確かに少ないが、彼らは真剣にやっているようで、特に問題はなさそうだった。
虎侍「ああ、明日から参加してくれ……ん? 何だそれは?」
勇人「生徒会業務。部がちゃんと活動しているかどうかを確かめてんだよ」
………あくまで名目上は、だが。
虎侍「ほうほう…して、結果は?」
勇人「問題なしだ、もし駄目だったら退職ものだがな」
虎侍「ハハハ、んな馬鹿な……」
勇人「冗談だと思うか?」
虎侍「…………………」
どうやら神爪勇人という生徒会長の脅威というものは相当に知れ渡っているようで、冗談には聞こえなかったそうな。
勇人「では、今日はこれで。まだ生徒会業務があるんでな」
虎侍「おうっ! また明日なっ!!」
謙吾「後でな」
道場に入っていく二人に手を振って、勇人は道場を後にする。
腕時計に目を向けると、時刻は四時頃。
後々のことを考えると、あまりゆっくりと見て回ることは出来なさそうだ。
地図を見ると、すぐそこで活動している部活があり、そこへ足を進める。
『弓道部』
勇人「弓道……確か、古式も参加してるんだったか」
ボリボリと頭を掻く。
右目が見えなくなり、リトルバスターズに入ってからはほぼ休んでいたのだが、休み時間の度に稽古に付き合っていた謙吾のおかげで、そこそこ片目でも的に当てれるようになったらしい。
それから弓道部に再び参加し、謙吾と同じく、今は部活を行ってるはずだ。
勇人(少し様子を見ておくか………)
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