MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第218話 男にとっては最高の状況での最悪な再会
イメージOP
『ORIGINAL』
◆◆◆
それは、事件が終結した翌日の早朝のこと。
勇人「……あー…………」
身体に重圧を感じて目が覚める。
最初に目に映ったのは白い天井。
寝起きなのに頭は意外とスッキリしており、すぐに何があったのかを思い出した。
ユリア・ジーニアスの部下と思われる少女の使った術による昏倒。
その術のせいで気を失って、今目が覚めたのだ。
かなりの時間眠っていたようで、窓から差し込む光が、朝日だという事を教えてくれた。
勇人「……あ?」
部屋を見渡して気づく。
ここは自分の部屋ではないと、内装とベッドの位置ですぐに分かった。
ここは何処だ?と、身体を起こし、部屋から出てみようとしたが、身体が動かない。
いや動きはするが、起き上る事が出来ない。
思ったよりも頭が回っていないようで、さっきから感じていた腕に巻きついている温かく柔らかな感触にようやく気付いた。
……このパターンは、知っている。
よくあるあのパターンだ。今まで起きていた出来事、これから起きる出来事、そしてその結末。
その全てを何となく悟ったが、最後の悪足掻きをするように、横になったまま横を見ずに考え耽る。
すでに答えが出ているのだが、そうでもしないととても面倒な事態を受け入れなくてはいけないからだ。
正直、ま目覚めずに気絶していた方がよかった。
それならまだ自分に被害は及ばないだろう。だが、起きてしまった。
「ん……」
突然、右腕に絡められた腕であろうモノに力が込められた。
それはさらなる身体の密着を意味している訳で、押しつけてくる豊かな胸が、予測していた事態を確信させる。
「……何でこいつらが一緒に寝てんだ………?」
何時までもこのままなんて事にしておけず、纏わりついている奴等を見て気落ちする。
そこにはやはりというか、なのは、はやて、フェイト、アリシアが、ネグリジェという凄まじくエロい姿でいた。
そして、コンコンと、控え目だが、しっかりと聞こえる程度のノックが耳に届く。
……凄まじく嫌な予感がした。
「失礼します」
声の主は、聞き覚えがないようで、あるものだった。
昔、何日か滞在したり、仕事の関係で居座ったりしていた時に聞いたことのある声。
だが、ここ数年はまるでなかった声。
そして確信する。
ここは遠野志貴と遠野四季の家である、遠野家の屋敷だと。
扉が完全に開き、一度頭を下げていたメイド……翡翠が頭を上げ……時が止まった。
翡翠「……」
翡翠の眼が、非常に冷たくなっていく。
無表情だから、それが尚更に。
時を動かすには話しかけるしかなく、勇人はフェイトの拘束から逃れた左腕を軽く上げて、無駄に爽やかな笑顔を浮かべて挨拶をした。
勇人「やぁ、おはよう翡翠。久し振りだな、元気にしていたか? いやー少し見ない間に美人になって!」
翡翠「…………」
翡翠は答えず、やはり無表情で勇人を見ている。
心にナイフを根元まで刺しこまれた気分だ。
「おはようございます勇人さん♪ 身体は大丈夫ですかー?」
翡翠の背後から、割烹着を着たメイド……琥珀が顔を覗かせる。
捨てる神あれば拾う神あり。
彼女の出現は現状を、
琥珀「あ、お楽しみ中ですか? 邪魔しちゃ悪いでしょうから、私たちは退散しますね♪ 行きましょ翡翠ちゃん♪」
素敵笑顔でさらに状況を悪化させていった。
言って、翡翠を連れて部屋の前から去っていく直前に
琥珀「もう少ししたら、秋葉さまが様子を見に来られるので頑張ってくださいね♪」
とウィンクしながら去っていく。
1人デカイ溜め息を吐きながらも、残りの拘束をどうやって抜けるかを考える。
「ま、普通に転移すればいいだけなんだが」
勇人は《魔神》と言われるほどの魔導師。
自分の部屋に転移すれば何も問題はない。
そうと決まれば早速行動に移すが、
勇人「……………?」
魔法が使えない。
昨日、倒れてここに連れて来られたのだとしても、魔力はとうに回復している。
気力も身体も問題ない。
やはり、寝起きで頭が少し回ってないのか?
そう思ってもう一度転移魔法を試みる。
しかし、魔法は発動しなかった。
魔法だけでなく、超能力もである。
………瞬間、勇人は何となく自分の身に起きたことと、その原因を悟った。
「……勇人さん。起きていますか?」
タイミングがいいのか悪いのか。
琥珀たちが去って一分程度で、この屋敷の主……遠野秋葉がやってきた。
そして現状を鑑みる。
これを秋葉に見られたらとんでもなくヤバい事になるのではなかろうか。
とりあえず転移は諦めて、なのはとはやてとアリシアの肉体的束縛から抜け出す。
途中、身体が色々なところに当たり、妙に艶めかしい声が聞こえたがガン無視する。
さて、問題はここからだ。
秋葉「………勇人さん? まだ寝ているんですか?」
勇人「起きてるよ」
秋葉「 入っても構いませんか?」
勇人「……………」
数瞬思考を張り巡らせ、
勇人「少し待ってくれないか? 今着替えてるんだ」
という完璧な嘘を言ってのけた。
秋葉「……分かりました」
その言葉を信じ、どうにか部屋への侵入は防いだ。
後はフェイト達をどうにかするだけなのだが。
アリシア「も…もう、ダメだよ勇人……私…イったばかりなのにぃ…そんな勇人の大きいの挿入られたら……私ぃ……!」
なんてトンでもない寝言を艶かしく大きな声でアリシアが吐きやがった。
秋葉「……っ!?………失礼しますっ!!」
その声が部屋の外にいた秋葉にも聞こえたらしく、扉が力強く開かれた。
その勢いや、扉を破壊するかと思うほどだ。
秋葉「…………」
その瞳が勇人を捉える。
つまり、同時に勇人が寝ているベッドの上にいる4人も見ているわけで。
秋葉「……勇人さん、少しお話があります。今すぐ 居間までいらしてください!!」
ふしだらなこの状態を見て、怒鳴る様にそう言うと、秋葉はまた扉を力強く閉めて部屋から出ていった。
久々の再会だというのに、早々に怒らせたようだ。
勇人は立ち上がり、説明すんのが面倒だなぁと、この後の展開を憂いながらため息を吐きながら、寝ている4人を放置して部屋を後にした。
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