MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第200話 旧校舎での対面
時は少し遡り……
◆◆◆
《初音島-桜並木-》
アルクェイド「―――なるほどね。あの学園の中に隠れていたとは予想外だわ」
風見大橋で戦った遠野四季の後を追って、決着の地へと脚を進めながら、今まで得た情報を三人で話していた。
どうやらロア=四季だということを、アルクェイドと志貴の二人は知っていたようで、殆ど驚いていなかった。
しかし、月影夜葬が誰にも話してはいなかった『学園の旧校舎に潜んでいる』という事までは知らなかったらしく意外そうな顔をしている。
「? そんなに意外なことなのか?」と、気になった志貴がアルクェイドに尋ねた。
アルクェイド「あの学園には、元々結界が張っているのよ。学園内での魔法の使用を制限するため、大幅に魔力を押さえ込む坑魔結界。異常を察知する為の探知結界と、それに感応して作動する防衛用の自動人形-オートマタ-。それを管理する、この地の魔法使いと、学園にいる魔導師達。そんなヤツを相手にする事は、幾らロアでも命を縮めるだけ。損だけで得なんてありはしないわ」
志貴「えっ!? あの学園にそんなのがあったのか!?」
夜葬「ああ」
夜葬は頷いて答えたが、疑問に思う事がある。
学園の動きからすると、その機能が稼働した様子は見当たらないとのことだ。坑魔結界に関しては、今日の武闘会祭のために、魔王が解除している。だが、探知結界までは解除していない。なのに、何かしらの不具合で反応しなかった。ただの機械相手ならそう考えるだろう。しかし、これは魔法によるもの。不具合があるのなら初めから作動などしないし、それに気がつかない魔連の魔導師達ではない。
ならそれにはやはり原因がある。学園の前に到着し、夜葬は早速結界を視た。
夜葬「……なるほど、な」
アルクェイド「何か分かったの?」
夜葬「ああ……結界の一部が破壊されている。構築式の一部に割り込みを掛けたらしい。これなら探知結界は作動しない」
志貴「…って事は、オートマタってやつは動き出さないって事か?」
アルクェイド「一つの機能が基盤になっているのね……。それを潰されれば何も機能しないのは致命的か。魔連にしては随分と甘いセキュリティね」
怠慢ぶりに呆れる様に言うアルクェイドだが、実際のところ甘くはない。
結界を破壊するだけなら、力のある魔導師なら誰でも出来る。
手段も幾らでも存在するが、それはあくまでも『破壊するなら』という前提条件を付けたならの話。
しかし、それでも結界に異常が発生した事は伝わり、オートマタが動く。
だから破壊という手段は、この結界には通用しない。行うとしても相応の覚悟が必要だ。
だが割り込みは違う。
志貴が持つ『直死の魔眼』で死の起点が見える様に、結界にも弱い部分がある。
言い換えれば、探知結界からオートマタへの迎撃を指示する際の魔力の回路。
しかしこの結界のそれは針の穴よりも細い極微細。普通の魔術師や魔法使いでは絶対に攻略不可能なそれはまさに『難攻不落』の城塞だった。
それにロアは『破壊』ではなく『割り込み』を掛けている。そこから結界に対して、何か別のプログラムを組み込まれた、と見た方がいいのかもしれない。
アルクェイド「どう? アナタの眼から視て、それはおかしなところはあるかしら」
夜葬「…ない。今のところは、な。だが相手はあのロアだ。何かしらの罠を仕掛けていると考えていた方が良い」
志貴「すでにここは敵地ってことか…。それで、どうするんだ? 」
夜葬「まぁ、問題はない」
どうとでもなるとばかりに、夜葬は最初に学園の敷地内に入る。
だがやはり結界は反応しない。どうやら完全に機能は停止しているようだ。
この張られている陣も、正常に動いていると思わせる為のものだろう。それを確かめ、振り返って二人を呼ぶ。アルクェイド、志貴と順に陣を踏み越えて中に入ってきた。
アルクェイド「旧校舎ってあれよね?」
志貴「ああ」
アルクェイド「アレにも結界が張ってあるみたいだけど? それもさっきのよりも強力な」
夜葬「アレはおそらく、魔神が張ったんだろ。誰も近づけず、逃げられないようにな。だがそれも……」
その瞳を旧校舎に向ける。
すと突然、夜葬の髪と瞳の色がライトイエローに変化し、顔に赤い紋様が浮かび、背中から黒い翼が現れた。
志貴「うわっ!?」
突然の出来事に驚く志貴のリアクションを無視して、夜葬は目を使って、次元を歪まし学園の敷地を覆い尽くす。
念には念。
万が一旧校舎から逃げ出すことがあっても、学園の周囲の次元を歪まし、再び学園の敷地内に戻るように次元の道を作った。
コレを解除するには、夜葬の任意・もしくは気を失わせるしかない。簡単に言えば殺されれば消える。しかし魔力消費も少なく、発動時に使用した分のみで半日は持つ上に、魔眼による眼力だけで発動というかなり使い勝手の良いものだ。
志貴「……終わったのか?」
夜葬「ああ、これでロアはここから逃げられない」
志貴に教えながら、旧校舎へ歩を進める。同時に、何か嫌な感じが肌を刺激した。
否、これは嫌な予感だ。
直観だが、あの旧校舎内から感じるロアの気配はかなりヤバい。
予想していたものよりも大きな力。それを感じているのは夜葬だけではなかった。
アルクェイド「……どういう事? アイツの力がこれだけ大きなわけはないわ。何かからバックアップを受けているの!?」
この地球からのバックアップを受けている彼女でも驚いている。つまりそれだけの力を今の奴は要しているという事だ。
夜葬とアルクの反応に、危険だと感じ取ったのか、志貴はナイフを取り出し、眼鏡を外し、魔眼で旧校舎を睨んでいる。
それだけ志貴も、本気で親友を殺すつもりなのだ。かつての約束を果たすために。
だが迷いがないわけではない。どうしても躊躇いが出てきてしまう。
しかし、相手は四季でありロア。そんな躊躇いは命取りになる。
「―――ようこそ。我が城へ」
旧校舎から一人、コツコツと靴の音を響かせ男は歩いてきた。
この面子に全く動じた様子もなく堂々と。
それがさらに奴の不気味さを引き立てる。
ロア「招待した覚えはないが、心から歓迎しよう」
アルクェイド「それはどうも。でも残念ね、ロア。アナタは今日、ここで滅びるのよ。そんなに悠長にしていてもいいのかしら?」
ロア「その心配は無用だ。私は滅びる事はない。それはキミが良く知っているだろうアルクェイド・ブリュンスタッド」
アルクェイド「どうかしら? アナタに対するジョーカーを、こっちは持っているのよ? それでもないと言い切れて?」
ロア「残念だが、そのジョーカーはこちらも持ち得ている。それは私への攻略手段にはなりえん」
そのジョーカー……それは『直死の魔眼』を指し示している事はすぐに分かった。
今の奴の言う事を訳せば、奴もまた直死の魔眼を持っているという事だ。何時から直死の魔眼はバーゲンセールを始めたのだろうか。
お陰で、一太刀でも受けたら即死な状況で戦闘しなくちゃいけない。
線をなぞるだけでその部分が切れるのだから、小さな切り傷一つでも命取りになる。
そして一番重要なのが、殺してはいけない、ということだ。
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