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MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第183話 強欲に堕ちた魔導師の末路





◆◆◆



《鳳凰学園-保健室前-》




ネロ「……これで昏睡に陥った生徒は、大体避難したか」



眠らされた生徒や民間人達を保健室へ運び、外から保健室に誰も入れないように魔術で結界を張る。


彼、ネロ・カオス……フォアブロ・ロワインは元魔術師。


吸血鬼へと至った彼にとって、魔術を扱うのは容易い。




シエル「テロリストに次元海賊、マフィアに魔術師…そして、アカシャの蛇。よくもまぁ、同じ地に一度でこれだけの敵に襲われるものですねぇ……」



そんな保健室前で魔術を使用している彼の前に、黒い修道服を着た女性が少し疲れた顔をしながら、廊下の奥から歩いて現れた。


彼女、シエルは“聖堂教会”の“埋葬機関”に所属している修道女であり、代行者。


その手に握る十字架を模した剣“黒鍵”に付着している血を払拭しながら、




シエル「勇人から聞いてはいましたが、本当に教師をやってるんですね。学園で見掛けた時は、目を疑いましたけど」


ネロ「あの事象で、私はあの男の使い魔-アガシオン-となったからな。この学園の教職に就いたのも、奴の命令だ」


シエル「……元死徒二十七祖とは思えませんね」



かつては敵対関係にあったネロに、シエルは「それでいいのか?」と視線で訴える。



ネロ「問題ない。それに見合う対価は既に獲ているのでな」



言って、ネロは自分の胸に埋め込んでいる、まるで血のように真っ赤な種のようなものを手で抉り取った。




シエル「それが礼の………」


ネロ「うむ。“楽園の林檎”“未完の秘石”“世界の種”……様々な名称が伝えられているが、あの男はこう呼んでいる―――」




その石とも種ともつかない、鮮血色に満ちたモノから流れ出る魔力に歓喜しながら、その石の名を口にする。




ネロ「――――SEED、とな」




◆◆◆



《鳳凰学園-上空-》




クロノ「………プレシア・テスタロッサ」



上空で静止するプレシアに対峙するように、真っ正面から向き合っている時空管理局。


向こうはプレシアと数名の次元海賊。



対して管理局はアリサとすずかと、魔導師として新人の2人がいるが、他は管理局内では一騎当千の猛者達。


立場的には圧倒的に有利と思えるが………。




なのは「人数はコッチが上だけど………」



かつての『闇の書事件』で戦った七大罪は、たった1人でなのは達を圧倒するほど力を見せている。


あれから8年。


自分達の実力が上がっているとはいえ、軽視は出来ない。




フェイト「…………………」


アリシア「…………………」



非常に重い空気が2人にのし掛かっていた。


いつかは起こりえた事態だが、今日いきなり現れて何の心の準備もしていない彼女達は、犯罪者へと堕ちたかつての母にどんな言葉をかけたらいいか、迷っていた。





プレシア「………久しぶりね、フェイト」


フェイト「っ!?」



心臓が口から飛び出るのではないか?というくらいに、フェイトに衝撃が走る。


フェイト程ではないが、それは他のみんなも同じだった。


詳しいやり取りをしらないアリサとすずかはともかく、PT事件の際のフェイトとプレシアのやり取りを観ていた者達からすれば、プレシアからフェイトに話し掛けるなど理解が及ばない。




フェイト「………母さん」


プレシア「あら、まだ私を母さんと呼んでくれるの? うれしいわ、フェイト」


フェイト「………っ………」



優しく語りかけてくるプレシアの言葉に、フェイトは思わず泣きそうになった。


かつての自分が望んでやまなかった光景、それが今、目の前で起きている。




プレシア「貴女の管理局での活躍は、私のところにも届いているわ。頑張ってるみたいね?」


フェイト「……ぅ…うん………」


プレシア「元気そうで安心したわ」


フェイト「…………………」



どんなリアクションを取ればいいか分からない。


それは、プレシアを憎んでいるフェイトの横にいるアルフも同様。


彼女は本当に、あのプレシア・テスタロッサなのか?と、眉を寄せて凝視する。




プレシア「フェイト、貴女には悪いことをしたと思ってるわ。許してくれるとは思わないけど…私に、償いのチャンスを貰えないかしら?」


フェイト「………チャンス?」


プレシア「私と、アリシアとアルフと、そしてフェイト…4人一緒に……私とまた一緒に、居てくれないかしら?」


フェイト「……………!?」



それは、フェイトが願ってやまなかった夢。


決してもう、自分には得ることの出来なかった未来像。


もうとっくの昔に諦めていたことだが、それが唐突に、目の前で起きている。


思わず涙を流して、プレシアの言葉に頷いてしまうフェイトだが、直ぐに頭を振って考えを改める。


今フェイトは時空管理局の執務官で、プレシアは次元犯罪者。


その申し出に声を上げて泣きたい程に飛び付きたかったが、それは出来ない。


それは、プレシアを捕縛し、然るべき場所で裁きを受け、罪を償ってからだ。


フェイトはそう、プレシアに語ろうとしたが、





プレシア「ほら、アリシア。あなたも、フェイトとアルフにお願いしてみて?」



その言葉に、フェイトは口を閉じ、同時に首を傾げる。


プレシアがアリシアを呼ぶ声に、フェイトは自分の後ろにいるアリシアに目を向けるが、アリシアも何故自分が呼ばれたのか、意味が解らないという顔をしていた。


視線をプレシアに戻すと、プレシアはフェイトの後ろにいるアリシアには顔を向けておらず、何故かプレシアの後ろに顔を向けている。


フェイトとアリシアだけでなく、皆困惑の表情を浮かべていたが、




プレシア「………ほら、アリシア?」




プレシアの後ろから現れた、




アルフ「……ぇ………?」


アリサ「………どういうこと?」





まだ五歳かそこらにしか見えない、1人の少女の姿に、





すずか「……あれって………」




みんなは視線を、1人の女性に向け、







アリシア「……わ…たし………?」

























プレシア「………ほら、アリシア。貴女からもお願いしてみて?」


アリシア?「――――――――」





―――プレシアの後ろから現れた、幼きフェイト…いや、アリシアの姿を見て、皆の顔は凍りついた。


フェイトも、頬を伝っていた涙は止み、顔も頭も凍りつく。





プレシア「……ジュエルシードとSEEDの力で、アリシアを生き返らせることが出来たのよ! フェイト、貴女のお姉さんともいうべき子を」



幼きアリシア?を抱き上げ、いとおしそうに抱き締めるプレシア。


だが、そのアリシア?の瞳には生気が全く宿っておらず、目も虚ろで、焦点も合っていない。


その様は、まるで人形のようであった。





クロノ「……どういうことだ!? アリシアは勇人が蘇らせて、今此処にいるだろ!?」



事態が呑み込めないクロノは、アリシアに目を移す。


が、アリシアは酷く驚愕した表情で、





アリシア「……あの身体…魂が………」


クロノ「!?」



その言葉で、クロノは理解した。


勇人が蘇らせたアリシアは、肉体は人造魔導師として造り上げた物だが、魂はあの世から呼び戻した、死んだアリシア本人のモノだ。


だが、プレシアが抱き締めるているアリシア?は、肉体だけで魂が宿っていない。


アリシアの魂は既に勇人が現世に口寄せし、今の身体に定着している。


他にアリシアの魂が存在するはずがない。


仮にあのアリシア?に人格が有り、魂が宿っているように見えたとしても、それはフェイトのように、アリシアの姿形をして記憶を継いだだけの、全くの別人にすぎない。


だが、プレシアがそのことに気づいている様子もなく、彼女目には、




フェイト「!?」




光が宿っていなかった。


優しい表情をしているが、口は笑っているが、笑顔を浮かべているが、その目は現実を映しているのかどうかも解らない、無表情の笑顔で笑っている。




理不尽に死んだ娘を生き返らせる。


強欲に身を染めた稀代の魔導師の姿を、フェイト達は凍りついたまま、ただ茫然と眺めていた。







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あきゅろす。
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