MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第168話 不穏な奴ら
◆◆◆
《初音島-桜公園-》
ゴールデンウィークが明ける前夜。
周りはろくに視界が見えない黒に覆われ、夜空に浮かぶ満月だけが、薄暗い公園を照らしている。
壊れているのか、灯りを点さない外灯の上で、1人満月を見上げている男。
………皇 帝。
武闘会祭に参加している“月臣大学付属高校”の生徒である。
白い髪、白い肌、血のような紅い眼をした悪魔のような男は、空を見上げていた視線を、ふと地に降ろした。
帝「……何か用か…………?」
その視線に写るは、同じく武闘会祭に参加している“白蛇学園”の生徒。
名は、イグナ。
イグナ「いやぁ、寝込みでも襲おうかと思ってたんですがね」
なんて、イグナは帝を見上げながら薄く笑った。
起きていて残念という風に見えるが、その嘲笑の顔は何処か嬉しげに見えないこともない。
イグナ「君をここで殺そうかと思いまして……あの方が何を考えているか知りませんが、他の2人のようにただの手駒になるつもりは、ボクはないからね……」
帝「……………?」
イグナが何を言っているのか、帝は理解出来なかったが、特に理解しようとも思わなかった。
イグナ「此方の話ですよ。貴方の能力は知ってますよ……噂に聞く貴方の“無敵”とも言うべき能力、物理法則の世界である人界では確かに無敵なのかも知れませんが、ボクの魔法は防げないだろ?」
イグナの身体から魔力が発せられる。純度が高い高密度な魔力を練り上げて、その手のひらに魔力弾を精製する。
そんなイグナを見下ろし、帝はその紅い眼を閉じ、低く静かに呟く。
帝「満月の夜は……やつの血が騒ぐんだよなぁ………」
イグナ「……………!」
瞬間、イグナの目に信じられない光景が映った。
帝の“ソレ”を見て、
イグナ「何だ…ソレは……お前はいったい………!?」
――――この夜、イグナのその命は、帝の手によって消えた。
◆◆◆
《初音島-桜公園の外れ-》
桜公園から少し離れた林の中から、今の出来事を見る影があった。
「凄いですね“アレ”が彼の能力…いや、正体ですか……」
「しかし、良かったのか。奴はアンタ達“白蛇学園”の……」
「ああ、構いませんよ。彼はとうに用済みですから」
「……魔神や魔導十賢者の相手にはならなくとも、三界統一王候補殿や、三千院家のコンバットバトラー等を潰す駒かと思っていたのだが」
不穏な会話をする2人の影と、その会話を離れた木陰から盗み聞きしている1人の男。
土見稟や芙蓉楓の幼馴染みである“神城悠希”。
悠希(……コンビニの帰りに見たことのある人影をつけてみれば…随分穏やかじゃない会話だな………)
木陰から見る悠希の視線に映るのは、2人の男。
1人は武闘会祭に参加していた匿名希望の男。
そしてもう1人は、白い覆面を被った体格の大きな男だった。
匿名「いや、その必要はなくなってしまって……実は彼等を抹殺する命令を受けてたんですが失敗してしまいましてね……」
「何だと……?」
匿名「ええ、僕がヴァルドールの手先だってのもバレちゃってますよ」
「なら、ここでアンタが俺と密会している事が鳳凰学園の連中に知れれば、計画も何もかも水の泡だぞ!」
「ハハハ」と軽く笑う匿名希望の男を、覆面の男はギロリとその目を細め、
「アンタ、ヴァルドールの右腕と聞いていたが…奴らに感付かれておいて、ノコノコ俺に会いに来るとは……とんだうつけだな」
なんて言う覆面男の言葉に、匿名希望の男は心外だと言わんばかりに軽く息を吐いた。
匿名「いやね、正確に言うと感付かれたんじゃなく…感付かしたんですけどね……」
フードを深く被っている匿名希望の男の眼光が、暗闇の中にも関わらずに、僅かに目の光をフードの中から覗かせながら不敵に笑ってみせる。
匿名「アレで鳳凰学園…いや、魔連がどの程度動いて来るのか確かめたくてね」
「……アンタらがしくじるようなら、此方は直ぐに手を引く。元々、そちらが持ち掛けてきた計画だ。我々はギリギリまで表には出ない。これは学園長の意志だ」
匿名「わかってますよ」
匿名希望の男は、ポケットの中からUSBメモリを取り出し、覆面の男に手渡す。
匿名「これが、此方の計画のデータです。それと、そろそろ彼等にもこの計画を伝えておいて下さい」
「ああ」
2人の会話を離れたところで聴いていた悠希は、聴こえてきた声の情報を頭の中で整理する。
詳しいことはあまり解らなかったが、それでもこの2人が、集団で鳳凰学園を相手に何かをしようとしていることくらいは解った。
悠希(……まぁ、早くこのことを学園長か、勇人か。後は神王・魔王辺りにでも報せておいたほうがいいか)
このことを初音島の中でも力が強いであろう勇人や神王・魔王に報せようと、この場から早々に撤退しようとした瞬間、
匿名「ああ…後片付けば私がしておきます。どの程度の奴が嗅ぎ回ってるのか……しっかりと確かめておきますから………」
「いや、私がやろう。此方としても“同志”のために人肌脱ぐくらいせんとな。それに……ネズミは一匹、仕止めるのは容易い」
――――覆面の男が、木陰に隠れている悠希へ視線を移した。
悠希「(気づかれたっ!?)クソッ………!」
舌打ちしつつ、悠希は直ぐ様駆け出す。
匿名の男を置き、覆面の男は悠希の後を追いかけた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!