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MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第127話 クドの気合い





◆◆◆




ゲームは六回に進み、リトルバスターズが一点差でリード。


この回からピッチャーを鈴から古式に代えている。


六回は互いに無得点で終わり、七回表。




この回のトップバッターだった葉留佳がセカンドゴロに倒れ、ワンアウトになった。


そして次の打者の小毬は、球を打ち上げてしまい、現在のカウントはツーアウト。




勇人「次のバッターは、クドか……」



勇人はクドの今日の成績を確かめる。いや、実のところ、そうするまでもなく覚えていたのだが、念のために美魚がノートに記してある結果を見直した。




勇人「……五回に打ったやつがピッチャーゴロで、後は全部3打席連続三振か」



悲しいかな、まったくいいところのない成績である。



と、恭介がノートを覗きこんでくる。




恭介「打ちにいこうという気合いは買うが、いかんせん、まったくタイミングが合ってないんだよな。切なくなるほどに………」


勇人「俺が代打で出てもいいんだが……」


恭介「そういうわけにもいかないだろ、リトルバスターズはあくまでも全員野球、だ」


勇人「……まぁな」




勇人が、バッターボックスに入ったクドにサインを送った。


クドは一瞬キョトンとしたが、サインの意味を理解したのか、笑顔で頷いた。





勇人「ピッチャーの制球力は大したもんだが、相手チームのキャッチャーのパターンが読めてきた……」



クドは、一球目も二球目も三球目も見送り、バットを構えたまま、それを一度も振らなかった。



そして、フルカウントになった六球目。



初めてクドのバットが揺れた。



だが、それは振り切られることはなく、ほんの少し動いただけでピタリと止まった。




「フォアボール!!」



審判の判定に、クドは首を傾げた。




クド「フォア、ボール……?…………あ、あれ? もしかして私、フォアボール、ですかっ?」



自分の置かれた状況をようやく把握したのか、ベンチに振り返ったクドに、理樹は叫んだ。




理樹「うんっ! スゴいよクド!!」




先ほど、勇人がクドに送ったサイン。



それは“ギリギリまでバットを振るな”だった。



相手のキャッチャーは、今までクドはどんな球が飛んできてもバットを振り回して、一度だけ当たったが、基本的には空振りしていたことを覚えていて、クドにはボール球しか投げさせなかったことを見逃さなかった勇人は、キャッチャーがフルカウントまでボール球を放ってくれるだろうと読んだのだ。


そして最後の球。


勇人の読みが正しければ、あのキャッチャーはピッチャーの制球力を頼りに、いざというときはストライクからボールに外れる球を投げさせている。


もし、あそこで振っていればアウトだっただろう。


それをクドは寸前で止めたのだ。





唯湖「クドくんのフォアボールを、無駄には出来んな」




唯湖がバッターボックスに向かう際、そう呟いたのが聞こえた。


クドを一塁に置いての打席は、コレが初めてだった。


だが勇人は、唯湖に何も指示を出さなかった。


勇人がどうしてほしいかということを、既に察していると踏んだようだ。



その予想通り、しっかりとボールを見極めた唯湖は、相手のストレートをフルスイングで思いっきり振り抜いた。


綺麗な放物線を描いた打球はそのまま、グラウンドの外へと吸い込まれていった。


見事なまでのホームラン。




クド「エクセレントですー!」



一番最初に声を上げたのは一塁にいたクドで、唯湖が直ぐ後ろまで来ているというのに走り出さない。




唯湖「クドリャフカくん、喜ぶのはホームベースを踏んでからにしてくれ」


クド「は、はい! アイムソーリーでしたー!」



クドはワタワタしながらも実に嬉しそうな表情でダイヤモンドを回っていた。







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