MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第126話 遅いストレートより速いストレート
◆◆◆
勇人「西園、その本、もうすぐ読み終わるか?」
美魚「……はい。八回までには読み終わると思います」
勇人「わかった」
勇人と美魚の会話に首を捻りつつ、理樹はバッターボックスに目をやった。
今は五回の表。
四回は両者とも何事もなく終わり、今はリトルバスターズの攻撃。
トップバッターの葉留佳が塁に出て、続く小毬のバントでノーアウト一・二塁。だが、次のクドがピッチャーゴロで倒れて、ワンアウト一・二塁となった。
勇人「来ヶ谷、任せた」
唯湖「あんまり綺麗なバッティングは出来ないぞ?」
勇人「構わねぇよ。お前の思う通りに振ってくれ」
唯湖「了解した」
バッターボックスに入った唯湖が、普通には打たないことを、みんなは勇人と唯湖の会話で察した。
だが、具体的にどういうバッティングをするのかまでは分からない。
一球目、内角低めのストレート。
勇人「あのストレート、多分目の利く奴は逆に打ちづらいだろうな」
勇人は相手ピッチャーの投げる“浮くストレート”の正体がわかってきた。
それは“遅いストレートより速い”球。
恐らく、あのピッチャーが投げるストレートは“速度”と“出だしの角度”がかみ合っていない。
打者は両目でボールを見てるつもりでも、ピッチャーに対して横に向いてる分、ピッチャーまでの目の距離が左右で何センチか違う。そのせいで、遠近感は簡単に狂う。
あのピッチャーのストレートは、バックスピンが足りないのか、鈴が投げるストレートよりは落ちる軌道だが、チェンジアップよりは速度も回転もある。
出だしの角度で遅いストレートを予想すると、変に手元で伸びて、そのストレートが浮いてくるように見える。
勇人「だが、打つ方法がないわけじゃない」
一球目は見送って、ボール。
そして二球目。
内角高めに入ったボールを、唯湖はバットを横に振り抜くのではなく、地面に叩きつけるような感じで縦に振り、打ち返した。
そのボールは、背の低いサードの頭上を軽々越えてバウンドし、レフト方向へと転がっていった。
その間に、出塁していた葉留佳と小毬が生還し、唯湖は三塁で留まる。
勇人「これで4―3……逆転だ」
理樹(綺麗なバッティングは出来ないって、ああいう打ち方のことを言ってたのか……)
唯湖の次の打者、鈴と恭介はアウトを取られて、スリーアウトチェンジしてしまうが、ひとまず逆転はした。
後は逃げ切るだけである。
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