MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第113話 野球対決! 鈴VS佐々美!!
◆◆◆
ボールを集め終え、グラウンドに戻ると。
鈴「なんだお前ら、うっとい」
ピッチャーマウンドに立つ鈴の周りにはワラワラと猫が集まってきている。
鈴「そこにいると踏む、ぺちゃんこになるぞ」
掴んでは投げるが、すぐ戻ってきてしまう。
ポイポイとそれを繰り返す。
その背後に迫る、一人の女生徒の影。
佐々美「神聖なるグラウンドを、猫の足で汚さないでくださる?」
鈴「笹瀬川佐々美っ!!」
鈴が飛び退く。
真人「また出やがった!」
勇人「また?」
恭介「いつも夜にやるミッションで、ちょっとな」
恭介は呑気にスピードメーカーを弄りながら言った。
理樹「あの人、ほら、反対側で練習してるソフトボール部の人だし…ややこしいことになりそうだよ」
鈴「ちゃんと後で、あのトンボみたいな棒でならしておく」
佐々美「そういう問題じゃありませんことよ? 後、みたいじゃなくてトンボで合ってます。グラウンドとは、高みを目指し、汗を流すスポーツマンのためのトレーニングの場所。あなた達のように目標もなく、猫とじゃれあっているような人達のためにある場所じゃありませんの。お分かり?」
鈴「一応試合を目指しているらしい」
佐々美「らしい? まるで、どうでもいい話みたいですわね」
鈴「正直どーでもいい」
勇人「正直すぎんだろ……」
佐々美「なら、我がソフトボール部がのびのび練習出来るよう、明け渡すべきではなくて?」
鈴「その発想はないな」
佐々美「くっ…棗鈴…我がソフトボール部までをも侮辱しましたわね……」
拳を固め、ブルブルと怒りを震わせる。
その足下には、まったく空気を把握していない猫が一匹。シューズに頬ずりをしていた。
佐々美「こいつまで私を馬鹿に!?」
「先輩に対して、無礼なっ!!」
―――どむっ!!
横から現れた別のソフトボール部員がそれを蹴っていた。
猫が宙を舞う。
鈴「Σテヅカぁっ!?」
佐々美「あっ……」
くるんと回転し、無事足から着地した。
だが、その後「んなぁ」と弱々しく鳴いて、うずくまった。
それを見ていた鈴の顔に影が落ちる。
鈴「…………………」
ユラリ、と笹瀬川佐々美のほうを向く。
佐々美「な、なんですの……」
その目に笹瀬川佐々美は怖じ気づく。
恭介「勝負だっ!!」
勇人「……え? 何でお前が?」
いきなり恭介がシャシャリ出てきて勇人がツッコミを入れるが、恭介は無視して言葉を繋ぐ。
恭介「聞けばあんた、1年でソフトボール部のピッチャーと4番を張ってるエースらしいじゃないか」
佐々美「え、ええ………」
恭介「鈴と1打席勝負しろ。あんたが勝ったら、グラウンドから去ってやる。だが、鈴が勝ったら、あんたの後輩が猫を蹴っちまったことを詫びて、大人しく自分の練習に戻るこったな」
佐々美「ふ………」
恭介のその言葉に、佐々美は笑みをもらし、
佐々美「おーほっほっほっほっ!」
と、高笑いしはじめた。
佐々美「受けてたちましょう。この私が、草野球に興じてる連中に負けるはずがありませんわ」
恭介「ボールは軟式。バッドは好きに持ってきてくれ」
佐々美が一度、反対側のグラウンドに戻っていく。
鈴はマウンドで俯いたまま、幽霊のように突っ立っている。
真人「ちょっと待てよ、恭介っ」
バッドを放り出して真人が駆け寄ってくる。
真人「今の鈴が、ソフトボール部の4番に勝てるわけねぇじゃねぇか」
恭介「まぁな……けど、俺は賭けてみたいんだよ」
真人「何にだよ……」
恭介「何か…新たな力が鈴から引き出せそうな…そんな気がしてるんだ……」
真人「んな漫画みたいにいくかよ……そもそもストライクゾーンにくることすら怪しいってのによぉ」
恭介「俺はスピードメーターの動作確認してるから、勇人はキャッチャー、真人はジャッジを頼む」
笹瀬川佐々美が戻ってくる。数人の取り巻きを引き連れて。
「素人が佐々美先輩とサシで勝負してもらえるなんて、それだけでも羨ましいですっ」「大きいのかっ飛ばして、格の違いってものを見せつけてやってくださいっ!」
彼女なりのテンションの上げ方なんだろうか…?
佐々美「準備はOKですわよ。とっとと始めるとしましょう」
◆◆◆
マウンドに立つ鈴。
バッターボックスに立つ佐々美。
睨み合う二人。
佐々美はバッドを握り締め、鈴はボールを握り、投球の構えを取った。
そんな鈴の様子を見て、
真人「なんか鈴の奴、ちょっと様子がおかしくないか?」
真人の言う通り、鈴から何かオーラ的なものが身体から吹き出てきているように見える。
いや、つーか……
勇人「マジにオーラ出てるし……」
鈴が振りかぶって、勇人が構えるキャッチャーミット目掛けて、ボールを投げた。
――――ビュンッ!!
――ズバンッ!!
理樹「うわぁ……」
全員が呆気に取られている。
笹瀬川佐々美は、ピクリとも動かずバッターボックスに立ち尽くす。
佐々美「今の…なんですの……?」
恭介「三桁…130キロ……だと」
理樹「Σええぇっ!?」
スピードメーターの数値を、そう恭介が読み上げた。
真人「ま、漫画だ……」
勇人「おい、真人。ストライクコールは?」
真人「あ、ああ……ストライク!」
◆◆◆
続いて二球目。
――――ビュッ!!!!
――ズドンッ!!!!
笹瀬川佐々美はバッドを振るが、完全な振り遅れ。
真人「Σちょ…今の、さっきよりも速かったんじゃねーか……?」
みんなは恭介の持つスピードメーターを覗き見る。
理樹「135キロ…更に速くなってる……」
勇人「真人、ストライクコール」
真人「ああっ、ストライク!!」
勇人「こりゃあ、次で140超えるかもな……」
恭介「俺達は…奇跡の目撃者になる……!」
佐々美「この私がっ…カスリもせずに終われるものですかっ……」
佐々美は、少しでも打率を上げられるようにバッドを短く持ち直す。
「ファイトですっ、佐々美先輩!」「先輩が負けるはずありません!」
応援の声も悲痛だ。
◆◆◆
そして第三球目。
鈴は振りかぶって、投げた。
――――ヒョロッ←スッポ抜け
――ブゥオンッ←バッド空振り
―パスッ←ボールキャッチ
勇人「えー……」
勇人は少しゲンナリとして、鈴の投げたボールをキャッチした。
佐々美は、振ったバッドを止めきれなかった。
佐々美「チェ…チェンジアップ…しかも、馬鹿にしたようなすっとんきょうな暴投……この私をここまで愚弄するとは………」
鈴「いや、集中力が切れただけだ」
佐々美「Σなあぁっ……」
笹瀬川佐々美は絶句。
真人「おい、鈴。もっかい集中力出して投げてみろ」
真人が、呆然と立ち尽くす笹瀬川佐々美をバッターボックスから押し出して、バッドを持って構える。
鈴は投げる。
だが、その後何球も投じるも、100キロ台は出ることはなかった。
80キロを越えるのが精々だった。
真人「もっかい猫蹴ってみよう」
――――バキィッ!!!!
真人が蹴られた。
理樹「これって何なの?」
恭介「火事場のクソ力みたいなもんだろう。意識しては出せない力だってことだな」
理樹「無意識にか……あの猫達がさ…それだけ大事ってことだよね」
恭介「だろうな。まぁ、とりあえず、さっきの魔球に名前を付けようぜ!!」
理樹「単なるストレートじゃないの?」
恭介「パワプロをみろ。きょうびストレートでもオリジナル名が付けられるだろ」
理樹「いや、知らないよ……」
恭介「猫の魂が宿ってるからな……」
恭介は数瞬の間考えて、
恭介「ライジングニャットボール……ってのはどうだ?」
理樹「いや、そんなキラキラした目で言われても……」
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