MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第112話 白い日傘
◆◆◆
《グラウンド》
そして翌日の放課後。
―――カッキぃぃぃぃぃン!!
と、勇人が打ったボールが空高く飛んでいく。
真人「大ホームランだな」
勇人「俺が打つといつもこうだ」
打球は校舎を高々と越えていく。
恭介「……今のでボールが切れたな」
理樹「集めようか?」
恭介「ああ」
みんな散らばったボールを集めに回る。
勇人は最後に自分が打った、校舎を越えたボールを探しに出る。
◆◆◆
《中庭》
グラウンドの喧騒も、中庭までは届かない。
下校する生徒も疎らな時間、無機質な校舎に囲まれた中庭はとても静かだった。
勇人「確か、この辺に落ちたはずだが……」
視線を動かす中、中庭の端、大きな欅の木の下に白いものがあった。
ボール…ではなく、人らしい。
それは傘だ。
木の下に広げられた日傘だった。
勇人「確か……西園だったか?」
その日傘の下にいたのは、クラスメイトの西園美魚だった。
自分の手元に木漏れ日が当たらないように置いてある白い傘。
それは珍しくもない日用品だが、その日用品のせいで、西園美魚はクラスから少し浮いていた。
勇人も同じクラスだが、話をしたことはない。
勇人「なぁ、西園。この辺にボール飛んで来なかったか?」
美魚「ボール…ですか?」
勇人の言葉に、本を読んでいた美魚は、自分の背中の後ろから白球を取り出した。
勇人「おー、拾ってくれたのか?」
美魚「いきなり飛んできたので、ビックリしました。ソフトボールではないですね。野球部は休部状態のはずですが」
勇人「ま、ちょっと色々あってな。今俺らが野球やってる」
勇人は美魚からボールを受け取る。
勇人「ボールにぶつからなかった?」
美魚「それは……大丈夫ですけど」
勇人「そうか」
美魚「……………」
何故か美魚は、黙ったまま勇人を見る。
勇人「……どうかしたか?」
美魚「責任、取ってくださいね」
勇人「責任……?」
美魚「痣になってたりしたら…困ります」
勇人「あー…やっぱ、どっかぶつけたか? 怪我したようなら治すが。見せてみろ」
美魚「いえ、平気ですから」
勇人「んー、そう。ま、何か悪かったな。もし怪我が悪化するようなら言えよ?」
勇人はそう言って、グラウンドへと戻る。
最後に振り返って、欅の下に視線をやると、木陰に埋もれるようにして、美魚は本を読んでいた。
勇人の声に応えることはない。
今しがたの出来事など、忘れてしまったように。
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