MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第102話 もう一匹の迷い猫
頼子「私……私を……メイドとしてここに置いて下さい………!!」
まぁ、メイド服着てるしな。
と、そんなこんながあり数日が経過した。神爪家でメイドとして住み込むこととなった鷺澤頼子は、セバスチャンにあれやこれやと言われながら使用人としての何たるかを教育させられている。
ま、メイドとして置いて下さいと言ったわりには頼子は全く家事が出来ず、かなりのドジっぷりでセバスチャンも手を焼いているみたいだ。
セバスチャン曰く、勇人の前に契約していた屋敷の使用人の方がかなりブッ飛んだ人達らしく、あの頃に比べたら大分楽らしいが。
◆◆◆
《神爪家》
頼子「―――す、すいませんでした……」
香澄「メイドが寝坊で朝食を作り忘れるって………」
勇人「ま、ちょっとずつ馴れていけばいいだろ」
結局またセバスチャンが作った朝食を食べる向こう側で、頼子はしきりに恐縮していた。
メイドが寝過ごすのは問題だが…ま、そのうち何とかなるだろ。
まさかメイドの仕事が出来ないどころか、メイドという職の仕事の内容を全く知らないとは思わなかったが。
◆◆◆
《鳳凰学園高等部1年1組》
恭介「……なんというか、つくづく何かに巻き込まれるよな、勇人は」
勇人「……るせーよ。ま、自覚はあるが」
何故か、一つ上の学年にいるはずの棗恭介がこの教室にいるかも、もはや慣れしたんだ光景なのか、誰も気にしなくなった。
そんな光景の中に、いつものように勇人の席を中心(と言っても窓際の一番後ろ)に、いつもの面子と話している。
最近の話題は、最近家に住み込みで働くことになった頼子のことだ。
つい先日、みんなが家へやって来て神爪家はまた一際賑やかであった。
まぁ、いつものことだが。
杉並「ところで、だ。神爪勇人。俺は昨日、興味深いチラシを発見したんだが」
勇人「あん?」
杉並はガサゴソとポケットを漁ると、一枚の紙切れを渡してきた。
そのチラシに目を通す。
勇人「プロキシマからの毒電波について。その傾向と対策。脳髄は物を考える処に非ず――――」
杉並「――おっと悪い。そいつは別件だった」
ひょいとチラシが持っていかれる。
みんな(((………いったい、どんな件だ)))
杉並「おお、こっちだこっち」
そう言って別のチラシを渡してくる。
勇人「……猫を探しています。名前は……“頼子”……ね。で、これがどうかしたのか?」
杉並「なんだ、驚かないのか?」
勇人「……ま、な」
なのは「………どういうこと?」
全てを知った風で、いつものように会話しているかのように見える勇人と杉並だったが、多少妙な緊張感のような空気が漂い、その空気を察知したみんなを代表して、なのはが聞いた。
杉並「“鶴の恩返し”の話しは知ってるな?」
鶴を助けてやったら、恩を返しに来たというアレである。
勇人「ま、全く記憶にないわけではないが……」
理樹「……えーと、勇人がいつか助けた猫が、人間になって勇人に恩を返しに来た…ってことなの?」
恭介「恐らくな」
真人「マジかよ。俺も野生のゴリラとか助けて、恩を売ってみっか!。もしかしたら恩返しで筋肉を恵んでくれるかもしれねーしなぁ!!」
謙吾「……ないだろ、それは」
鈴「本当にキショイな、お前」
フェイト「でも、何だろう……」
フェイトが、今まで勇人と関わってきた出来事を振り返り、
フェイト「勇人さんなら別に……」
はやて「そーいうファンタジーっちゅうか、メルヘンっちゅうか………」
ことり「猫が人に化けて恩返し……くらいしてきそうですね」
みんな「「「「確かにな」」」」
勇人「……かったりぃ」
純一「それ俺のセリフだぞ」
◆◆◆
《喫茶店アストラル》
放課後。いつものように店で店長として働く勇人は、カラン、とベルの音を奏でて開く店の扉に視線をやり、
勇人「いらっしゃ……」
と、言いかけて口を閉じた。
「ただいまー♪、そしてこんにちはー♪。都築乙女、南の島サイパンから無事に帰宅ぅ〜」
向日葵のような笑顔。風に揺れる長い黒髪。
勇人「……また早々厄介事が転がり込んできたか」
と、深い深い溜め息を吐いた勇人。
闇の書事件の折りに知り合った女性。趣味は困っている人を助けに行くこと。
………それも世界規模で。
そしてこの都築乙女が勇人の元にやって来ることは、大抵何か厄介事の用事があるときであり、世間話をするためにやって来たということは殆ど無い。
大抵は拾ってきたはいいが、家で面倒を見切れなくなった野良猫達を押し付けてやって来るのだ。まぁ、レンとか、猫好きのセバスチャンがいるから別に構わないが。
勇人「で、今度はどんな厄介事を持ってきたんだ?」
乙女「えー、そんなの持ってきてないよ?。サイパンに行ったお土産を持って帰ってきたのー♪」
溜め息混じりに聞く勇人に、乙女は向日葵のような笑顔をばら蒔き、勇人はゆっくりとその“お土産”とやらに視線を向け、再び深い溜め息を吐いた。
乙女がその手に掴んでいるもの。
それは猫とか犬とかではなく、どこからどう見ても、人間の女の子だった。
乙女「拾ってきちゃった♪」
てへ、と微笑みながら、軽く言い流す都築乙女。
乙女「名前は“希”ちゃん。今日から勇人さん家の新しい家族よ!」
勝手に加えないでほしい。
首根っこを掴んだ乙女に抵抗しようともせず、ぶら下がっている女の子。
黒い瞳でジッと勇人を見つめながら、一言も喋ろうとしない。
勇人「……最近は何だ、住むところに困ってる少女が増えてんのか?」
勇人や神王・魔王のお陰で治安はかなり良い初音島。
そんな出来事はないはずなのだが。
神爪家に、また新たな住人がやって来たのだった。
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