MAGI☆NIGHT〜Making Good Relations,OK?〜
第74話 闇夜に蠢くモノ
◆◆◆
《神爪邸・リビング》
仕事が終わり帰宅した勇人は、セバスチャン達に夕飯を作らせて、皆とリビングで夕飯を食べていた。
神王「おーし! まずは一杯いこうぜ一杯!!」
魔王「そうだね、こういう席ではイッキに飲むのが礼儀らしいよ!」
突然やって来た五月蝿い奴等と一緒に………。
勇人「ほんっと、唐突に来やがって………」
ネリネ「すいません勇人様、引っ越しのご挨拶だけのつもりでしたのに」
キキョウ「お父さん達が暴走しちゃって………」
勇人「ま、構いやしねーよ。いつものことだ」
イヴ「……………」
眉間に皺をよせて額に青筋を立てる勇人に、イヴは肩をポンッと叩き同情するが、五月蝿い状況が変わるわけでもなく勇人は深々と溜め息を吐く。
ルルーシュ「………あいつらは本当に一世界の王なのか?」
勇人「そう言いたい気持ちはよく判るが………紛れもなく神界と魔界の王だ」
C.C.「………何処に行っても“王”という生き物は変なやつばかりなんだな」
ルルーシュ「……そのようだな」
かつて葬りさった彼の父親も“王(皇帝)”の座についていたが、神王・魔王とは性格などが全然違うとも“変人”のベクトルは似たようなものだとルルーシュは思った。
C.C.は、一時とはいえ皇帝の座についたルルーシュも含んで言ったのだが、彼がそれに気づく様子はなかった。
アリシア「ネロ、それ美味しいの?」
ネロ「うむ。執事長が作ったこのプリンの味は、実に美味である!」
リインフォース(死徒がプリンを食べる図はかなりシュールだな)
神爪邸では新顔のネロ・カオスも、元のキャラが大分壊れてすっかりアストラルの一員になっている。
今では主である勇人の命により鳳凰学園に生物の臨時講師として通っているが、初の授業で割りと生徒から授業が解りやすかったことで人気が出たのは余談である。
◆◆◆
セバスチャン「―――勇人様」
勇人「ん? 何だ?」
夕食から数刻が経ち、未だにドンチャン騒ぎをしている神王・魔王や、ルルーシュにこの世界の学校に行かせろとせがむC.C.や、既にウトウトしているアリシア達やネリネ達から離れて、レンを膝に乗せて背を撫でながら酒を飲んでいた勇人にセバスチャンが電話の受話器を片手に持ってくる。
セバスチャン「クロード様から連絡です」
勇人「………そうか」
受話器を受け取り、電話に出る。
勇人「どーした? 定時連絡の時間じゃねーと思うが」
クロード「ああ、すまない。君に任された仕事が終わってね、その報告と、一つ気になることが……」
勇人「?」
クロード「連邦軍にいる父さんから聞いたんだけど、『九天魔人』の一角に妙な噂が流れてるって………」
勇人「九天魔人………誰の噂だ?」
クロード「ヴァルドール・ハンベルガング………あの元『魔導十賢者』の一角だ」
勇人「!」
クロード「噂の内容は大したことじゃないんだけど……急に行方不明になったって、政府に情報が流れてた。もしかしてなんだけど………」
勇人「あー、恐らく推測通りだろ。神界と魔界の王と王女や、婚約者候補の土見稟、莫大な富を持つ領家の人間達や訳有りの奴等が鳳凰学園に集まり、数日後には『魔導師選抜試験』がある。何かを起こそうとするなら、その時だろ。………近い内に世界中に散らせた“幹部”達を一度集める必要があるな」
クロード「!!」
勇人「ま、取り敢えず任務ご苦労さん。他の連中にも、さっさと初音島に集まるように言っといてくれ」
クロード「ああ、わかった」
通話が終わり、勇人は受話器をセバスチャンに渡した。
セバスチャン「まだ“アカシャの蛇”の件が片付いていないというのに、次から次へと厄介ごとが転がり込んで来ますね。隠居する場所を間違えたのでは?」
勇人「たまに俺もそう思うが………多分何処行っても厄介ごとに巻き込まれるだけだと思うぜ」
セバスチャン「………それで、どうします?」
勇人「ま、現状の戦力でも負けることはないだろーが、数で来られるとさすがに面倒だからな。早いうちにメンバーをこの島に集めた方がいいだろ」
セバスチャン「そうですね。いくら鳳凰学園や神界・魔界の戦力があるとはいえ、手放しに安心は出来ませんし」
勇人「けど、ま、その前に…………」
勇人はチラリと、電話している内に静かになったリビングを眺める。
勇人「このメンドクセェのをどーにかしないとな」
酔い潰れて食い潰れて死屍累々と化した奴等を見て、勇人は再び深い溜め息を吐いた。
◆◆◆
《初音島・工業地路地裏》
セルティ『……………』
勇人が家で溜め息を吐いた同時刻、人気がない街の路地裏で、セルティは自らの影で出来た大鎌を手に握り、相棒の黒バイクに又がりながら近づいて来るものをジッと見据える。
セルティ(………なんなんだ、こいつらは!?)
首無しライダーである人為らざる者であるセルティでも、こういう状況は初めてだった。
目が虚ろな、人為らざる者達に囲まれるのは………。
鎌で切り裂いても何度も立ち上がり向かってくる。人じゃないことは戦っている内に理解したが、それでもゾンビの相手をしたのは初めてだった。
セルティ(新羅の頼みとはいえ、臨也の依頼を引き受けたのが間違いだったか)
彼女は新羅が待つ家に帰る途中であったが、その帰りに妙な気配を感じ取り路地裏に寄ってみたのだが………
セルティ(まぁ“首”の気配じゃないことはわかっていたが………)
それでもこの状況はないだろう。セルティは寄り道したのを激しく後悔し、もう倒さずにこのまま逃げようかと思考していた。
その瞬間――――――。
「“葬月”月下双葬!!」
セルティ『!?』
―――――ズバァァン!!!!
突然空から、漆黒に身を包み二刀の小太刀を繰り出し、ゾンビ?の一体を粒子レベルで粉砕した男が地に降りてきた。
回りのゾンビ擬き達は、突然現れた男に警戒して距離を取る。
セルティも鎌を構えて、突然この戦場に乱入してきた男を注視する。
セルティ(今度は一体何なんだ………)
「…………おい、女」
セルティ『!』
「邪魔だ。コイツらに絡まれただけならサッサと消え失せろ」
二本の小太刀を群がるゾンビ擬き達に構え、背中越しに『月影 夜葬』は言った。
セルティ『………………』
セルティはよく状況が飲み込めなかったが、漆黒の男に軽く頭を下げてバイクを走らせた。
夜葬「………………ふん」
セルティのする姿が完全に見えなくなり、この場にいるのは夜葬とゾンビ擬き達だけとなる。
夜葬「アカシャの蛇の駒どもか……アルトの言う通り、この島にロアがいるのは間違いなさそうだな」
ゾンビ擬き「「「ぐおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」
歯を剥き出しにして襲いかかってくるゾンビと化した吸血兵達。
迫ってくるも夜葬は顔色一つ変えずに、足に付けてある鞘に手を伸ばし、投擲用ナイフを宙に無造作に投げる。
夜葬「“戒門”………」
夜葬の周囲に、投げた投擲ナイフが無数に増殖して宙に浮かび上がってくる。
夜葬「………魔葬刃滅!!」
―――ズガガガガガガガガッ!!!!
宙に展開した投擲ナイフが全て一斉にゾンビ擬き達に突き刺さり、ゾンビ擬き達は串刺しにされ跡形もなく消滅していった。
夜葬「ロアがいるということは、シエルやアルクェイドもいるのか。シエルはともかく、あの白い吸血姫との接触は極力避けないとな………」
夜葬は自身の足下にある影に沈んでいき、そのまま溶け込み、消えていった。
イメージED
『You got game?』
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