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明日の値段〜Lady Lennon〜
第5話 神子様御一行




◆◆◆




《トリエット》




「もうくたくた、休みたいー……」



勇人「そうだなぁ。ま、砂漠だから暑いのは当然か。話は宿でしようぜ」


「……暑いって言ってる割には汗一つ掻いてないよな、お前」



「すごいねー♪」



「………コレットもだよ」










◆◆◆



《トリエット・宿屋》




宿屋についたらもう夜になってしまっていた。今は宿屋の部屋で、俺以外のみんなが話をしていて、俺はその話に耳を傾ける。





「……つまり、この『エクスフィア』は私達の潜在能力を引き出す増幅器なのね」



白髪の女性は、基地で手に入れたと思われる宝石みたいな丸い石をじっと見つめて、茶髪の少年に尋ねた。



「私も…使えるだろうか



「難しいだろう」




女性の期待の言葉を、男性が容易く打ち砕いた。




「エクスフィアは、『要の紋』がなければ人体に有害なだけだ」



コレット「あのぉ……要の紋って作れないんですか?」



さっきこの町に着いたやりとりで名前が判明した金髪の少女『コレット』が、男性におずおずと尋ねる。



「先ほど話した通り、要の紋というのは『抑制鉱石』を加工して、表面にエクスフィアを制御するための紋章を刻んだ装備品のことだ。ドワーフの間に伝わる秘術と言われている」



「ああ。そのまじない…っていうか紋章は、俺でも彫れるんだけど。抑制鉱石の加工は親父にしか出来ないんだよ」



「ねぇ? 抑制鉱石というのは、この中にないのかしら」




そう言って、白髪の女性は袋から色々な道具を取り出す。




「姉さん! これ、家から持ってきたの!?」



「当たり前です。貴重な研究品ですからね」




やはりというか、この白髪の女性と少年は兄弟だったか。




女性は色々取り出した道具を一つ一つ確認していく。




それを見た茶髪の少年は、恐らくその女性の禁句になりそうな言葉を口にした。



「何だよ。ガラクタばっかりじゃん!」



「……何ですって?」



「え、あ、いや、その…」




「……ん? これは………」



男性が足下に転がっている道具を拾う。




「あぁ、それは人間牧場の前で拾ったのよ。天使言語が彫られていたから、持ち帰ったの」




猫ババかよ




「先生! これ、要の紋だよ!」



茶髪の少年が、これ幸いと言わんばかりに男性が手に持つ道具を指差す。




「しかし途中で紋章が擦り切れている。このままでは使えないぞ」



男性が道具を茶髪の少年に手渡した。




「………これぐらいなら、俺が直せるよ。大丈夫、明日には先生もエクスフィアを装備出来るよ」



「本当!? ありがとうロイド! じゃあ悪いけど、お願いするわね」





ロイドと呼ばれた茶髪の少年が承諾し、話は一区切りついたようだ。





ようやく終わったか。



白髪の女性が此方を向き、他のみんなの視線も俺に注がれる。





「………それじゃあ、貴方のことなんだけど。カミツメ…だったかしら? 貴方の名前」



勇人「勇人が名前。神爪はファミリーネームだ」



「そうなの? まぁいいわ。それでハヤト、何故貴方はあの場所で天井から落ちてきたのかしら?」



勇人「上から落ちてきたからだ」



「いや、まぁ、そうなんだけど………」



「そうではなく、何故上から落ちて来たのかを聞いてるんだ」




勇人「そんなもん上にいたからに決まってんじゃねーか」




「「………………ハァ」」




白髪の女性と、茶髪の男性が同時に深い溜め息を吐いた。





「……では質問を変えます。貴方は彼処で何をしていたの?」





………さて、どうするか。この惑星にはエクスフィアとか地球にはない色々特殊な技術があるようだが、流石に宇宙に進出するほど技術は進んでいないみてーだし。異世界からやって来たって言っても信じはしないだろーからなぁ…。




当たり障りなく言うか。





勇人「……実は人探しをしていてな」



ロイド「そういや、そんなこと言ってたな」




勇人「あぁ、実は知り合いの娘達が誘拐されてな。仲間と一緒にしらみ潰しに探してたんだが、その仲間ともはぐれてしまってな」





俺は懐から紙と鉛筆を取り出し、鉛筆を紙に走らせる。




シャ、シャッ、シャー...




勇人「コイツらなんだが、お前ら見かけなかったか?」




俺は10秒程で描き上げた、誘拐された王女達5人と仲間4人と2匹の似顔絵をコイツらに見せる。




「Σ描くの早ッ!?」



コレット「凄く上手いね♪」




その似顔絵は、写真でも撮ったんじゃないかというくらいに綺麗に描けていた。


この惑星に写真があるのかは知らんけども……





「………見てないわね」



「私も見てないな」




どうやら見たことはないらしい。まぁ、はぐれたばっかの喜助やフェイト達は仕方ないにしても、王女達も見かけてないか………。





勇人「はぐれた仲間の身は別に心配してないんだが、拐われた娘達は早く見つけて保護したいからな」



「その娘達を拐った者の手がかりは無いのか?」




俺は首を横に振る。手がかりはこの惑星シルヴァラントにいるってことだけだ。





「………成る程、事情は解りました。それで貴方はコレからどうするの?」



勇人「どうって……まぁ、テキトーに世界周りながら捜すつもりだが」



「テキトーって……捜す気あるの?」



勇人「世界中回ってりゃ、その内手がかり位は手に入るだろ」





だって何も手がかりがないからな。












コレット「あの…良かったら私達と一緒に来ませんか………?」



「コレット………?」




コレット「私、『神子』で今『世界再生の旅』をしてるんです。再生の旅は大体このシルヴァラント中を回る事になるから、もしかしたらその拐われた娘達の手掛かりも、掴めるかもしれません」




勇人「………ま、そりゃあ手掛かり無しだから俺は一向に構わないが。そっちはいいのか?」



コレット「はい! 良いですよね、リフィル先生?」



リフィル「………ま、仕方ないわね。この旅は貴女の旅なんだから、神子の言うことを尊重しましょう。クラトスもそれでよろしい?」



クラトス「神子に従おう」



茶髪の男性はクラトスで、白髪の女性はリフィルという名前らしいな。


名前が判明してないのはリフィルの弟だけか。






リフィル「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はリフィル・セイジ。イセリアという村で教師をしているわ」



ロイド「俺はロイド・アーヴィング。イセリアの生徒その1だ!」



「僕は姉さんの弟のジーニアス・セイジ。イセリアの生徒その2」



コレット「私はコレット・ブルーネル。イセリアの生徒その3だよ♪」



クラトス「クラトス・アウリオン。傭兵だ……」




勇人「じゃ、改めて…。俺は神爪勇人、ハヤトが名前ね。で、コイツは……」




俺の懐からタマが顔を出す。





勇人「旅の仲間の1人もとい1匹! 温泉亀のタマゴ。通称タマ!!」



タマ「きゅ〜♪」




タマは俺の懐から飛び出し、宙を飛ぶ。





ロ&ジ&リ「「Σ亀が飛んでる!?」」



コレット「わっ、すごーい♪」




クラトス「………この亀はペットか?」



勇人「いや、拐われた娘達を捜す仲間の1人もとい1匹」



クラトス「……………」














こうして勇人とタマは、この神子様御一行の仲間に加わった。






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