明日の値段〜Lady Lennon〜 第52話 名前を呼んで ◆ ◆ ◆ 《高町家》 勇人「―――…とまぁ、事件の詳細はこんなとこだ」 近右衛門「ふむ、分かった。御苦労じゃったのぅ」 勇人「ま…そうでもなかったさ。色々解ったこともあるからな」 プレシア・テスタロッサの次元災害未遂事件…P.T事件から数日が経過した。 途中から介入してきたエンヴィー達がプレシア達を連れて転移して、その足取りを探してみたが全く何処へ行ったのか解らない。 エンヴィー達が転移した後、あの庭園にいた全ての傀儡兵とキメラは同時に転移してしまった。これらの足取りも全く掴めていない。 その後アースラに戻り、勇人が飲み込んだジュエルシードやフェイトの裁判等の話しがあったが、ジュエルシード以外の問題は概ね解決しそうである。 勇人が飲み込んだジュエルシードは、勇人の体内に入った後に勇人の肉体と融け合ってしまったようで、永久に取り出すことは出来ないようだ。 此方の世界にいたフィリアや、プレシアに捕らえられていたデュークの傷の治療も問題なく完治し、ロイ・アーガイル提督達と共に管理局の本局に向かった。 日常へと戻ったなのはと恭也と美由希は、学生の生活へと戻って平和を満喫している。 フェイトとアルフは、クロノやリンディと共にアースラで過ごしている。裁判が終わるまでは、フェイトはあまり自由に動けないのだ。 勇人「ま…しばらくしたら適当にそっちへ戻る」 近右衛門「判った。ゆっくりしてくるがよい」 携帯の電話を切って、ポケットに戻す勇人。 今現在この高町家にいるのは、勇人ただ1人。 ライは別荘に引きこもり修行をし、桃子は現在翠屋で働いている。勇人はこの誰もいない間に、やるべきことをやってしまうことにした。 今日は、フェイトとアルフと別れる日だからである。 ◆ ◆ ◆ 数時間が経過し、勇人はフェイト達がいる場所へと足を運んだ。 そこで、なのは、フェイトの2人は別れる前に色々話していて、リンディ、クロノ、エイミィ、ユーノ、アルフ、ライディース、桃子、恭也、美由希の9人は2人から少し離れた所で軽く雑談をしていた。 なのは「あ………!」 なのはが、勇人がやって来たことに気がつき、勇人に向かって大きく手を振る。 勇人は、なのはとフェイトのもとへと歩いた。 勇人「よ!」 軽く挨拶をした勇人。フェイトも何かを言おうと口を開くが、中々言葉に出来ないでいた。 少しの間を開けて、フェイトは口を開く。 フェイト「ぇ…と、その……勇人…さん?//////」 若干頬を朱に染めて、何処かへ照れ臭そうにフェイトは勇人の名を呼んだ。 勇人「いや、何で疑問系? てゆーか……… それなりに一緒に行動していたのに、初めて名前を呼ばれた気がする…」 フェイト「あはは……」 聞けば、なのはに友達になるのは相手の名前を呼ぶことだと教えられたようで、たどたどしくもフェイトは「勇人」と呼んだ。 クロノ「そろそろいいかな?」 勇人が来て間もないが、どうやらもう時間のようだった。 なのは「思い出にできるもの、こんなものしかないんだけど……」 フェイト「じゃあ、私も……」 記念になるものが渡したかったのか、頭のリボンをほどくなのは。 フェイトも自分のリボンをほどき、お互いに交換した。 勇人「さて、それじゃあ俺はコイツをやろう」 そう言って勇人は、着ているコートの懐から 一匹の、茶色い毛をした山猫を取り出した。 フェイト「ぇ……?」 その山猫は、勇人の手から飛び降りて地面に着地する。 そして、その山猫は人の姿へと形を変えた。 フェイト「リニ…ス…?」 リニス「久しぶりですね、フェイト」 勇人が家でしていたことは、リニスを蘇生させる事であった。 あの世でも無数に存在する魂の中でも、特定の動物の魂を見つけ出すことは勇人でめ難しく、リニスの記憶や人格のデータは、プレシアが使い魔としてリニスを使役していた時の物を使っている。 つまり、蘇生したというよりは、記憶を引き継いだ新しいリニスといったところだ。 フェイト「リニス!!」 フェイトはリニスに抱き着いた。離れていたアルフも、突然リニスが現れたことに驚いている。 リニスはもうとっくに亡くなっていたから無理もないが……。 勇人は、リニスを勇人の使い魔として蘇生したことや、今現在アリシアを蘇生させるかどうかを検討していること、蘇生させたリニスをフェイトとアルフと一緒に過ごさせることを告げた。 リニスに続いて、アリシアまで生き返らせることが出来るかもしれないことに驚きを隠せないでいたフェイトだったが、今はリニスとの感動の再開を堪能することにした。 [次へ#] [戻る] |