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明日の値段〜Lady Lennon〜
第25話 母の願い
                                                                         ◆  ◆  ◆
                                    〔次元空間・時の庭園〕



女が手に握っている鞭が、しなるようにフェイトに当たる。



 フェイト
「うッ……」

                                                

次元空間にある時の庭園。
                                    そこはフェイト達が報告に戻ってきた場所である。
                                                そこからはフェイトの悲痛な声が響き渡っていた。
                                                そしてフェイトの目の前には、鞭を持ち、黒い長髪に氷のような冷たい眼をした美女……プレシア・テスタロッサがいた。
                                                             プレシア
「たったの3つ……。これは、あまりにも酷いわ…」
                                                 フェイト
「はい……ごめんなさい……母さん」
                                                フェイトの腕は上から鎖で吊らされ、体には鞭で打たれた数えきれない傷跡が至る所にあった。
                                                             プレシア
「いいフェイト。あなたは私の娘…大魔導師プレシア・テスタロッサの一人娘。不可能なことなどあってはダメ。どんなことでも……そう、どんなことでも成し遂げなければならないの」
                                                 フェイト
「……はい」
                                                フェイトは絞りだすような声で返事をする。
                                                             プレシア
「こんなに待たせておいて上がってきた成果がこれだけでは……母さんは笑顔であなたを迎える訳にはいかないの。分かるわね、フェイト……?」
                                                             フェイト
「……はい。分かります」
                                                 プレシア
「だからよ。だから…覚えてほしいの。もう二度と…母さんを失望させないように………!」
                                                             フェイト
「ッ!? ああぁッ!!」
                                                フェイトはまたプレシアの鞭打ちを受けていた。
                                    その頃アルフは、外の廊下で耳を塞ぎ座り込んでいた。
                                                 アルフ
(何なんだ…あんまりじゃないか、あの女! あの女の…フェイトの母親の異常さとかフェイトに対する酷い仕打ちとかは今に始まったことじゃないけど……今回のはあんまりだ! 一体何なんだ!? あのロストロギアは……ジュエルシードはそんなに大事な物なのか!?)
                                                             プレシア
「ロストロギアは母さんの夢を叶える為にどうしても必要なの。特にあれは……ジュエルシードの純度は他の物より遥かに優れている。あなたは優しい子だから躊躇うこともあるかもしれないけれど……邪魔する者がいるなら殺しなさい!!どんなことをしても!! あなたにはその力があるのだから……」
                                                プレシアはそう言うと鞭を杖に戻し、フェイトを縛っている鎖を解いた。
                                    フェイトはその場に崩れ落ちるように倒れる。
                                                             プレシア
「行ってきてくれるわね?私の娘…かわいいフェイト」
                                                 フェイト
「はい……行ってきます……母さん……」
                                                             プレシア
「しばらく眠るわ。次は必ず母さんを喜ばせて頂戴」
                                                そう言うと、プレシアは闇の中へと消えて行った。
                                                                                     ◆  ◆  ◆
                                                            フェイトとアルフが地球へ戻ってしばらく経ち、プレシアはラストとグラトニーと話している。
                                                             プレシア
「ジュエルシードが揃えば……私の望みが叶えられるのよね?」
                                                             ラスト
「ええ、そうよ。あの子に植え付けてある『石』だけじゃ、まだ足りない……ジュエルシードの持つ力が必要になる」
                                                             グラトニー
「ねぇ、ラスト〜」
                                                             ラスト
「何かしらグラトニー?」
                                                ラストとプレシアが話していたら、グラトニーが紙箱を手に持って、その中に入ってあるケーキを取り出した。
                                                             グラトニー
「コレ、食べていーい?」
                                                 ラスト
「…プレシア、あなたの娘が買ってきたものだけど、食べる?」
                                                 プレシア
「いらないわ。食べたいなら食べなさい」
                                                 グラトニー
「わーい!」
                                                グラトニーは中に入ってあるケーキを素手で掴み、バクバクと食べ始めた。
                                                             ラスト
「あら、よかったのかしら。せっかくあなたの娘が買ってきてくれたのに?」
                                                             プレシア
「ふん……」
                                                プレシアは鼻を鳴らし、グラトニーが食べているケーキを眺めて冷たく言い放つ。
                                                 プレシア
「あの子が買ってきたものなんて、口にしたくもないわ」
                                                


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