異界への旅〜FAIRY TAIL〜 第27話 最強チーム! ◆◆◆ ギルドの扉を開けて帰ってきたのは、一人の女。 エルザ「今戻った、マスターはおられるか?」 鎧を纏った女、エルザはそう言った。 ――――ズドッ! と、馬鹿でかい角を床におきながら。 きっと討伐にいった魔物の角かなにかなんだろう。 ………でもなんでもって帰った? ミラ「お帰りっエルザ。マスターは勇人と一緒に定例会よ」 エルザ「そうか………」 「エ、エルザさん…そのバカでかいのなんですかい?」 エルザ「ん? これか」 ギルドの仲間が質問する。 エルザ「討伐した魔物の角に地元の者が飾りをほどこしてくれてな……。綺麗だったのでここへの土産にしようと思ってな……」 そこまで言うと、エルザは質問した人のほうを見る。すると、 エルザ「迷惑か?」 と聞いてきて、 「い…いえっ!! 滅相もない!!」「討伐した魔物の角…か」「すげ………」 視線を向けられた人はおびえ、周りは感嘆の声を挙げる。 エルザ「それよりお前達、また問題ばかり起こしているようだな。マスターが許しても、私は許さんぞ」 ギロリ、とエルザはギルドの仲間達を睨む。 エルザ「カナ…なんという格好で飲んでいる。ビジター、躍りなら外でやれ。ワカバ、吸いがらが落ちているぞ。ナブ、相変わらずリクエストボードの前をウロウロしているのか? 仕事をしろ」 矢継ぎ早に言うエルザの言葉に、カナはいつもは樽で飲んでいるのに、今はもう手放しているし、ビジターは落ち込んでるし、ワカバは落ちた吸いがらをセッセッと集めてる。ナブにいたっては、もはや涙目だ。 エルザ「マカオっ!」 マカオ「!!」 エルザ「……………」 マカオ「……っ………」 エルザ「…………………………………はぁ」 マカオ「Σ何か言えよっ!?」 エルザ「ところで…ナツとグレイはいるか?」 マカオの叫びを無視したエルザが、近くにいたハッピーに聞く。 ハッピーは即答して、二人を指差す。 エルザが、ハッピーの指し示したほうに目をやると、 グレイ「や…やあエルザ…オ…オレたち今日も仲良し…良くや…やってるぜい………」 ナツ「あ゛い」 二人が肩を組んでる、普段では見られない異様な光景が姿を現した。 ルーシィは「ナツがハッピーみたいになった!!?」といって驚いてる。 エルザ「そうか…親友なら時にはケンカもするだろう……しかし、私はそうやって仲良くしてるところを見るのが好きだぞ」 グレイ「あ…いや…いつも言ってるけど…親友って訳じゃ………」 ナツ「あい」 凪「こんなナツ見たことねぇっ!?」 エルザが続けるが、完全に二人を親友としてみた発言だ。 勘違いもはなはだしい、が、ツッコミをいれるやつはいない。 ミラ「ナツもグレイもエルザが怖いのよ。ナツは昔ケンカを挑んでぼこぼこに、グレイは裸で歩いてるところをみつかってぼこぼこに、ロキはエルザを口説こうとして半殺し」 薫「うわぁ……」 新人達の疑問にミラが答える。 確かに、今までの姿しか見ていない彼等が驚くのも無理はない。 エルザ「二人とも、仲が良さそうで良かった。実は二人に頼みたいことがある。仕事先で厄介な話を耳にしてしまった。本来ならマスターの判断をあおぐとこなんだが、早期解決が望ましいと判断した」 エルザはそこで切ると、 エルザ「二人の力を貸して欲しい」 グレイ「えっ!?」 ナツ「はい!?」 あまりにも突然なエルザの言葉に、固まるグレイとナツ。 だが、「ど…どう言う事っ!!?」「あのエルザが誰かを誘うトコなんか初めて、いやっ、勇人以外で初めてみたぞっ!!」「こんなでけぇ怪物倒す女だぞ……」とみんなが口々に騒ぎ出す。 ハッピーですら、「何事なんだ……!?」と柄にもなくシリアス感を漂わせ、新人であるルーシィ達は少し真剣な顔で震えている。 皆がさわぐのも仕方ない。 エルザは勇人と行く以外は基本的に仕事には一人でいく。 何故なら、魔導士の中でも高位の実力を誇るS級魔導士だからだ。 足手まといは必要ないのだろう。 ミラ「エルザと…ナツと…グレイ…今まで想像したこともなかったけど……」 ルーシィ「?」 ミラ「これって、フェアリーテイル最強チームかも………」 ルーシィ「!!」 ミラの呟きに、ルーシィが驚愕の反応を示している。 しかし、「いや、最強じゃねぇんじゃねぇか? ほら、昔一時話題になったろ?」「あ?………ああ、あれか!」「そういやあったな、見たことはねぇけど……」と、ミラの呟きが聞こえたギルドのみんなが騒ぎ出す。 薫「あの…昔何かあったんですか?」 気になった薫が聞くと、マックス達が答えてくれた。 マックス「4、5年くらい前だっけか。ゼレフ書の悪魔っていう、かなり危険な巨大モンスターが現れてな」 マカオ「そのモンスターの討伐依頼が、いろんなギルドに回されたんだけどよ、誰も依頼を引き受けなかったんだ」 ワカバ「ゼレフ書の悪魔ってぇのは、それほど強大な力を持ったモンスターだからな。無理はねぇが……」 だが、その強大な力を持ったモンスターを討伐する依頼を引き受けたギルドがあった。 カナ「マスターが、その依頼を引き受けたのよ」 凪「まぁ、聖十大魔導ってやつの一人なんだろ。そんなにすげぇ魔導士だから、そのモンスターぶッ倒して今に至るんだろ?」 話を聞いてた凪がそう言うが、実際は違った。 カナ「あまりにも危険な依頼だから、念のためチーム組んで行ったのよ。マスターが直々にチーム組んで依頼に行くなんて、前代未聞なんだから……!」 マカオ「そのチームが、フェアリーテイル最強チームだろうよ」 ワカバ「たぶん、もう二度と組まねぇだろうけどな!」 薫「……どんなチームなんですか?」 マックス「まず、聖十大魔導の一人であり、フェアリーテイルのギルドマスターであるマカロフ。同じく聖十大魔導の一人で、妖精皇帝‐フェアリーカイザー‐の名で有名な勇人。今はクエストに出ててギルドにいないけど、フェアリーテイル最強候補の一人であるギルダーツ。同じく最強候補の一人、マスターの孫であるラクサス。最後に、同じく最強候補の一人である、謎の男ミストガン」 マカオ「この五人で一度だけチームを組んだことがある。ま、危険な依頼だったから、その戦いっぷりを観ることは出来なかったけどな!」 エルフマン「だが、聞いた話によると、その五人はゼレフ書の悪魔を圧倒し、瞬殺したって話だ。男だっ!!」 凪「へぇ……なんかすげぇんだな」 なんて話をしていると、 グレイ「む…無理だ………」 凪「ん? どした、グレイ」 まだざわついているギルドの中で、グレイが汗を流しながらつぶやいた。 グレイ「こいつと一緒ってだけでうぜぇのにエルザが一緒だなんてーーーーっ!!!!」 ナツ「こんなチームありえねぇっ!! つーか行きたくねぇっ!!!!」 グレイとナツが互いに指差して叫びあう。 ある意味息ぴったりだ。 案外いいチームなんじゃないか? 凪がそう思っていると、 ナツ「おおおおおおおっ!!!!」 ナツがルーシィのほうを向いて、なんか渾身の技を繰り出し、 ナツ「おまえ、今からナツだ」 ルーシィ「無理だって」 ハッピー「あい」 凪「さすがに無理だろ………」 ナツがルーシィにマフラーをつけて変装させていた。 ………ていうかやりきれてねぇっ!! ◆◆◆ 《???》 「あの鎧女、どこのギルドの者よ?」「知らね」「いい女だったなァ………くそっ!! 声賭けときゃよかったぜ」「オメーじゃ無理だ」「んだとっ!?」 枯れ木がたちならぶ森の中、廃れた建物の中で男達が騒いでいる。 そのなかで二人、中心に別格のオーラを漂わすものがいた。 「カゲヤマはまだ戻らねぇのか?」 そのうちの一人が仲間に聞く。 その男は長い鎌をもち、長い銀色の前髪を左に流している、二つ名である死神そっくりな魔導士。 名は、エリゴール。 魔導士ギルド、鉄の森‐アイゼンヴァルト‐のエース。 「アレの封印を解くのはそう簡単じゃねぇハズだ、仕方ねぇよ」 エリゴール「モタモタしてんじゃねぇよ……今が好機なんだぜぇ。ジジィどもが定例会をしてる今がな」 エリゴールは多少イライラしつつも、不敵な笑みを浮かべる。 ………そして、もう一人。 「………………………」 終始無言を貫く一人の男が、椅子に深々と座り、目を閉じていた。 彼から漂うのは、絶対的な強者のオーラ。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |