明日の値段〜End of Hypnosis〜 第31話 入団 羆「グオオォォォォォ!!!!」 野生の羆が現れた。 戦う? 道具? 逃げる? 勇人「いやアホなこと考えてんなよ」 勇人はそういえばと今朝見た新聞を思い出した。 ここ最近何処かの山から降りてきたと思われる羆が、町を荒らしていると。 住民の被害も出ているそうだ。 勇人「けど羆って、こんな地方には住んでねーはずなんだが……」 羆「グオオォォォォォ!!!!」 羆は咆哮し、目の前にいるリトルバスターズ達に襲いかかる。 勇人「考えるのは後だな」 羆「グオオォォォォォ!!」 恭介「みんな散れ!!」 恭介の合図にみんなが各々に散る。さっきまでリトルバスターズが立っていた場所には羆の太い豪腕が振り抜かれ、その太い爪が地面に突き刺さっていた。 真人「うるあぁぁぁっ!!」 謙吾「うおぉぉぉぉぉ!!」 その一撃に怯むことなく、謙吾と真人は羆に突っ込んでいった。 羆「グアァァァァァァ!!!!」 再び羆の豪腕が2人を襲う。 真人&謙吾「「うおッ!?」」 2人は各々左右に跳んで回避した。 だが2人が左右に散ったことにより、羆はその巨体では考えられないような猛スピードで、リトルバスターズ3人に向かって直進する。 恭介「Σうお、ヤベ!?」 恭介は電柱を使って塀へよじ登り、羆から逃れようとするが… 真人「理樹! 鈴!」 謙吾「何してる!? 早く逃げろ!!」 恭介「何!?」 恭介は2人を見る。鈴と理樹の2人はさっきの羆の攻撃を見て足がすくんだのか、足が震えて動けないでいた。 震えている間にも、2人に羆が迫ってくる。 恭介「鈴!? 理樹!?」 羆「グオオォォォォォ!!!!」 鈴&理樹「「……っ……!?」」 怯える2人に、羆の凶爪が容赦なく振るわれる。 ―――――ブンッ!! 恭介「……え……?」 一瞬の出来事に目を丸くする恭介。鈴と理樹を見ていた真人と謙吾も同様である。 羆が腕を振った先に、2人はいなかった。 否。羆の豪腕が当たる直前に、一瞬にして姿が消えたのである。 羆も何が起きたのか分からず、辺りをキョロキョロしている。 勇人「―――何処を見ている?」 恭介&謙吾&真人「「っ!?」」 その声は、謙吾と真人の後方から聞こえる。3人が視線を向けると、そこには鈴と理樹を両脇に抱えた勇人が立っていた。 理樹「あ……え………?」 鈴「!?。?。!!」 抱えられている2人も、一瞬何が起きたのか分からず、キョトンとしている。 勇人は2人を地面に下ろす。 勇人「大丈夫か?」 鈴「う、うん……」 理樹「だ、大丈夫です……」 勇人「そうかい」 勇人は2人の頭をワシャワシャと撫で回した後、羆に目を向ける。 羆「グアァァァァァァ!!!!」 羆も勇人を認知したのか、先程と同じく猛スピードで直進して、勇人に襲いかかる。 勇人「熊風情が……」 羆が理樹と鈴にしたのと同じように、勇人にもその豪腕を振る。 勇人「神皇流―――」 勇人はその振るわれた豪腕を右手で掴み取り、羆の直進力と身体の遠心力を使って回転し 勇人「―――羆落とし」 右手一本で、空へと放り投げた。 恭介「……………」 恭介を含む、リトルバスターズがその光景をポカーンと眺めていた。 勇人「判決―――」 空へと放り投げられた羆は、当然重力に引かれて落下。 勇人は左手で神父とは似ても似つかない大きな動きで十字を切る。 勇人「――――死刑!!!!」 ドガアァァァァァアン!!!!!! 羆は地面に激突した。 ◆◆◆ その後、騒ぎを駆けつけた住民により警察へと連絡がいき、気絶した羆は引き渡された。 後に、勇人とリトルバスターズの事が大きく新聞の記事を飾ることになるのは、言うまでもないことである。 勇人「………ようやく帰れる」 新聞記者に写真を撮られることは何とか間逃れたが、熊退治に多く時間を取られた。 日もとっくに沈み、時間的にはもう夜である。 勇人「はやては今日忍ん家だっけ」 近いうちに月村家にも顔出そうかなーと考えていた勇人の前に、突然再びリトルバスターズが現れた。 恭介「お前の入団を許可する!!」 勇人「……………は?」 いきなり理解不能なことを言われ、思わず間抜けな声を出してしまった勇人。 勇人「あ? どーいうことよ?」 恭介「俺達には、君の力が必要なんだ。だから、アンタをリトルバスターズに入団することを許可したんだ」 勇人「…………えーと?」 恭介「入りたいだろリトルバスターズに?」 勇人「いや別に………」 恭介「入りたいだろ? 入るべきだよな? 入るべきだ入らなきゃダメだ!!」 勇人「……………」 ――――何だ、この有無を言わさない説得力は。 鈴「もうお前素直に入って欲しいって言え」 恭介「その超人的戦闘能力を、ウチで生かしてみないかい?」 勇人「どこの部活の勧誘だ」 勇人は「ハァ……」と一つ溜め息を吐いて 勇人「ま、別にいいけど」 と返事した。 理樹「え、いいんですか?」 勇人「ま、特に断る理由はねぇし」 ―――誘いを受ける理由もないけどな。 勇人「だが俺が入ったらリトルじゃなくなっちまうんじゃねーか?」 恭介「気にすんなって! お前にはリトルバスターズの『名誉顧問』の称号を与える」 勇人「名誉顧問………」 こうして、勇人は奇妙なお騒がせ集団の仲間入りとなった。 後に、この少年達との長い付き合いになることは、この時の勇人は知らなかった。 [次へ#] |