明日の値段〜Don't Lose Your Grip On〜 第48話 始動 ◆ ◆ ◆ 美由希には話せない。 できれば、ずっと話さなくて済めばと思う。 そして剣を握る自分。 彼女の言葉を反芻して、なにもできなかったあの時の自分を思い出して、そして今、思う。 今なら彼女の哀しい生き方を否定できるだろうか。 御神流を、人殺しだけの剣じゃないと、この手で証せるだろうか。 ◆ ◆ ◆ 雑多な人混みを見下ろす、上海の繁華街の近くの古いビル。 その屋上で、満月を見上げている。 あの日も、こんな月だった。 漆黒のコートに包まれた、痩躯の女性は、目を閉じた。 そして……次に目を開いた時、それは冷徹な殺し屋の目になっていた。 美沙斗 「……行くか」 ◆ ◆ ◆ ‐勇人 Side‐ 勇人 「――……どういうことだ?」 俺は今、縁側に座りながら、麻帆良のじーさんと携帯電話で話している。 学園長 「ワシも最初今回の仕事は、クリステラソングスクールのボディガード程度に考えておったのじゃが、最近色々と妙な噂を聞いてのぅ」 勇人 「何だ? 魔法使いが出てくる程度のことなら予測済みだろ。それとも、かなりヤバいことが?」 学園長 「うむ、それが…のぅ」 何だ、随分歯切れの悪い。 何があるのか言ってくれないと俺様だって対処の仕様がないぜ? 学園長 「……タカミチを増援としてそちらに向かわせた。詳しいことはタカミチに聞いとくれ」 そう言い終わると、学園長は電話を切りやがった。 勇人 「…いったい何なんだ?」 [*前へ] [戻る] |