邂逅
「……ひ、っ!」
ルークは見張りをしていた。していた筈だった。
見張りをしている途中でミュウが吐いた炎が眠っていた兵士を起こしてしまったのだ。
「貴様………!」
振り下ろされた一撃を防ぎはしたが、もともとは趣味で習っていた様な剣術だ。特別に訓練されている剣術とは格が違う。
「く、来るな………!」
後ろに一歩下がったが足がもつれルークは体を崩した。
―――――――俺、死ぬのか
せめて、己を沈めるであろう剣を見ない様に目を瞑るのが精一杯だった。
「何をしている!」
突如上から声が降ってきたのだ。
ルークは驚いて目を開けたが、そこには声の主が放った術が当たって気絶した兵士がいた。
「大丈夫か?」
「う、うん…」
差し延べられた手に掴まりながら立ち上ると足が震えて立つ事が出来なかったが、抱き締める様に支えられた為倒れ込む様な事態には至らなかった。
「すまない。怖い目に合わせたな」
「あ、あの……お前…誰?」
「ん。あぁ。俺は神託の盾騎士団特務師団団長アッシュだ」
特務師団と良く分からないといった風にルークは呟いていたが、声の主―――アッシュは辺りを警戒した様子で見渡していた。
「色々と話が聞きたいが此所では危ない。近くの部屋まで歩けるか?」
「わ、分かった」
歩こうと足を動かそうとしたが震えていてなかなかうまく動かない。
そうこうしていると「失礼を」と声がした。
「…え……うあ!」
ぐらりと揺れる体をなんとか支え様とアッシュにしがみついた。
一瞬何が起こったのかは分からなかったが、自分が俗に言う「お姫様抱っこ」をされているのだと分かったのはアッシュが動き出してからだった。
―――――――思えばそれが初めてのアッシュとの出会いだったなぁとルークは頬を緩めた。
「どうしたんだ、ルーク?」
「アッシュとの出会いを思い出したんだよ」
「俺とのか?」
アッシュは笑うとルークと戯れる様にルークの額にキスをした。
「ルークに出会えて良かった」
「俺もアッシュと出会えて良かった!」
二人は幸せそうに愛を囁きあうのだった。
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