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∞陰陽道探究∞
魔界と陰陽師の霊戦[8]
『天狗[てんぐ]』

現代人のなかでは、天狗
のイメージはすっかり
定着している。

頭の上に兜巾(ときん)
をかぶり、八手の葉の
ウチワをもった
キュウリような高い鼻を
した妖怪…。

このイメージが定着
したのは、室町後期の
狩野元信(かのうもとのぶ)が描いたとされる
「鞍馬大僧正坊図」
からだとされている。

現代人が認識する
天狗像は、天狗の
最新モデルということに
なる。

しかしながら……
平安時代においては
天狗はミステリアスな
山霊とみなされていた。

陰陽師も天狗調伏の祈祷
を行ったとされてます。

「天狗」の
言葉が日本史に最初に
登場したのは

七世紀の舒明(じょめい)
天皇の時代である、
「日本書紀」の舒明天皇
の章には、
このように記されている。
「舒明九年二月二三日
大きな星が東から西に
流れ、雷鳴のように
空にとどろいた。
人々は、流星の音だと
いった。

すると、隋への留学から
帰ってきた僧が
流星の音ではない
これは天狗の吠える音で
あるといった。…」

この一節から
想像される天狗は
最新モデルとは程遠い
天空を駆けめぐる巨大な
霊体である、以後、天狗
は肉体のない得体の
しれない霊体という形で
さまざまな説話・伝説に
登場するようになる。


平安時代に成立した……
「宇津保物語」
「源氏物語」
では、天狗を怪異な
山の精霊になぞらえて
いる。
宇津保物語は、山の音を
「天狗が弾く琴の音」に


源氏物語は、木の精霊で
ある木霊(こだま)を天狗
に見たてている。

柳田國男は、山中で
聞こえる奇怪な笑い声・
木が伐り倒される音が…

「天狗笑い」「天狗倒し」
の名で呼ばれることを
伝えているが、それらも
まだ、天狗を山の精霊に
なぞらえる流れです。


因みに魑魅魍魎の漢字は
モノノケを示す意味が
あります。


*魑[ち]山水・木石の
化け物の意味。

*魅[み]人の心を惹き
付ける化け物の意味。

*魍[もう]山・川の瘴気
から生じる化け物の意味。
*魎[りょう]山・林の精、
化け物,モノノケの意味


魑魅…(すだま)いわゆる
木霊ですが化け物を
意味します。


それでは………なぜ、
姿なき霊体であった
天狗が、現代人が
知るようなイメージに

変換されてしまったの
だろうか?

ズバリ結論をいうと
それは、霊体としての
天狗の神秘性が上古から
山岳修行に、いそしんで
きた山伏と結びついた
結果にほかならない。


高鼻の怪人として描かれ
た天狗は山伏と同様、に
人間業(にんげんわざ)
を超えた験力(げんりき)
をきわめようとする
山中の修行者である。

まず、その前提が
両者を強く結びつける。

また、カスミを食い
木から木へ飛び移る天狗
の霊力は五穀つまり
(米・麦・豆・あわ・ひえ)
を断ち、山道を飛ぶよう
に駆ける山伏に
オーバーラップする


さらに、兜巾に柿色の
スズカケ(麻の衣)
という天狗の風体は
山伏にピタリと一致する。
薄暗い森のなかで
山伏が笑い、木を伐る音
を聞いたらなら

怪しい精霊のシワザだと
思っても不思議ではない。

深山はそもそも、人を
まどわせる幽玄な気配に
満ちているのだから、


柳田國男は…
「九州の南部は日向でも
大隅(オオスミ)でも

ヤンボシといえば化け物
のことである。
夜分山路を歩くと、
ときどか出逢うもの
坊主が首をくくった
処には必ずや出るという、
ぼうっとした大きな人影
のような妖怪だそうで
ただの山伏もヤンボシ
またはヤンブシといって
通ずる」

と著作の本のなかで
書いてます。


平安時代においては
ミステリアスな山霊と
みなされていた。

天狗も魑魅魍魎の
類いであった。

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あきゅろす。
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