My Rabbit
■ょん
トサ
「え」
…はずだった。しかし、その手は空を切った。いや、切られたのは彼の手首だった。
男は自分の手が地面に落ちた音に自分の手首から先がないことに気が付く。それはゆっくりとした時間だった。
落下する人はそれがゆっくり感じられると言う。それと同じ感覚が男に流れていた。手首からの血がそれを眺めていた男の顔に水道をMAXに開いたとき以上の勢いで赤く染めていく。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………ゴホッァ！！」
飛び散る血が、競り上がって来る異物が、何が起こっているのか分からない頭が、彼の呼吸を浅くする。
血は止まらない。息は出来ない。理解も出来ない。何も分からない。何も見えない。何も聞こえない。聞こえるのは自分の絶叫と、浅い呼吸音だけ。
ピッチョン。
ただその音だけが木霊した。
脂汗と血でジットリと湿った顔をその音がした方に向けた。
そこには、純白の悪魔が一滴の穢れもなく、見えない目で、こちらを見ていた。
.
[Back][Next]
[戻る]
[小説ﾅﾋﾞ|小説大賞]
無料HPエムペ！
携帯モード]
[
URL送信]
