私依存症
陸
女中は声のない、悲鳴にならない悲鳴を上げた。
「ツーちゃん」
誰かの抑揚のない声が呼び止めるが、彼女自身は気にしない。
ツミは、湖夜壬。と誰かの名前を呼ぶ。それに誰かが返事をする。
それが誰か、理解する前に首刀され、女中の意識は闇の中へと落ちていった。
湖夜壬が女中を抱き上げて去っていった後、ツミは手を襖の奥に引っ込めた。すーっと引っ込められる腕はまるで幽霊のようだった。
「わざわざ、あの女(ひと)が怖がるように仕向けなくても･･･」
架廼来は縁側に腰掛け、月明かりで眩しい庭を眺めた。
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