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兎物語











マリアは目を開けた。

あたりはまだ暗く、日も出ていなかった。

夢だという事実に悲哀と安堵を心に抱いた。ふと気付く、部屋に漂う甘い香り。それをたどると少年が一人立っていた。

「・・・怨。」

「ミルクティーです。お目覚めならばお飲みになりますか?」

怨はいつもこの時間帯に目を覚ますマリアにミルクティーを入れている。起きていなくても、人がこの部屋に近づいてくるのを感じれば、マリアは例外なく目を覚ましていた。
しかし、今日は珍しくも目を覚ましていなかったので、起きたときに入れなおそうと思い下がろうとしていたところだった。


「お珍しいですね。マリアが人が部屋に入っても起きなかったなんて。」

それは怨に気付いたときにマリアも思ったことだった。しかし、理由は簡単に想像できたので、苦笑した。

「マリア?」

それを変に思ったのか、怨は首をかしげた。

「ソウイウトキモアルワ。」

怨は更に首を傾げたが、マリアはそれ以上は語らなかった。





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