黒白ノ風
604 固着
「まぁなんだ、いつでも帰ってこい・・・待っててやるからな」
ナルトの言葉が私の中にすんなりと入ってくる。
やり取りをしていくうちに自分の中で固まっていた罪悪感が溶けていくような感覚だ。
現状を見聞きしないと掴めないものもある。
自分の中での思い込みのみで物事を判断するのは少し違っていたのかもしれない。
それを気づかせるためにナルトは木の葉の里に私を招いたのか…
私の反応を確認したナルトは暇そうに風景を眺める白に向き合い、
「あとは、そうだな・・・行くとこねぇならだけどよ、氷遁使いは珍しいから俺の紹介だったら暗部に所属することもできると思うぜ」
息をするように暗部への勧誘をし始めた。
人員が足りていないのだろうか。
「・・・考えておきます」
それに対して白は微笑みながら返した。
あまり興味はないように見える。
「でも1度暁のメンバーとして名前が知れ渡っちまってるから表では動けないな…裏の仕事だけになっちまうが…」
「・・・!…ふふっ、分かっていますよ」
白は一瞬だけ驚いたそぶりを見せ、噴き出すように笑った。
「…何かおかしいこと言ったか?」
「さあ…」
白の行動を見てナルトは疑問を浮かべたが、私にもその行動の意図は分からない。
「いや、サチさんといい、イタチさんといい、ナルト君といい、本当に木の葉の方々はお人好しが多いと思いまして」
「…そうか?」
「…人それぞれだよね。・・・まぁイタ兄とかは善っていう言葉をそのまま表したような人だけど」
「そうですね、ナルト君の話、真剣に考えてみますね」
「おう。」
どうやら白は、他里の自分のことも真剣に考えてくれるナルトに対して笑ったようだ。
「…ふあー、さて、やりたいことはもう終わったしそろそろい行きますか…」
私はもたれていた木から体を離し、少し体を伸ばす。
「…どこいくんだ?」
「…自分の家だけど」
少し残念そうに問いかけてきたナルトにそう返す。
一瞬だけ口元が緩んだのを私は見逃さなかった。
あのナルトにあれだけ言われれば木の葉の里に留まりたくもなる。
しかし、
「だけどさ、ただいるだけだから」
一時的に腰を落ち着けるだけになるかもしれない。
これから色々とやりたいこともある気がする。
「ふーん、いいんじゃねぇの」
「・・・」
こんな我儘にも付き合ってくれるナルトはお人好し意外にどういう言葉が当てはまるのだろうか…
「ナルト、ありがとう」
これだけしてもらったんだ。
今度はナルトが壁にぶち当たった時、私も本気でナルトにぶつかっていこう。
そう思った。
「「サチ(さん)がそんなこと言うと、なんか気持ち悪い(ですね)」」
目の前にいる2人からは酷い言われようだが。
もうだいぶ慣れてきた気がする。
「…カカシ先生からも言われたよ」
…私はありがとうも言えないような不躾なやつだとでも思われているのだろうか。
「そだ、ナルトの家お隣だし、一緒に帰ろー」
「そうだな、サチに迷子になられても困るしな…」
「木の葉の里で迷うわけないじゃん」
「サチさんならありえそうですね」
「だよなー」
「・・・」
こんな当たり前のような楽しい毎日が続けばいいのに。
そう思いながら家路に着いた。
ペイン編 完
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