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黒白ノ風
602 罪悪
 「カカシ先生…」
カカシ先生が気配を消して私を見ていたことはだいぶ前から知っていた。
里抜けをした私に対して攻撃してくる様子もなく、ただじっと様子を伺っていたのだ。



 「久しぶりだね」
 「…」
にこやかに語りかけてくる様は相変わらずだ。
まるで私が木の葉の里を抜けたあの日の出来事がなかったかのように感じてしまうほどに。






 「・・・」

しかし、私は暁に手助けをして木の葉を裏切った身だ。
何と言葉を返せばいいのか分からなくなり、目線を下に落とす。

建物が作った影をぼんやり見ながら里抜けをした日のことを思い出す。



木の葉の里の敵である角都と飛段を逃がすために火爆術も使った。
シカマル、いの、チョウジの仇である暁に手助けをしたがためにその場にいた全員に迷惑をかけた。


自分が何をしたいのかも分からないまま行動をしていた。



…何故、今私は木の葉の里の中にいるのだろうか。
少し考えればわかったことじゃないか、

この場所にいるべきでないことに。







視線のみを上げ、カカシ先生を見やる。



「・・・」
しかし、すぐに再び視線を地面に落とした。
謝罪の念と、無言の空気にじっとしていられなくなり、そのまま細い路地を歩き出した。





「・・・サチ、さっき何の用なーんて言ったけど、あれウソ。アスマは甘味処みたらしで団子食べてて、ハヤテさんならとっくに退院して復帰してるよ」

「…!」
アスマ先生とハヤテさんの情報だ…
カカシ先生の言葉に思わず足を止める。


カカシ先生はそのことを言うために私の元に来たのだろうか。
それとも、また別…?

「・・・」
じっとカカシ先生の出方を伺ってみる。




「…あのさ、そんなに警戒しないでよ。ストーカーしたのは悪かったけど、ヒゲとハヤテさんのこと言いに来ただけだから」
私からの威圧感を感じたのだろう、カカシ先生は頭に手を当てながら言った。



…確かに悪意は感じないし、何かしてくる気配もない。
したところで結果は目に見えている。



1人で考えを巡らせているのが馬鹿らしくなってきた。






「あ、ありがとう…」
やっと開いた口からは感謝の言葉がもれた。

「・・・なーんかサチにお礼言われるの気持ち悪いね・・・ま!さすがに病院の内部に忍び込んだ時はびっくりしたけどね」

「・・・」
病院に何も情報無かったし、特に問題ないと思うけど…





ともかく、カカシ先生の情報によるとハヤテさんはもう復帰までしているようだ。
これならもう直接見なくてもいい。

ナルトと白のもとへ戻ろう。



「…アスマ先生にはもう会ったよ。今ハヤテさんの情報も聞けたし。木の葉でしたかったことももう終わったから出て行くよ。んじゃ」
そうとだけ言い、くるりと方向を変えて歩き出した。




何かを言おうと一歩前に歩みでたカカシ先生だったが、その場に立ち止まった。



私は背中に視線を感じながら陽の光が当たらない暗い路地に逃げるように足を進めた。

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