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黒白ノ風
193 暢気
 「ワンワン!」
犬は嬉しそうに尻尾を振り、私の顔をペロペロと舐めている。
 「おーもーいー」
しかし、私はそれどころではない。
普通の犬より遥かに大きい犬を退けるのに必死である。

 「・・・おーい、どこいったー?」
少し遠くから人の声と足音が…
 「助けてェェ」
藁にもすがりつく思い、というよりしがみつくような勢いで私は助けを求めた。
 「・・・?」
声が届いたのか足音はどんどん近づいてくる。
犬、重い…
でもふさふさで気持ちいい。

 「うわ、赤丸!人を襲うな!!」
私の状況に気付いたらしい飼い主はそう言い、急ぎ足で私の上にズシリとのしかかる犬を退けた。
 「…助かった」
退いたことにより、呼吸がしやすくなったので私はすぐさま肺に酸素を取り入れる。
 「すいませんねー、いつもはこんな奴じゃないんですけど…いきなり走り出したと思ったら…」
へこへこと頭を下げる飼い主。
本当はいい子なんだぜ。
俺の相棒なんすよ。
と、発言の節々にこの人は犬がとても好きということが伺えた。

 「大丈夫っす!それより、この子赤丸っていうん…」
・・・?
赤丸?…あかまる?
 「赤丸?」
私は大きな白い犬を指差す。
その手をそのまま飼い主に向ける。
そして
 「・・・キバ?」
と問いた。
 
「は?…あ!サチじゃねぇか!?」
飼い主もといキバは驚いた様子で私を見やった。
 「うん、奇遇だねー」
前会ったのは中忍試験の時か。
成長したな。
キバも赤丸も。
私はそんなことを暢気に思っていた。

しかし、キバはいきなり物凄い剣幕で言い始めた。
 「どれだけ心配したと思ってんだよ!!」
 「…いや、あの…?」
しどろもどろに返答をする。
心配?誰が?…何を?
 「くそっ…よかったぜ」
 「え?あぁ、うん。よかったね?」
…それにしてもキバが何を言いたいのか、謎だ。

 「とりあえず火影んとこ行くか」
 「ワン!」
 「…うん」
何故に火影邸へ行く?
・・・?
私の頭の中では?マークのみがしきりに飛び交っていた。

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