証明します
「ちょっと待て」
待つのも待たせるのも嫌いなサソリさんが「待て」と言った。これは、ただ事ではない。
「待てません」
「待て」
待つのも待たせるのも嫌いなサソリさんの体は今私であり、私の体は今サソリさんだ。
離れ離れになったはずの二人の体は今、それこそキスしてしまいそうなくらいにぴたりとひっついている。
これは、待てと言いたくもなるものだ。
「今自分が何しようとしてんのか分からねーのか、テメー」
「え……キスですよ、キス。女の子にこんな事言わせないで下さい」
「女じゃねーだろうが」
サソリさんってば、顔が赤いから照れているんだと思ったら。
普通に怒ってた。
「分かってねーじゃねーか。テメーは今男だって事だ」
「それが何か問題でも」
「大有りだ」
問題はそれだけではない。
私の体は今男であり、サソリさんなのだ。
つまりサソリさんとキスしたら、サソリさんはサソリさんとキスする事になる。
「サソリさんだって今、女じゃないですか。分かってますよそんな事」
もちろん私としても、私とキスする事になる。
そんな事は重々承知の上だ。
「中身がサソリさんなら良いんです。体が戻らないままでもサソリさんを愛せると言ったはずですよ私は……分かって貰いたいんです」
「………………。」
口にせずとも伝わるものがあるならば、口にした上で伝えたいものだってある。
結局は「口」なんだなと、名前とサソリは思いを重ねる。
その瞬間、口と口さえ重なり合おうとしていた。
「何、してんだサソリの旦那」
「……………!」
「それに名前も……何してんだよ」
だが重なり合う事はなく、タイミング良く現れたデイダラの言葉が二人をを引き裂いた。
本当にタイミング良すぎるだろ
「何してんだ……じゃねーよこのちょんまげ野郎がサッサと消えろ目障りだ空気読め馬鹿デイダラなんか大嫌いだ」
「……………!」
「……………!」
デイダラも驚いてたけど、何故だかサソリさんも驚いてた。 それもそうだろう。
無意識にサソリさん口調が出たのだから。
「サソリの旦那……………オイラもう旦那なんか知らねーからな!」
あれ、こんな光景、前にもあったような気がするけど何か違う
デイダラが泣きながら去っていったように見えた。
何かあれだ。まるでもう本当に知らないって、さよならしたみたいだ。
「おい…………」
「はい何でしょうかサソリさん」
「証明になったな今の」
私からサソリさんへの愛が証明されました。
ついでにデイダラからサソリさんへの愛が去ったのも証明されました。
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