らしくない
「……はぁ、」
「？どうしたんだ旦那、最近ため息ばっかだぞ」
「え、いや………」
最近らしくない。
と言わなくなったこいつだが、らしくないのは相変わらずであった。
それもそのはず。何度も言うがけして口にする事は出来ない、何故ならばサソリさんの体は今私なのだから。
「サソリさん……じゃない、名前の事で少し」
「悩んでんのかよ？」
黙って頷くとこいつは「らしくない」と言い切った。
「だってそりゃ………惚れてんだろつまり」
「…………！」
否定はできなかった
確かに惚れている。
けれどそれはサソリさんにだ。と言ったら、こいつは「？」だろう。
もしくは「！」かもしれない
口には出来なくとも何度も言うが、今私の体はサソリさん。つまりこいつからの視点もサソリさん。
という事は「惚れているのはサソリさんだ」と訂正した場合、こいつはこう返すだろう。
自意識過剰の自画自賛すぎて気持ち悪いと。
「気持ち悪ィー」
言わなくても気持ち悪いと言われた。
「もしかして最近らしくねーのは恋してたからかよ。本当にらしくねーな旦那、気持ち悪ィー」
「言わせておけば……」
「……！」
意識してた訳ではない。無意識にサソリさん口調が出た。
そりゃサソリさんでなくとも、気持ち悪いなんて言われれば怒るものだ
「んな怒るなよ旦那！恋してるってならオイラ、応援してやるからさ」
「………！」
「一緒に任務行けるようにしてやるよ、うん」
まじかこいつ
まじか自分
怒れなくなった
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