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王子様のマルヒ観察記録(カヲル)
ありえないほど似合いすぎ!(初デート編)


待ち遠しくなかった日曜日がついに来てしまいました。




仕方なく用意を整えた私。

…髪を下ろして服も…一応、一応だけどスカートを穿いてみた。




女の子っぽい、かな…?



(はっそんなに気合入れる必要ないし!相手カヲルくんだもん!
ノープログレム!)


でも相手が誰でもデートとなれば色々気にしてしまう私…
曲がりなりにも女の子だったということですな。










約束していたネルフ駅前に10分前に到着して


そわそわしながら辺りを見渡すと丁度向こうから人影がやってきた。


え?どうして分かるかですか?

勿論運命だからとか好きだからなんてことはありませんありえません。



目立つから。



この一言に尽きます。文字通り黄色い声援背負ってきてるって感じです。


女の子多いなぁ…いつもにも増して。
あ、私服だからか。

アイドルみたーい!って声が当たり前のように飛び交っている。

ま、何度も言ってますが容姿だけはいいからね。



容姿 だ け は !





「紫騎ちゃんお待たせ。待ったかい?」

「お待たせ、に待ったかいをつけるのは表現的に
おかしいんじゃないでしょうか」

「失礼。待たせたね、紫騎ちゃん?」
「…今来たところですケド」


周りの女の子に笑顔で応える彼にむっとしながら
答えた。

一応デートなんだから、私だけ見て欲しい
ってうわ私今物凄く恥ずかしいこと考えました!



「ふむ」
「なな…なにか?」

「私服だなぁと思って。」
「うん、まあ……」

改めて服装見られるとなんかむずむずしちゃう。
ヘンじゃないよね多分。服装は。

…体型は今更仕方ないですからね。
周りにいるカヲルファンクラブの女の子達に叶う筈もないのだ。
(何で美女ばっかりなの?!)


「似合ってるんじゃない?」
「何故疑問系なの?別にいいですけど」

なんかお世辞みたいで嫌な言い方だ〜って頬を
膨らませようとしていると


「可愛いって僕に言って欲しいんだ」
って笑顔で言われ、

癪に障った。


「勝手に決めつけないで下さいーもぜんっぜん思ってな」

「可愛い」
「っ」


顔が触れそうな位近づいてきたかと思えば真剣な顔して
可愛い発言するものだから顔は真っ赤に、体は展開に
ついていけず石のように固まった。


どうせすぐウッソ〜とか言うんだと心は構えていたけれど

「じゃさっそく」
「え?ちょっ何するのッ!?」


次の瞬間カヲルくんは予想外のことをした。


否、しようとした


「な、に触ろうしてるのっ!」

ので私は全力で阻止する。


スカート捲ろうとしたよこの人!
前発言してたけど冗談じゃなかったんだ!こわっ


「とりあえずめくってみようかなって」
いい笑顔全開!なカヲルくん。


私にしか聞こえない程度の声だからいいようなものの
周りの人が聞いたらドン引きするだろう確率99%。
百年の恋も冷める勢いだ。


「……それは何のために?」
ようやく言葉を紡いだ私に彼はさらっと

「なんとなく興味で」


なんですと!

「ちょっとした興味で犯罪者になるつもりですかええそうですか。
そんな人は20回位崖から落ちそうになればいいと思います!」



「そんなに照れなくてもいいのに」
「違うからッ!!!!!」


力を込めた突っ込みと共に脱力。なんでだろう。
なんでカヲルくんって…はぁ。もういいや。


大きく息を吐き出すと彼は肩を竦めて続けた。

「男子って女子のスカートの下がどんな下着なのか
興味ない人いないんじゃない?僕は全く興味ないけど。」

「あーそうですかならわざわざ人の嫌がることしないで下さい〜」



「大体さー何でそんなに丈長いの?」
「え!これでも短いと思うんだけど」

「せめて膝上20cmだよねぇ」
「カヲルくん、貴方は私を変質者に仕立て上げるつもりですか」

下着見えちゃうじゃん!


「あ、それは困るな。見えるのは僕だけでいいんだけど」
「変質者既にここにいた!」


「ぷっ冗談だから。さっきから必死過ぎ」
「だ、だって…」


デートのはずなのに全然デートっぽくないんだもん。
いや別に期待してたわけじゃないけど…

「さて前置きはこれくらいにして」
「えらく長い前置きだったね」

もう既に帰りたい私がココにいますよ。


「さっそくいこっか」
「!…………う、ん……」

無造作に手を繋がれる。


…抵抗しようか迷ったけど

とりあえずは目の前の笑顔に騙されておくことにしよう。


やっぱり繋がれた手はあったかかったから。

(でも恥ずかしいけど…みんな見てるし)

カヲルくんが堂々としているのをみてある意味勇者だと思った。
※褒めてない





ようやく歩き出した私達。
一歩前を歩くカヲルくんは行き先を決めているのか
迷いなくどんどこ進んでいたので


「ねえカヲルくん、どこかに行くの?
というか今行ってる最中?」

尋ねると
振り返った顔はやっぱりいい笑顔で



「とってもいい所Vv」
ハートマークを語尾につけて返された。




とってもいい所にとっても不安を覚えるのは私だけですか?







「あれ?普通のお店だ」

どこに連れて行かれるのかと不安いっぱいだった
私の眼前に見えるのはそう、おシャレなお店だった。


怪しい店でなくてよかったよ
って


眼鏡屋さん…?


疑問を残す私を無視してさっさと店内に入ってしまう彼。

いつも(=表の顔)のレディーファースト精神はどこへやら。


「待ってよカヲルくん、眼鏡買うの?」
「うん。アイテム的に必要そうだからそうしようかなって」


(…アイテム的に?)

「目は悪いの?」


「両目とも1.5だよ」
「カヲルくん、1.5の人は必要ないんだよ」


「知ってるよバカ」
「なんですって!」

「伊達眼鏡に決まってるだろ。どれがいいと思う?」
「決まってないでしょ!…どれ、って…どうでもいいんですけど」



「どれがいいかな?紫騎ちゃん?」
笑顔で脅迫キタ!


「えっと……こっこれ、とか」
笑顔に負けた私は適当に
銀淵フレームのスマートな眼鏡を指差して





「どう?」



「…!…っ」

文字通り絶句してしまった。
これは…!


「?」
「…ッ」






に、




似合いすぎ!!!!


「?」


どうしよう。
私眼鏡掛けてる人に興味なんてこれっぽっちもないのに


カヲルくんが眼鏡かけるとヤバイ。
格好良過ぎて直視できない!!!!!



(う、うううう〜卑怯だ〜)


「何俯いてるのかな?」
「わあっ!」

顔を下に向けていると覗き込まれてしまった。
至近距離で目があって後方に飛びのく。


「びっびびびっくりさせないでよ!」
「あ〜わかった」

(びくっ)
「僕が格好良くて照れてるんだね」


腕組みして人差し指で眼鏡をくいっと押し上げるカヲルくん。


くそう、絵になるな!
文句も言えません。


「へぇ紫騎ちゃんの弱点ゲットしちゃった」
「はぃいっ!べっ別に弱点なんかじゃないんだからね」


はっなぜか私ツンデレみたいになってるし。


「ぷっ」
「笑わないで!」

楽しそうにしてますけど私何にも楽しくないです。
貴方のせいで寿命縮んでます。


「これにするよ」
「え!で、でででもほら目が悪くないならいらな」

「これ買って紫騎ちゃんに色々試してみようっと」
「はいぃいいい!?」


試すって何をですかっ







「ふんふんふん♪」

ご機嫌なカヲルくん。


「……」
2歩後ろを歩く私。


と彼が後ろの私を振り返ってきた。


「どうしたの、急にしおらしくなったね」
「そ、そんなことないよ」

と顔を背けた私はきっと不自然だったろう。
だってあれだもん。眼鏡似合い過ぎるんだもん。



なんでなの!?


眼鏡=特に好きなわけじゃない
カヲルくん=特に好きなわけじゃない


なのにどうして

カヲルくん+眼鏡=似合い過ぎて直視できない


という答えが出てくるの?
自分で自分が本当謎なんですけど!


「とにかくセクハラに値するから顔みせないでよ」
割とキツめに宣告してみると


「ひどいんだね…僕はこんなに君のことを思ってるのに」

とか言いながら笑みを湛えてわざと近寄ってくる。



「ヒィ辞めて!」

怖い!カヲルくんコワイ!


「くくっ慌て過ぎだよ」
「…っ喜ばない!こっちは必死なんだからねっ」


真っ赤になって抗議したら彼は明らかな生返事を返してくる。

「ハイハイ」
「本当にわかってますか?」


「ん〜そうだねぇ〜あ、次ココ行こう」
「聞いてよってここって…」


なんてことはない。ただのパン屋さんだ。


「お腹空いちゃった?」
「ん、少しね」

(そうなんだ!)

また「そんなわけないだろバカ」と言われるだろう
覚悟をしてただけに目を見開く。

カヲルくんでもお腹は減るんだね。



「ほら今出来立てだって書いてる」
「…入ってみる?」

「入ってもいいけど、奢ったりしないからね。寧ろおごって」
「ケチッいいもん別に期待してないし」


誰がカヲルくんに奢ってなどやるものか!

普通男の子から「ここは僕が」って奢ってくれるものじゃないの?
これ本当にデートですか?


「(…こうなったらやけ食いしちゃる)…わ、綺麗」

足を踏み入れた瞬間入店を知らせる澄んだ音色が響き
綺麗な内装に色とりどりのパンが私の視界一杯に広がる。

それにこの香ばしい匂い!
私のささくれ立った心を一瞬で癒してくれた。
いい店だ=v=



「あっ私の好きな粒あんどーなつ!」
「奇遇だね、僕も好きなんだ」

とカヲルくんが華麗な?トング捌きでパンを取る。
……最後の一個なんですけど。


「ふっまだまだ甘いね」
「パンだけに?…ぷっ何そのキメ顔」

トング持って格好つけてるから面白過ぎる。

個人的にツボに入って笑ってるとまた笑ったって
カヲルくんが呟いた。


「なあに?私が笑うのは法律違反か何かにひっかかるとでも?」
「ぎりぎりね」
「ひっかかるんだ!」

「冗談は置いといて、少し驚いただけだよ」
「うん?」
「可愛いなぁと思って」

「な…!う、嬉しくないし嘘でしょどうせっ」

「そういう時は嬉しいな、って答えて欲しいね。
本当なのになー」


「うっ」
可愛くない反応しちゃった?

でもでも普段の素行の結果を考えれば
自ずとこういう反応になってしまう。


でも…たまには素直に受け取ってもいいのかな。
「え、と…あ、ありがと」

ぼそぼそと答えるとカヲルくんはどういたしましてと
嬉しそうな顔で返す。


で、でも粒あんどーなつは取られたままだしと
思っていると

「ハイ半分コね」

と分けてくれた。店員さんに切って貰ったらしい。
ふーん

「奢り?」
「流石に半分出せとは言わないよ」
「ありがとうございます」

「その代わりキスね」
「は?」
「はい、ちゅっ」

半分コにしたあんどーなつをくっつける。
いわゆる乾杯みたいなポーズだ。

あーそういうことか…無駄に緊張したじゃんか!

「ふふっ」
「もうっからかってばっかり!」





このあと実は映画館にも行こうか話してたんだけど

ぶらぶらしてた時間もあって(公園とか行ってみたりした)

今からだとナイトショー?レイトショー?の
時間帯になってしまうので遠慮しておいた。
…だって夜になると色々危ないもん。


(カヲルくんが危ないってこと?って訊かれると…
ノーコメントで)




そして陽も沈みかけてきたので今日はこの辺で
お開きということになりました。

やっと、終わったよ…


「今日は楽しかったよ」
「うん、カヲルくんだけ楽しんだと思うよってごめんなさい
眼鏡かけようとしないで下さい私も楽しかったです物凄く。」

「それは良かった。名残惜しいけどさよならだね。
また明日」
「え、う、うん。…また明日……」


もう去ってしまうんだ。
寂しさに気づいてしまった私は更にわかってしまった。

意外に、凄くではなく文字通り思っていたよりはだけど
カヲルくんといた今日の日が、楽しかったということ。


……沢山意地悪されたのに私っていい人…いや
(あれかなそういう嗜好の持ち主なのかな…)

そ、そそんなことはないですよ!





「ああ、忘れてた。ハイ」
「え?あ」


去りかけた彼は包装してある包みをひとつ私の手の
上に置くと

「付き合ってくれてありがとう。紫騎ちゃんと
一日過ごせて、嬉しかったよ」

笑いかける。

「!うっ、うん…私、も」


柔らかい笑顔と真心こもった言葉(に聞こえる)に
照れてしまい俯いた私は掠れた声を返す。


くすりと笑われた気配がして顔を上げると
軽い足取りで帰っていく彼の背中が見えた。



行っちゃった。

なんだか、意外だったな。思ってた「よりは」
からかわれなかったし彼は穏やかだった。


……ハッ

初めて男子からプレゼントを貰っちゃった。



なんだろう…?

緊張してテンション上がってきた!


手元のプレゼントにドキドキしながら自分の
部屋へ急ぐ。



慎重にリボンを解いてそっと中を確認すると―



(あ、…眼鏡だ…ってカヲルくんのとフレーム色違い)

ペアルックってやつ?

……………………………びみょー!




111003



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