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サクラサク、四月 1 ―雲雀連載夢。雲雀さんに認めて貰おうと頑張る話。
ああ、なんて綺麗なんだろう。


四月。私が一番好きな季節。
始まりを予感しわくわくする毎日。

並中一年生になってまだ一週間の私は通学路に咲き誇る桜を見ながら
登校するのが楽しみとなっていた。

思わず見惚れてしまう、綺麗な桜。春風にひらひらと舞う花びらは雪みたい。

…あの人に出会ったのも、そんな春の日のこと。
私の心を捕らえて離さない。あの時から私の心はずっとその人を…みてた。




「ふ、風紀委員になりたいって!?あんた何考えてるの?!」
「花ちゃん、落ち着いて…」

クラスにも少しだけなじみ始めた頃、友達になった花ちゃんに大きな声で
風紀委員になることを止められたこと、私は今でも覚えている。

…今考えると恐ろしいこと言い出したかもって思うんだけれど、
そのときの私は彼の存在を知らなかった。

「あんた、雲雀さんのこと知らないの?もう知ってる人は知ってるんだよ?」

「え、雲雀さんって誰??私はただ一人一回は何かの委員会に入るようにって先生が言ってたから
風紀委員に入りたいなって思ったんだけど…」

「…そっか。…紫騎は雲雀さん知らないんだ。…なんでも風紀委員長にして不良の頂点に立ってるらしいよ。
しかも他の人達が複数で群れているところをみると咬み殺すとか言われて殴られるんだって」

「えっ!!?」

風紀委員長で不良!?な、殴られる!??!

「…でででも、そんな会っただけで殴られるとか」
「不機嫌だったら何の関係も無い周りの人達にも容赦しないって。」

「う、ううっ」
どうしよう、風紀委員入るの辞めようかな…でも

私があの日出会った人、確か風紀の腕章してたんだよね…
美化委員か風紀委員のどちらかに入ろうと思っていた私が風紀を選んだのは、
その人が気になったと言う理由もある。

「ね、辞めときなよ。」
「でも…誰か入らないといけないことだし…やっぱり入るよ!」
「…紫騎…」

友人が心配してくれるのは嬉しいけどあの日見かけたあの人にも会ってみたい。
話したこともない見かけただけのその人がなぜか私の中で気になる存在になっている。

「大丈夫!怖い風紀委員長様には極力近づかないようにひっそりと活動するから!」
「…気をつけるのよ。」
「うん!」


そうして私は風紀委員になった。
…この委員だけは立候補者が私しかいなくてすんなり決まり、他の人たちは
安堵のため息を漏らしていた。

そんなに危ない人なのかなその人…


「じゃあこれでHRを終わる。それから風紀委員。すぐに応接室に行くように。」
「へっ、私ですか?あのー、今週掃除当番が」
「掃除はしなくていい。すぐにとのご命令だからさっそく行きなさい。くれぐれも
粗相のないようにな!!」

「あ、はい…」
先生に力強く言われ仕方なく教室を出る。

美化委員にもなりたかった私としては掃除はきちんとしたかったのにな…
……それにしても先生がご命令とか言ってたけど…相当怖い人なのかな…

であった瞬間に何か投げつけられたりして…あはは。はぁ。

気分が沈みがちになりながらも一度も入室した事のない応接室へと向かい
足を止めた。

大体なんで応接室なんだろう…

疑問のままドアをノックした。

「誰?」
中から鋭く低い男の人の声。

「あのっ、風紀委員になった者です。先生にここに来るよう指示されてきたんですが…」
できるだけ怒られないように丁寧に話しかける。

「入りなよ。」
!なな、なんだか緊張してきたよ…何事もなく終わりますように!!



震える手をドアノブに掛けた。
そうして差し込む光の先にいた人物は私の予想しなかった人。

「!っ、え…?」
「君が一年生の風紀委員かい?」

私はその場に固まった。


「あの、貴方は…」
「何、質問しているのは僕のほうなんだけど?」

「すっ、すみません!」
慌てて自分の自己紹介をして頭を下げる。

胸がどきどきする。あの人だ。
悠然と桜並木を歩いていた人。

でもどうしてここに…?
この部屋には彼一人しかいなかった。
もしかして風紀委員は全員召集されているのだろうか。
だとしたらこの人も風紀委員長に呼ばれたのかな?

「さっきから固まってるけどどうしたの?」
「あ、いえっ何でもないです…っ」

わぁ、あの人と会話してるよ。なんだか照れちゃうな。
はっ、そういえばまだ名前聞いてなかった。

「あのー、貴方のお名前は…?」
「?」

名前を聞いたら彼は変な顔をした。
なんて表現すればいいかな…「僕のこと知らないの?」みたいな?

「ふぅん、君は僕のこと知らないんだね。」
案の定彼はそう言って意外そうな顔を崩さないままだ。

「すみません!有名人でしたか…?」
「まあいいけど。じゃあ名乗ってあげるよ」

どんな名前なのかな?ドキドキしながら待っていた答えは

「僕は雲雀恭弥。並盛中の風紀委員長だよ。」

とんでもなく意外なものだった。


「へっ」

う、嘘でしょ…?聞き間違いかな…
花ちゃんが言ってた不良の頂点にいる風紀委員長の「雲雀さん」って…
もしかしなくても私の探してた人と同一人物!!!!??!

いや、でも待ってもしかしたら
「あのー雲雀さんのほかに風紀委員長っていますか?」
「は?何言ってるの君。咬み殺されたいの?」

「いえとんでもないです!!」

咬み殺す発言来た!!
間違いないよ。…この人が噂の雲雀さんなんだ。

でも…私には噂のような人には思えないな(確かに咬み殺すって言ってるけどさ)

「とにかく君に聞きたいことがあってね。こっちにきなよ。」
「は、はい。」

中に入った私は促されるまま、応接室に入りソファーに座った。
雲雀さんは高級そうな黒皮のソファーに腰掛ける。

ああ、格好いいな。絵になる。

場違いにも私はそんな風に思ってしまった。


「君に聞きたいことはひとつ。きちんと活動するつもりはあるの??」
「どういうことですか?」

「風紀に弱い人間はいらない。それにやる気のない人間もね。君は
最後までしっかり活動する気はあるのかい?」

「はい、あります!」

「…本当に…?」
雲雀さんは私を見定めるようにしてみている。

「最近はやる気のない人間が多くてね。そういう者は籍だけ置いておいて
実際には活動に参加させないようにしてるんだ。いても迷惑なだけだからね。」

君は一度も欠席せずに活動するんだよね?
改めて問われてしっかり頷いた。

「勿論です!しっかり風紀活動に取り組みます!何だってやります!」
何故だかわからないけれど、そう答えていた。
私の中にはこんな想いがあった。

雲雀さんに、認めてもらいたいな。


「へぇ。やる気だけはあるみたいだね。わかった。とりあえず明日から応接室に来てね。」
「何時からですか?」
「七時。」

は、早い!!

「分かりました…」
「遅れたら咬み殺すからね。」
「はっはいぃ!」

こうして私は風紀委員活動のために、朝から応接室へ行くことになった。
…朝苦手なんだよね…頑張って起きなきゃ。

続く。


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