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お馬鹿さんはどっち?―犬夢。盛大に悪口言い合ってますが嫌よ嫌よも好きの内!?
学校の授業が終わった放課後、黒曜のアジトで。

今日も二人は言い争っていた。
そして内容はというとやはり今日も、ほんの些細なことが原因である。

しかし二人は喧嘩の原因がなににあったのかも忘れ、どっちが本当の馬鹿なのか、という他人から見れば別にどうでもいいじゃん!、と言いたくなる不毛な争いに突入していたのである。

「だあから、お前は馬鹿だっつうんだ。」

犬の言葉…「馬鹿」発言にむっとした紫騎は腕を組んでふう、と息を吐いた。
自分が怒っているのではなく余裕のあるんだというところを見せ付けたいが為だ。

しかし頭にははっきりと怒りマークがついている。
怒っているのが誰の目にも明らかだ。

「な〜に言ってんだか。馬鹿なのはあんたでしょう?無自覚さん馬鹿ですか?」
「馬鹿」という言葉をお返しされた犬はピク、と耳を動かしソファーから立ち上がる。
「ああ?馬鹿はそっちだっつの。」

睨みつけてくる犬の視線を紫騎は真っ向から受けてたった。
犬がなんぼのもんじゃい!!と猛る気持ちのままに言葉をぶつける。

「馬鹿って言う方が馬鹿なんです〜」
「…馬鹿って言う方が馬鹿って言ってる奴のほうが馬鹿だって知らないんれすかー?お前馬鹿?」

できるだけ相手を腹立たせようとする気満々の二人。

「馬鹿馬鹿馬鹿って連呼する方が馬鹿なのよこの馬鹿ー!!!」
「さっきから馬鹿馬鹿うっせーこの馬鹿!!馬鹿しか言えねえのか!!」

「しょうがないでしょあんたが真の馬鹿なんだから!!そっちこそ馬鹿しか言えないなんてなあんて言語能力不足の馬鹿なんでしょうね〜〜」

「あーもーうぜー馬鹿かける5」
「じゃあ私は馬鹿かける7。はい、私の言った方が多い〜。」

「てっめー、俺の真似すんじゃねーびょん!!ちっとは自分で考えろばあーか!!」
「自分が言うのが面倒だからはしょったくせに!!この横着者のものぐさ太郎!!」

「はあ?俺の名前は犬なんれす〜人の名前も覚えらんねえのに人のことを馬鹿呼ばわりすんな!!!」

「はああ?物の例えに決まってるじゃない!ものぐさ太郎さんのことも知らないなんて相当のあれよね〜。つまり馬鹿。あ、つい本音が。ごおめんなさーいわたくし正直者なもので。あとついでに言っとく、あんた人だったんだーイヌかと思ってましたけど〜」

「あんだと!?…はい、お前のが馬鹿決定〜。馬鹿かける10。10以上ありませーん。10がMAXなんれすー。」
「なにそれ、自分で勝手に限界決めないでよ、あんたの馬鹿さは10では収まらないのよ、馬鹿かける100!!」

ぎゃあぎゃあと喚き散らしている二人の横で、骸と千種は優雅な所作で紅茶を飲んでいた。

二人の言い争いは今に始まったことではない。
最初はうるさい、静かにするようにと戒めていたのだが注意したらしたで今度はそれを原因でもめてしまう。

触らぬ神に、たたりなし。…というと例えはおかしくなるかもしれないが、放っておいた方がいい。

そう思った骸と千種は最近、二人のことをそっと見守ることに努めている(正直めんどいから、なんて思ってはいない…多分)。

一種のイベントだと思えば、どうってこともないのだ。

「全く、どうして二人は下らないことであそこまで言い合うことができるんでしょうね…時間の浪費をしているだけだと思うのですが。」

この光景は何度見ても理解できない、という表情で骸は遠巻きに二人を眺めていた。

理解できないといえば、もう一つ二人に関して理解できない点がある。

そう思っていた骸の思いを知ってか知らずか、千種が置いてあるカップを手にし絶妙のタイミングで呟いた。

「…喧嘩するのに、どうして付き合ってるの…?」
「「!!!?」」

千種の声は決して大きいものではなかったのだが、二人の声も動作も瞬間ぴたりと止まった。

どうやらしっかり聞こえていたらしい。
骸は二人の様子がよほどおかしかったのか盛大に笑う。

「くはははは。なかなか鋭いところをつきますねえ、千種。千種の疑問はもっともです。何故貴方がた二人はお互いが馬鹿だと思っている相手と付き合っているのです?僕には到底理解できないことなので何かメリットがあるのでしたら詳しく教えていただきたいものすがねえ。」

骸は…はっきりいって面白がっている。
千種はふぅと胸中でひとつため息をはく。

けれど千種とは違い二人は動揺していたので、いつもなら気付く筈の骸の表情の変化には気が付かない。

「え、っとそれは、その…け、犬と付き合っててメリットがあるわけないですよ!!口悪くなるしクラスメイトからは本当はあの子怖いんだぜとか根も葉もない噂されてるし」

「それはこっちのセリフだっての!!紫騎といるようになってから全っっ然いいことないんれすよ?きっとこいつが俺の運を吸い取ってるんれす。」

「な、何よそれ!!!」
「事実らろー」

「むっか、なんなのその仕方なく付き合ってやってますよ的な言い方!!!!…嫌なら付き合わなくてもいいですよ〜〜っだ!!」

「あーうぜ、可愛くねー。」
「どっちが!!」

「おやおや、また始まってしまいましたね。…ん?どうしたんです?千種」

どこからか白い看板を持ち出していた千種は黒マジック(太)でキュッキュと文字を書いていた。

そして書き終えると眼鏡をくいっと上げ、看板の持ち手の部分を掴んでひょいと持ち上げる。
その看板を見た骸はほう、と口の端を上げた。

こう書いてある。

←注:彼らは中学生です。(会話に混ざろうとすると非常にめんどい!!)

「クフフ、二人が口論しだした時にはこの看板を使うことに致しましょうか。」

骸がそう言っている間にもまだ紫騎と犬は言い争っていた。

話がまた、元に戻ってしまっている。

「ぜっっったい犬の方が馬鹿ですう!!」
「いーや、お前のほうが馬鹿れすう!!」
「「ばーか!!」」

一方、隣の部屋へと避難し、改めて札束を数えていたM・Mは手を止めてわなわなした。隣の部屋に移動しても、うるさい。

これじゃあ部屋を移動した意味がない。
落ち着いて、幸せな気分に浸りながらお金を数えることができないじゃない!!

隣から漏れ聞こえてくる声を聞いた彼女は座っていた椅子から勢いよく立ち上がるとこう叫んだ。

「…あーも〜ばかばかうるさい!!どっちも馬鹿よ、バカップル!!!!」


END

あとがき


記念すべき犬夢、第一作!
問題:馬鹿は何回言ったでしょう!?私には分かりません!!(おい)


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あきゅろす。
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