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貰って下さい…何を?―雲雀サイド――07年?バレンタイン雲雀夢、雲雀視点
今日は、バレンタインデー。
だから、何?
あれって、どこかの企業戦略でしょ?
くだらない。

すれ違う生徒達が浮ついている様に見えるのはきっと気のせいじゃないだろう。
全く…どうしてイベントになるとこう騒ぎたがるのだろう。
馬鹿馬鹿しい。

「あの、さ」
応接室前で出会った彼女が、口籠もりながらに呟く。

「何?」
その彼女らしくない雰囲気につい素っ気無い返事。

紫騎は体を強張らせながら、僕に訊ねる。

「貰ってくれますか!?」

大きな声が静寂の中響き渡る。

「君を?」
意味が解らないから、冗談でそう答えてみる。
すると彼女から勢いよく返事が返ってくる。

「はい!!」

……
え、嘘じゃないの?
わずかに僕は瞳を大きくした。

「…あと三年待ってくれる?」
少し考えてから僕は告げる。と

「三年!?」
驚いたような、悲しそうな表情を作った紫騎は、少し俯いて……それでも俯いていた顔をすぐ上げると言った。

「い、今すぐ貰って欲しいの…駄目?」

顔を赤く染め懇願する彼女が凄く可愛らしい。
強引に体を引き寄せて抱き締めたい。
キスしたい。彼女のなんともいえない反応が見たい。

そんな思いが胸いっぱいに押し寄せる。
…だが、…こんな突飛なことを言う子だっただろうか。

「婚約でいいなら」

彼女が眼を真ん丸くする。
こんにゃく!?好きなの!?

は?
今度は僕が首を傾げる番だ。

「婚約だよ」

え?!
ん?
何か変なこと言った?

………

「ごそごそ…これ」

おずおずと彼女がチョコを取り出す。
そうか。
今日は、バレンタインデー。
企業戦略に載せられてる女がここにも一人。

でも。
悪くないね。

「まさか私が結婚申し込んだと思ってたの?!」

「うん。」


少しの沈黙。…彼女はどうも今の状況を気まずいと思っているらしい。
僕は、別になんとも…
いや、なんともなくないか。
紫騎を腕の中に引き入れたくてたまらない。

我慢しなくていいか。
そう思って、実際に行動へと移した。
彼女を引き寄せ、ぐっと顔を近づける。

「!?ひば」
彼女が何か言うより先に、僕は彼女の口を塞いだ。
何度も角度を変え、やや抵抗する
彼女の腰に手を回し決して逃さない様にする。

彼女は苦しそうに声を漏らした。

「ん、ふっ、…んん」

やがて、僕はそっと彼女を拘束していた手と唇を離した。
彼女の赤くなった頬と潤んだ瞳が鮮やかに写る。

僕は満足そうに微笑むと、再び彼女を抱き寄せ、耳元でこう言った。

「ありがとう。」
それは、チョコレートとキスのお礼。そして。

「今度、君の返事を聞かせて貰うから、ね。紫騎」

僕と、婚約するって話の返答を。

「へっ、ちょ、ちょっと」

そう言い残した僕は彼女の抗議の声には耳を傾けずにその場を去った。




あれから、三年後。
僕と彼女には、同じ指輪がはめられている。


END


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あきゅろす。
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