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まだ、ほんのりやさしい―サイト:キリエ・エレイソン様の夢企画提出。雲雀夢。


貴方との別れ。


いつか、予感していたことではあったのだけれど
―それでも


「…さよなら」


苦しくて苦しくて仕方なかった。







初めて出会ったのはもう10年前。


中学三年生だった貴方―雲雀さんに
中学二年だった私は一目惚れ。


後々最強の不良だとか学校を縄張りに活動してるとか
色々聞いて怖いと知り


これ以上近くに行くといけない、危ない。

そう心にブレーキをかけようとしても駄目で。

友達に止められてもどうしてもそばにいたくて。




この思いがたとえ届かなくてもいいとずっと
雲雀さんの背中を追ってきた。


そしていつの間にか隣に並べる日がきたとき私は



「雲雀さんのことが好きです。」


怖くてたまらなかったけれど、勇気を振り絞って告白した。




「ふうん、そう。」

怖くてたまらなかった―拒絶の言葉は返ってこなくて




「だったらずっと隣にいてもいいよ、紫騎」



好きとか愛してるの言葉はなかったけれど
私の欲しかった答えはぽんと零れた。


「…ほ、本当ですか!!!?」

「うるさいな。…取り消されたいの?」



「(ブンブン)いたっ」


思い切り首を振ったら髪が自分の顔にあたって
顔を押さえたら

馬鹿だねって優しく笑われてしまった。



凄く嬉しかった。







あの日から10年。

「……っ」

私の恋はたった今終わりを告げた。





【いつ帰ってくるかわからないから、僕のことは忘れて】


身を切られるような言葉が私の中で反芻する。



雲雀さんといる時は絶対泣かないと決めた私は

ぐっと拳を握り締めて立ち去る雲雀さんの背中を見た。



十年前より大きくて変わらない背中が私から遠ざかる。

…追いかけたくても思うように力が入らない。


彼との思い出が沢山出来過ぎてしまった私には

雲雀さんが全てで、



その本人から忘れてといわれてしまえば
忘れようと努力するしかなくて


でも


絶対に忘れられない。


だってこんなにもまだ私は雲雀さんが好きだ。

泣かないって決めてたって勝手に涙が零れそうになる。





さっきまで彼の座ってたコンクリートを触ると



まだ、ほんのりやさしい





彼の温もりがある。



いつも悲しいことがあったとき隣で手をそっと握ってくれて

キスした後は照れくさそうな顔して

私を褒める時にはぎゅっと抱き締めてくれた。




雲雀さんに触れたときのあの温もり。



忘れられるわけがない。



「…ひっく」



危ないことから遠ざける為だっていうのは
知ってる。



わかってはいるけど…


「雲雀、…さん…」




一緒にいたかった。





まだ貴方を想っていたい。




だから…せめて泣くことを許してください。



「ひっく、うえ…うう」


まだほんのりやさしいこのコンクリートのぬくもりも

時が経てば冷たいものに戻る。



「ひばり、さ…」



私にも、このぬくもりを忘れられる日がくるだろうか…?




その時私は…



貴方を笑顔で迎えられるんだろうか。




「ふっ、う」


荒っぽく涙を拭い去って私は立ち上がった。



雲雀さんの姿がみえなくなるまでは
その背中をずっと眼に焼きつけようと見つめて



「雲雀さん、愛しています。…ずっと。」




【忘れて】と言った貴方の言葉には叶わない言葉を紡いだ。




届くはずがない小さい小さいその呟き。



でもそれに反応するように彼が振り向いたから
私は目を見開いた。




そしてその顔にはほんのり優しい笑みを浮かべて
決して大きくはない声で言ったんだ。




「馬鹿だね。」




それはたった一言だったけれど
風にのって確かに私の耳に届いて。

私の心を大きく揺さぶった。



「……っ」


「一ヶ月経ったら迎えに行く。」




確かにそう口を動かした雲雀さんは
その後一度も振り返らずにこの場を去った。




あとには呆然と立ち尽くす私が一人。



(…本当、に…?)


いつかの告白の返事を貰った時と同じように
信じられないけれど嬉しい気持ちで満たされていく私は

もう涙を抑えなかった。


「っ…」


大声でわんわんと泣いてコンクリートに滑り落ちた涙には

またほんのりやさしい温かみが染みになって残った。



(私はずっと待っています。)



愛しい貴方がまたその優しい笑みを向けてくれるその日まで。




今は…




さよなら。





―――――――――――


あとがき、デス。

お題をみたときびびびっときました雲雀夢。
悲恋にしようかかなり迷いましたがどうにも私は

雲雀さんとはラブラブになりたい、なって欲しい
という気持ちが強いため

結果的に悲恋ではなくなりました。


いかがだったでしょうか?
少しでも皆さんにきゅんとくるようなものが
書けていましたらとても嬉しいです^^


まだまだなのでこれからも精進したく思いますが


最後に…

キリエ・エレイソンの主催者:長月様、

素敵な企画ありがとうございました♪


また最後までご覧下さった方々、
本当にありがとうございました。


またどこかでお会いできると私としても嬉しいです。


それでは…

黒澤涼子



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