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私が好き?―犬のキリリク夢です。髑髏ちゃんに妬き気味主人公。犬が大好きなのです。

犬と付き合うようになって一ヶ月。


「バッカじゃねーのこのブス女!!」
「…ごめん。」



私は犬と付き合い始めて…いや付き合う前から
思っていたことがある。

…彼は、私のことをそれほど好きでは
ないんじゃないかって。


「……」

だってほら、いまも一人隅のほうにいる私を放っておいて


「ごめんで済んだらサツはいらねっつの!」
「…それを言うなら復讐者じゃ…」


「むきーっ、口答えすんな!あいつらムカツクから
名前出してねーんらよっ!お前馬鹿、本当に馬鹿!!」


「…ごめん。」


2人で仲良く喧嘩してる。…私は眼中にないみたいに。



「千種…2人って仲良いよね。」

「…まあそうだね。仲良い。みてて面どくなるくらい」

「どういう意味よそれ。でもまあ……そっか。」



やっぱり千種からみててもあの2人はそう見えるのか。

…これは私から…犬に訊いた方がいいのかな。


「やってらんねー。もう俺は行くびょん。」
「どこに?」


「どっかだ!千種はいちいちうるへーびょん!」
「じゃあ晩御飯いらないんだ?」
(びくっ)


「今から1時間後に出来上がるようにしてるから、
それまでに戻ってきてよ。そうじゃないと後片付け面どいから。」


「気が向いたらな!」
「あ、ちょっと待って犬!私も行っていい?」


「んあ?……勝手にすればいいんじゃね?」

「うん、じゃあついてく。千種、悪いけど食事当番お願いね!」



「わかった。」
「…私も手伝う。」
「うん。」






犬について後ろを歩く。
行く先は彼のお気に入りの場所である草原。

今はそこへと続く獣道を通っているから間違いない。



私は歩きながらも彼の心遣いを感じていた。

いっつもずんずん歩いてるようで私の歩幅を意識して
合わせてくれている。


こういうさり気ない優しさも、私が彼を好きになった
理由のひとつ。


犬は大雑把で不器用で空回ってるところも多いけど、
同じくらいの優しさを持っていて周りの空気を読める
人間だと私は思ってる。

(骸さんには褒めすぎだと言われたけど)



でも犬のいいところはそれだけじゃない。



私の身内に不幸があったとき、一番に異変を感じて側にいてくれたのが犬だった。



必死に気付かないフリしてたのに、彼に

どうしたのかとか大丈夫かと心配された時ふいに

私の目から溜まっていたものが滑り落ちていた。



(わ、たし…お父さんの死に目に会えなかっ、た…)

(…そんなの仕方ねーらろ。…学校すぐ終わって
病院行ったっていってたじゃねーか。)


(でも、でも私…)

(…きっと俺は…)



(…なに…?)
(紫騎の父さん幸せだったんだと思う。)

(??)

(俺には俺自身が死んでそんなに泣いてくれる奴いねーびょん。)



それにお前には笑顔のほうが似合う

って…何かの本に書いてあった気がする。

な、何の本かは自分で調べろよ!じゃあ俺いっから!



(何かの本って…それはないでしょ)


今思い返しても嬉しくて面白い一言。


それから犬にしつこく何度も言って、他の黒曜メンバーにも会えた。



骸さん、髑髏ちゃん、千種。



皆個性的な人たちだったけど…犬の仲間だと思うと
不思議とすぐに順応できた。

でも今は…



髑髏ちゃんに嫉妬してる。
そんな自分が嫌だった。


だって髑髏ちゃんも凄くいい子で私も大好きなの。
…でも、…不安なの。


ずっと一緒にいる私からみても可愛い女の子。


好きな子はいじめるってタイプの犬がちょっかい
かけては馬鹿馬鹿言っていじめてる女の子。


髑髏ちゃんにとってはいじめられてることについて
どう思ってるのかはわからない…でも



私にとってはとても羨ましくて、見ていて切なくなる。


好きになって付き合っているはずなのに一番遠い。


そんな気がしてしまうのは私だけ?

ねえ、犬は私のこと…本当はどう思ってるの?




「ねえ、犬。」
「…ん?何ら」


「…私と話しなくなったのはなんで?」
「は??」



ずんずん私の前を歩いていた犬がぴたりと止まって

勢い良くこちらを振り返る。


「何言ってんのお前。わけわかんねーびょん。」

「私と話さなくなったのは…他に好きな子ができたからとかじゃ」

「はぁあ??」


…ちょっと顔が怖いです犬くん。
その顔辞めて。


ずいっと顔を近づけられて思わず一歩引き下がる。
相手は訳が分からないと言った様子。



…あ、れ?

私より髑髏ちゃんのこと、気になってるんじゃ…



「もしかして紫騎、俺が浮気してたとか
思ってたんれすか?」

「ウウ、浮気!?してたの!?」


「だからしてねーびょん!!」



だだだって、浮気という単語が出てくること自体
危ないんじゃないの!?

どっかの本で見た気がするよ私!



「よくわかんねーけどもしかして俺、お前にすげー
勘違いされてまふ?」


「いや、あのその…えへ?」


とりあえず笑ってみた。

だって犬が凄い怖い顔キープしてるんだもん。

キープするなら行列で30分待ちの駅前のケーキを
キープしてきてよ。←意味不明


「だーっ、何でどいつもこいつも馬鹿ばっかり勘違い
ばっかりなんらよ!おら、行くぞ!」



言うが早いか犬は私の手を掴むと走りだした。



「えっえっ、何なに!?」

つられて私も走り出す。


「…っ、わ」

獣道を走って見えた光の先へ進むと突然広くなった視界。


いつもの草原へ到着したのだ。


「何度見ても綺麗、だね…」
「…まあまあれす。」


「またまた。」
「座るぞ。」


広い草原に二人で腰を下ろした。

2人っきりって……、緊張するかも。


「で?何で俺が他に好きな女がいると思ったワケ?」
「…髑髏ちゃんと仲がいいから。」



「はぁああああああああああ!?なんれすか、

もしかして紫騎は俺がアイツを好きだって
思ってたんれすか!?ま、マジありえねー!」



うう、そんな思いっきり否定しなくても…


「だ、だって2人仲良くていつも喧嘩してるし

犬は私にあまり話しかけてくれないから私のこと
好きじゃなくなったのかと思って…」



「喧嘩してるのは仲が悪いからだびょん!

紫騎に話しかけなくなったのは!……
えっと…」


犬が言いよどんで私はほらやっぱりと思った。

髑髏ちゃんのことは間違いだったとしても、犬は私のことを…



「……い、意識しすぎてよく分かんなくて話せなかっただけだっつの!!」


「…はい?」
思わずも心の中で思ったことと口が同時に動いた。


意識しすぎて…話せなかった??


「わ、わけわかんねーって顔すんな!こ、こっちは

話したくても普段何話してたか忘れて焦ってたんら

からな!お、お前はお前で全然話しかけてこねーし」


「だ、だって犬はいつも髑髏ちゃんと楽しそうに
話してるから…」



「だから楽しそうになんかしてねって!あいつが
―っ?!!」


「良かった…」


私のことが嫌いになったんじゃなくて。

髑髏ちゃんや他の女の子を好きになったんじゃなくて。


本当に良かったよう。



「ばっ、ななな泣くほどのことじゃねーびょん!

てか何で泣いてんらよ!泣くな!」


「は、はいぃ」


そうは言ってもぼろぼろと涙が出るんだから仕方がない。


「ったく」

犬はごそごそとポケットを漁って一枚の布を取り出した。


「ほら、ハンカチ。…お前がいつも持ってろって
うるせーからな。ずっと持ってたんら。エライだろ。」



「…洗ってるの?」
「あ、洗ってるびょん!」




―犬、自分の汗を拭いたり時には女の子の涙を
拭くためにハンカチくらいは持ってないと駄目だよ。―



―あーはいはい、気が向いたらな。―



そんな3ヶ月前のやりとりが記憶に蘇る。

ああ、そんな些細なことも覚えていて実行してくれていただなんて。



「犬〜」
「だから泣くなって。…じっとしてるびょん。」
「…ん」

ハンカチを持った犬がそっと私の涙を拭う。


…ああ、きっと今日で犬とさよならしなくちゃ
いけないとか考えていたのに。



私が思っていたよりも犬は私のことを想ってくれていた。



こんなに嬉しいことってない。


「犬」
「あ?」

「私のこと好き?」

「ぶっ、な、何らいきなり。お前急過ぎるんらよいつもいつも!」

「…だって…」


聞きたいんだもん。不安になるから。

知りたいんだもの。私を本当に好きでいてくれるか。

犬自身は幸せなのか。


「…嫌いじゃなきゃこんなことしねーらろ。」

「…犬…はっきり聞きたい。」
「贅沢言うな!」


贅沢!?これ贅沢ですか!?

すみません天国のお父さん!これから紫騎は
もっと質素にいきます!



「…そんな顔すんな。……好きだよ。」


呆然とした私の頬をむにっと引っ張って私から
顔を逸らしてそういった犬。

…照れてる。


初めて彼のそんな表情を見て私はくすりと泣きながら
笑う。




「私も、大好きだよ。」




私思うんだ。

お父さんが死んでから二日目に、犬と出会った。

お父さんは私が寂しくないように犬をつれてきて
くれたんじゃないかって。



「う、うえ、犬…お父さんっ!」

「!?俺お父さん!?いつの間にそんなポジション!?

あーそしてまた泣く!泣き止めって言ってんだろ!」



そして犬は私の腕を引っ張って引き寄せて額に一つキスを落としてくれた。


「!?」

私は驚きすぎて、犬は真っ赤になってそのまま固まる。


お互いことの気まずさに当分そこから動けず
固まったままだったことは言うまでもない。



でも帰り道はちゃっかり手を繋いで帰った私たち。






おまけの後日―千種に報告編。―


「ねえ千種。2人って仲良いよねって言った時に
千種肯定してたでしょ?ふっふー、

あれは私の勘違いでした!」


「…何の話?」

「何の話ってほら昨日言った―」


「ああ、あれ。勘違いじゃないでしょ?」
「え?」


「紫騎と犬は仲良いじゃない。」



…なんですと?



「俺は別にクローム髑髏と犬が仲良いとは言ってないけど?」


「……千種!」

「面どい。俺はもう寝るから。じゃ」

「逃げるなー!」




【クフフ。】

どこからか骸さんの幻想まで聴こえてきた気がした。



「気のせいじゃないですよ」
「!?」


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