交錯する極彩色 五話 あのあととりあえず謝って…少し話をしてから、漸く襲ってきた眠気に身を任せることにした。 船室に入ってみれば、ヘルザが片方のベッドで寝ていた…ん? ヘルザが寝ているのは、ベッドの端っこだ…あまり広くないベッドだから、いくら寝相が悪くてもそんなに端には寄らないはず…。 ヘルザが寝ているベッド…の、ヘルザの真横に手を乗せてみた。シーツが若干乱れていて、黒い毛が何本か落ちてて… シーツから感じた体温にクスリと笑った。 翌朝、少し寝坊してしまったのを、隣のベッドのヘルザが既に居ないことを発見しながら、実感した。 少しばかり夜更かししすぎたようで、またすぐに睡魔が襲ってきた…今日は特に何もないし…というか一日海の上だ、もう少し寝坊しちゃおう。 乱れていた毛布をかぶりなおし、包まれている安心感を感じつつ、またもや夢の世界へ……ぐぅ。 『…バルト』 『…っ!?ゼルト!』 『……バルト』 『…勝手にどっか行ってごめんなさいっ!だからまた一緒に住ませて…』 『………バルト……バルト……』 『…ゼルト…?』 『バルト…バル……せん…』 『…せん…?』 『せん…にじゅうよんばん…』 『っ!?ぇ…な、なんでっ』 『せんにじゅうよんばん…NO.1024番…』 『ち…違う…!俺はバルト…バルトシュトルスだ…!』 『1024番…1024番…1024番………歩け』 『ゃ…めて…よゼルトぉ!な…んで…!?』 『1024番…聞こえないのか、1024番!お前は今日もいたぶられたいみたいだな』 『…ゃ…だぁ……ゼルト…たす…け』 『1024番!返事をしろ!1024番!1024番…』 「…バルト!バルト!」 「ッハァ!…ハァ…ァ…ハァ……」 目が覚めたら、目の前には白い毛が……? …ぁ…ヘルザか…。 「バルト!…どうしたの?大丈夫…?」 心配そうに顔を覗き込まれる…ふぅ…落ち着こう…まずは。 「…あぁ、大丈夫だ…全然大丈夫だよ」 無理やり強ばる筋肉を使い、少し不自然な笑みを浮かべる。心配させてはならない…。 「どうしたの…?なんか怖い夢見た?」 「あぁ…ちょっとな。でももう大丈夫だっ」 「嘘つけ、空元気にか見えねぇぞ」 せっかくの嘘も、カイトに見透かされてしまう…そんなに分かりやすいのだろうか。 気づけば、寝汗で服がびっしょり濡れていた…気持ち悪いが、今はそれより、鼓動をなんとか鎮めなければならない…。 「…顔色悪いな…寝とけ、眠れなかったら横になるだけでいいから」 「…なんか話したいことがあったら言ってね?何でも聞くよ!」 「あぁ…ありがとう」 病気でもないのに、少し過保護すぎるんじゃ…まぁありがたく受け取ろう。 二人が出ていった後、服を着替えた…本当に寝汗が酷い…雨が降ったみたいだ。 もう一度布団を被る…でも、眠れそうにないな… 【*前へ】【次へ#】 [戻る] |