[通常モード] [URL送信]

交錯する極彩色
二話


熟睡していたカイトをヘルザに起こしてもらい、俺は適当に料理を作る。食材は、ロウレスさんから譲ってもらったもので…非常に申し訳ない。
簡単なキッチン的なものも付いていて助かった…でも海軍の船なのにキッチンがついてるって違和感があるよな。

久しぶりの料理だったが、慣れない台所で作った割には結構上手くできたと思う。以前ヘルザに主婦みたいだと言われたが、さっき冷蔵庫を見て献立が浮かんだ辺り、明らかに主婦化していると自覚した。なら、主婦の底力を見せてやるか…とか思いながら作ってみた。


「…お前料理作れたんだな」


「…掃除は上手かったけど…本当に主婦だったんだね」


「…ん?」


カチャカチャ食器を動かす音を響かせながら、ぼそぼそと言われる。俺が料理できるのってそんな意外か?


「…その…美味しいか」


「美味しいよ!引くくらい家庭の味だよ!泣きたくなったよ!?」


「こんな旨いなら初めから作れや!」


「…ん…?あ、ありがとう…?」


なんだかんだ誉められているようで。

まぁ良かった…かな?








緩やかな揺れを船全体に与えながら、月夜の海は静かに進んでいく。
波も穏やかだし、船が進む度に掻き分けられるのがかなり綺麗だ。
カイトは夕飯のあと、また寝てしまって、結局ヘルザと二人で、夜の海を眺める。辺り一面水平線なために、すごい解放感がする…。


「…ねぇバルト…」


「ん?どうした?」


永遠に続くのかと思わせるほどの海を見ながら、ヘルザが口を開く。兎の耳は、少し垂れぎみだ。


「その…ゼルトさんは、10数年前に僕たちの町を壊した人なのかなって」


「…そんな話もあったな…」


正直忘れていた…他のことで一杯だったからな。


「…もしゼルトさんだったとして、カイトと僕とロウさんとメルさんが、敵討ちでゼルトさんに向かって行ったら…バルトはどうするの…?」


「…どうする…か」


そこまで考えたことは無かった…いつも心のどこかで、ゼルトじゃないだろう、と自己簡潔していたからだ…でもそんな保証はないから…。


もし…今の親切な人たちが敵になったら。

もし…ゼルトが犯人だったなら。

もし…どちらか選ばなくてはならないとしたら、俺はどっちの味方につくんだろう。

そして出した結論は…




「もしゼルトが犯人だったら…自殺するよ」


「はぁっ!?何いってんの!?」


…驚かれるのも無理ないか…でも、そんな意味で言ったんじゃないんだ。


「ゼルトも、カイトも、ヘルザも、ロウレスさんもメルさんも…俺は皆のことを信じてる。ゼルトはそんなことしていないって信じてるし、ヘルザたちはゼルトを殺そうとしないって信じてる。俺が信じてる人たちだから、そう簡単に期待を裏切るようなことをしないって分かってる。絶対裏切らないって思ってるから、自殺するなんて言えるんだ…」


「…っ………」


ヘルザは、少し驚いたような顔で、此方を見ていた。




【*前へ】【次へ#】

2/12ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!