交錯する極彩色 十四話 「…そういやさ」 しばらく談笑…ていうほどでもないけど、和やかに話が進んでいたとき。俺がゼルトの話をして、カイトはヘルザの話をしてくれたときだった。 「お前らって付き合ってんのか?…それによって仲直りのアドバイスの仕方が変わるが…」 付き合ってる…? 人付き合いはしてる…っていうか、出会って数時間で普通……多分俺が考えてるのとは別の意味なのだと自己簡潔する。 「付き合ってる…ってどういうこと…」 「あぁ……ぇっと…恋人同士なのか?」 恋人…同士? ゼルトと俺が? …実際恋人がどんなものなのかが分からないんだが……なんか告白、という儀式を挟むものだと聞いている。 告白…された覚えはないな。 「いや、違うと思う…でも俺…正直恋人ってのがどんなものなのか知らなくて…」 「…どんなもの、か。説明はできねぇが…抱き締めたり添い寝したりは、普通友達じゃしねぇな…」 「…抱き締めたり…添い寝…したことあるな」 「何っ!なのに恋人じゃないのか…?」 「…多分…?告白…はされてないし」 「…付き合って欲しい、って言われたことあるか?」 気づけば、カイトは少し身を乗り出していた。そんな衝撃的というか…興味のあるものなんだろうか……。 「いや、無い…」 するとカイトは少し考えたような表情をしてから、 「…毎日味噌汁作って欲しい…とかは…?」 「…味噌汁…あ、そういえば…」 ゼルトの家に住み始めて三日くらいだったか…夕食のときに、皿洗いをしていたら、すぐ後ろにいて…耳元で言われた気がする。その時は、 『そんなに旨かったか?じゃあ毎日作ってやるよ!』 「…ガチじゃねぇか」 「え?」 味噌汁が…え? 「まぁ鈍感なのはそのゼルトもわかってるだろうが……そのゼルトは、冗談とか言うか?」 「いや全く…全て本音だ…」 「……なのに本人は天然…か…こりゃ時間かかるなぁ…」 「え?何が?」 「気にすんな…聞いてもわからん。最後だが…お前はゼルトが好きか?」 好きか…? 決まってるじゃないか、 「…勿論好きだ」 「いや、そうじゃなくて…恋愛対象で」 「恋愛…対象」 そもそも恋愛自体が良く分からないのだ、恋愛対象で見ろと言われても…。 カイトは、やれやれと首を振って、足の間で寄りかかって寝ているヘルザを起こさないように、そっとその場に立つ。ヘルザは芝生に寝転んでしまったが。 「…立て」 「あ、あぁ…」 くたっと芝生の上で動かないヘルザを心配しつつ、一応立ち上がる。 ……何をするのだろう。カイト相手だと、不思議と周りを見渡して武器になるものを探してしまう自分がいる。 カイトが無言で近寄ってくる…な、なんだ…? そして俺のすぐ目の前まで来ると、腕を開いて、俺を抱き締めた。 「ぇ…ちょ、なんだよカイト!」 「…嫌か?」 嫌…ではないが、良いわけでもない。どうしてもゼルトに抱き締められたときと比較してしまって…なんか…違和感がある。 「…嫌じゃないけど…良いわけでもない…」 思ったままを口にする。 「そうか…よし」 そうしてカイトは俺から離れ、またさっきみたいにヘルザを後ろから支えつつ、座った。 …なんだったんだ? 俺もとりあえず座ると、 「今の…ゼルトに抱き締められたらときとどうだった?」 「…どう…だった…」 ……うーん…。 「…ゼルトのときは…落ち着いた…?ていうか…なんかもっとして欲しい…みたいな」 「…俺のときは?」 「普通…なんか、あ今俺抱き締められてるんだな、って感じ」 「やっぱり…相思相愛か…苦労するだろうな」 「…なんの話だ?」 「気にすんな…それから、俺が今抱き締めたこと誰にも言うなよ、特にゼルトには」 「え?あ、わかった…」 なんで言っちゃいけないんだろうか。 最後に、と、 「…とにかく、お前は割とモテるだろうし、治安の悪いとこじゃ騙されて貞操奪われるかもしれねぇが、気を付けろよ」 「わ、わかった…」 貞操…って… …なんだ…? 【*前へ】【次へ#】 [戻る] |