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交錯する極彩色
十二話


「あのねー」


「うぉっ!…お前、起きてるんだったら寝たフリなんかすんなよ…」


カイトの腕の中にいたヘルザが、急に背筋を伸ばしたかと思えば、元気な声をあげる…寝たフリをしていたようだが…その必要はあるんだろうか。普通に起きて話をしてればいいのに。


「カイトね〜意外とポエマーっていうか?ここに住み始めてすぐの頃に言ってくれたのが、『こんな宝石なんかよりお前の涙のほうがよっぽどきr』」


「だぁああああ!ヤメロ言うな!恥ずい!」


ヘルザの口を塞ぎ、少し顔を赤らめながら、慌ててカイトが邪魔をする。何が恥ずかしいんだろうか…普通に素敵だと思うけど。

そろそろ意識とかがヤバイのか、ヘルザが塞いでいる腕をバンバン、と叩いていた。ギブアップ、ということなのだろうがやめる気配はない。
…大丈夫か…な…?
まぁ医者だからどうにでもなるか。


「――っ!……」


ガクッ…


「やっと落ちたか……」


「大丈夫なのか…?」


また寝ているときと同じ状態になってしまったヘルザに目をやりながら聞くと、


「…まぁ死なない程度にしてるからな」


「……そうか」


…変にフラグを建てないようにしないと…。

すると、カイトがこちらを見て…目線を逸らしてまたこちらを見て…頭をガシガシと掻いた。

……なんなんだ?


「…どうした?」


「いや…その…ああ!」


「…なんか質問…か?」


「いや…そうなんだけどよ…でも…んん…」


俺は、フッと微笑んで、


「何でも聞いていいよ…全部答えるから」


「…じゃあ…遠慮なく」


そう言ってカイトは、一度深呼吸をする…何か考えをまとめているようだった。そして、息を吐き終わると口を開いた。


「…まず、お前は数日前何で山で倒れてたんだ…?あの道は、南に下るには早いが、危険すぎると禁止区域になっている。まさか南からあの道を通ってきたのか…?」


この質問には簡単に答えられる。


「…あぁ。あの道をずっと行くと、いくつもの山を越えて、とある村に辿り着くんだ。そこから俺は来た」


「…なんでだ」


「…もう十分反省してるけど…死にたかったから」


そう言うと、カイトは一度俯いた。カイトも、俺が二度と死のうとしないとわかっているはずだが、カイトとヘルザの過去の話を聞いて、やはり死にたいなんて言われたら悲しくなるのだろう。
この二人は、死にそうな目にあっても、意地でも生き長らえてきたのだから…。


「…じゃあ、次の質問だ。なんで死にたいなんて思ったんだ?お前が少しだけ喋った限りだと、自分が生きてると誰かを悲しませてしまうし、自分自身も嫌な記憶を背負って生きたくないと…何がそこまで絶望的にしたんだ?」


…これには、答えに詰まった。一から話すには、まだ心が耐えきれない…が、ゼルトとのことは言わなきゃいけない。


そこから一つの結論に結び付いて、俺は口を開いた。



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