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交錯する極彩色
二話


「…っはッ!…ッはぁ…はぁ…はぁ…」


……久しぶりに嫌な夢を見てしまったようだ。


「…はぁ……ふぅ…」


胸に手を当てて、深呼吸を繰り返してみる。

…すぅ…はぁ…

幾度かしているうちに、やっと胸の動悸を収めていくことに成功した。


「…ふぅ」


息を一つついて、無理やり上体を起こしてみる。幸い寝相がいいおかげで、変にバランスを崩したり、ベッドから落ちたりはしない。

よし、大丈夫。

手錠も足枷もついてない。


「ッくあぁあ…」


口を大きく開けて、欠伸を一つ。腕を伸ばしてみたら、肩甲骨あたりの筋肉が伸ばされて、気持ちよかったのでしばらくしていた。

寝起きでつい細めてしまう目を大きめに開けて、窓を見る。白いレースのカーテンが、日光を受けて明るく照らされ、清潔感を感じた。窓から吹き込んだ風に、カーテンがひらひらと揺れているのは、昨晩窓を閉めるのを忘れたことを示唆している。あ、やべって思いながらも焦らない。泥棒が来たって取られるようなものなんてないしな。

まだ気だるい体をとりあえず立ち上がらせて、また伸びをする。室内は適温、適度なそよ風も吹いていて、非常に心地いい朝だ。惚れ惚れする。

ひとしきり体の筋肉を伸ばしきると、窓に近づいて、カーテンを横にずらして、日の光を受ける。朝は日光を浴びるのが健康に良いと、どこかの科学者が言っていた気がするが、健康なんて関係なしに、暖かい光に当たるだけで朝の活力になったような気分だ。しばらくはこうしていたい。


「…ん?…あ」


寝るときに着ていた服が若干濡れているようだった。もしかしなくても、俺は寝汗をかいていたみたいだ。


「うっ…きもちわりぃ」


着替えも含めて、朝風呂に入ろう、と決めた。時間は…と、部屋の壁に掛けられた黒と白のシンプルな時計に視線をやれば、短いのが7、長いのが6を差していた。いつもより遅い起床だったが、まぁ特に急ぎの用事も無いので良しとするか。





「…はあ…サッパリした…」


誰かに言っている訳でもないが、風呂上がりは誰しも言うであろう台詞を吐いてから、また部屋に戻る。相変わらず明るくて暖かい部屋だ。未だに開け放たれた窓からは風が吹き込んでいるので、少し湿った毛を乾かすにはいいかもしれない。窓辺に簡素な椅子を運んで、そこに座った。


窓からみる朝の町は、なかなかに新鮮なものだ。まだ8時くらいだから、人通りはそんなに多くない。せいぜい旅人か、早起きの老人が何かしら作業をしているだけだった。けれどそんな当たり前な光景も、俺にとっては微笑ましい。この世界の平和をそのまま形にしたかのようじゃないか、少し爺臭いことを思う。

突然ひゅう、っと入ってきた風に、目を細めた。



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