交錯する極彩色
十二話
「っ…ぐ…」
「大人しくしろ…騒いだら喉切るぞ」
少し脅すような低い声で、覆面男に言う…ちなみにこの声は、ゼルトをお手本にしてみたのだが…。ゼルトは声が低いから、あまり上手くはない真似だとは思うが、威圧できればそれでいい…メイド服を着ている雄という時点で色々まずい気はするが。
覆面男を見ていると、最初はバカにしたような態度をとっていたのだが、強めに包丁を突きつけると、観念したのか溜め息をついた。
すると、先ほどまでは部屋の隅で固まっていた男性スタッフが、ロープを持ってきてくれた…おっかなびっくりではあったのだが…。
昔漁師町教わった、なかなかほどけない紐の結び方を、記憶から引っ張り出して実践する…幾らか曖昧な箇所はあるが…縛れればいいんだ、こんなの。
最初は若干の抵抗や隙を伺っているようすの覆面男だったが、やがて大人しくなった…俺の脅しより包丁の方が効果があったみたいだな…。
「…じゃあ、コイツ見張っててくれますか?」
「…ぇ…あ、はい…」
黙々と作業していた俺が唐突に話しかけたので、少し驚いた様子で、厨房の男性スタッフは了承した…流石に五人いれば大丈夫だろ…ゼルトじゃあるまいし。
ちゃんと覆面男が縛られてるのを確認してから、包丁と皿をそれぞれいくつか取って、扉を開けた…。
簡単に説明すれば、
1.中に入ってすぐ、皿を投げて、二人倒した。
2.ナイフで斬りかかってきたやつに包丁で応戦して、気絶させた。
3.残り三人、というときに、銃を持っているリーダーっぽい奴に狙われて、カウンターの陰に隠れていたとき…
「大丈夫かぁバルトぉっ!」
不意に、自動で開かないように電気を切ったはずの入り口の扉が人力で無理やり開かれて、巨大な青色の竜人が入ってきた…ぇなんで?
リーダーっぽい覆面男はすぐにそちらに銃を向けて、
「なんだお前はッ!」
すると、
「俺はガロンだっ!」
「名前じゃねぇよ!」
「トリークスだっ!」
「名字でもねぇよ!」
「じゃあなんだっ!」
「知らねぇよ!」
何処か息の合ったボケとツッコミを披露した二人に笑いをこらえながらも、こっそりとカウンター下から抜け出す…。
このままガロンさんが注意を惹き付けてくれれば…リーダーの銃を奪えれば、無力化を謀れる…と思った矢先、
「なんだバルトっ!そこに居たのかっ!」
「…あ、テメェ!」
「ぅわっ」
ガロンがすぐに俺を見つけて、それを聞いたリーダーが、またすぐに俺を見つけて。
…ガロンさんは嘘とか誤魔化しとかできないんだなぁ…、慌ててカウンター下に戻りながら思った…ていうか。
今ガロンさんが一番危ないんじゃないかっ!?
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