交錯する極彩色 七話 「…敵か?」 冷静な声でゼルトが問う…何故冷静でいられるのか…そういえばゼルトは初対面だった。 かつて、この場所で僕たちを捕まえにきて、退けたと思ったらロウさんの家まで追いかけてきた変態…ショタコンっていうらしい、カイトによれば。 もしかしたら、また罠に嵌まったのだろうか…。 あの変態に捕まるのだけは嫌だ。 「またもや罠にかかるとは思いませんでした。見事に我々に誘導されましたね…?」 「…ゼルト、アイツ敵だ…捕まったら、バルトに会えなくなる」 「…っ!?…了解した」 …別にバルトに会えなくなる訳じゃないけど… まぁ妨害されるのは嫌だし、ゼルトに倒して貰おう。 「下手な抵抗はよしてくださいね?前回の四倍の警察が待機していますから…大事なヘルザの身体に傷をつけたくありませんから」 聞いただけで身の毛もよだつ…兎なのに鳥肌がたった。僕が子供っぽちからって…怖い。 …それに僕はカイトが好きだから…絶対に捕まるか! ふと横に視線をやると、ゼルトが体の力を抜いて…ダラン、と脱力していた。 これは確か、全速力で動くためのルーティンだったかな…体から覇気を感じる…そんなにバルトに会いたいんだね。 「…セグレスタ」 ゼルトの右手に刀が現れる…でもこの暗闇で、ゼルトの真っ黒な刀は見えにくい筈だ。 ゼルトが前を向くと…紅い瞳がキラリと光った。 次の瞬間… …ヒュッ…… と音がして。 一秒…辺りが静まりかえる…。 二秒…町長等敵の身体が硬直する…。 三秒…町長等敵の身体が地面に倒れ…… ゼルトは元の位置に戻ってきていた。 「…三秒」 「…やっぱり強いね…」 「…二十人はいた…全員峰打ちにしておいた…斬ったらマズイか…?」 「…まぁな。それより行こうぜ…あ、ゼルトありがとな」 「…礼はいい。バルトに会えないと…困る」 …本当にバルト大好きだよね。 それはともかく、ゼルトが全員倒しちゃったので、先へ進むことに…バルトと一緒だったときに比べて、ホントにスムーズに進――― バァンッ!! っ!? …痛い…息が出来ない…苦しい…ぁ…。 意識…が……薄く…。 ダメ…だ…死んじゃ…ぅ……ぃ…た…ぃ……。 ……カ…イト…。 (ゼルトside) バァンッ!! 聞こえた銃声に思わず振り替える…おかしい、全員斬った筈だ…意識があるやつが残っていたのか…? それと同時に、目の前で倒れる白い兎…白だった色は、徐々に赤に変わっていく…胸元付近から。 「…そう簡単に…逃がしませんよ」 声の方を見ると、あの馬獣人がたっていた…確かに峰打ちした筈…っ! その時、全てを理解した…。 さっきまで見ていたのは…多分幻影…リアル過ぎて気づかなかった。 斬った感触は合った…ということは恐らく、別の誰かに演じさせて、魔法をかけたのか…。 馬獣人は、また口を開く…。 「…今の攻撃…見たところ一般人ではありませんね…時差を計算しても…はい…そうですね…。 あなた…シニガミですよね?」 …バレたか。だが、俺はこの町を壊したシニガミではない。それを説明したいが…ヘルザが危ない。 【*前へ】【次へ#】 [戻る] |